「高温注意情報」と「暑さ指数(WBGT)」~命に関わる35℃以上の意味とは?~

 

皆さんは、夏になると「高温注意情報」を気象情報として目にする機会があるのではないでしょうか?

ですが、残念ながら毎年のように熱中症により多くの方が救急搬送され亡くなられています。

今回は、「知らないと危険な、高温注意情報」を甲子園を例にご紹介します。

 

高温注意情報ってなに?

そもそも、夏場になると高温注意情報は当たり前のように表示されるため、珍しいものではなくなりました。

特に、夏の甲子園で試合中にテレビ画面に「高温注意情報」というテロップがよく流れていますよね。ですが、試合が中止されるはことなく、大雨にでもならない限り当たり前のように継続されています。

実際、熱中症対策がなされたはずの2018年の甲子園でも「熱中症・日射病」の人が合計343人となったことが明らかになっています。

それでは、高温注意情報は警報ではなく「注意」のため、無視してもいい気象情報なのでしょうか?

 

高温注意情報の意味は?

全国の都道府県で、毎年4月第4水曜日~10月第4水曜日の6ヶ月間を対象とした期間に、翌日または当日の最高気温が概ね35℃以上に予想される場合に「高温注意情報」を発表し、熱中症の注意を呼びかけます。

それでは、なぜ35℃以上なのでしょうか?

 

WBGTの「日常生活に関する指針」と「運動に関する指針」

暑さ指数(WBGT)

1954年にアメリカで提案された指標で、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature→湿球黒球温度)というものが熱中症予防のために作られました。

ややこしいのは、気温と同じ摂氏度(℃)が使われますが、℃の意味は気温とは異なる点です。

暑さ指数(WBGT)は、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、熱収支に影響を与える・・・

  1. 湿度
  2. 日射・輻射(ふくしゃ)などの周辺の熱環境
  3. 気温

の3つを取り入れた指標になります。


日本では、「WBGT指標に基づく作業者の熱ストレスの評価ー暑熱環境」として規格化されています。

*暑さ指数(WBGT)は、労働環境や運動環境の指針として有効と認められISO等で国際的にも規格化されています。

それでは、「日常生活」と「運動」に関するそれぞれの指針は、暑さ指数(WBGT)でどのように規定されているのでしょうか?

 

日常生活に関する指針

温度基準
(WBGT)
注意すべき生活道の目安 注意事項
危険
(31℃以上)
全ての生活活動でおこる危険性。 高齢者においては、安静状態でも発生する危険性が高い。
厳重警戒
(28~31℃未満)
外出時は炎天下を避け、屋内では室温の上昇に注意する。
警戒
(25~28℃未満)
中等度以上の生活活動でおこる危険性。 運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息を取り入れる。
注意
(25℃未満)
強い生活活動でおこる危険性。 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険がある。

これが、日常生活をする上での熱中症の危険性別の目安です。

このように日常生活に関する指針で、WBGTは命に関わるレベルから

  • 危険
  • 厳重警戒
  • 警戒
  • 注意

といったレベル分けがなされています。

*WBGTは、摂氏(℃)数は気温と温度から算出されています。

 

WBGT指標の「屋内で日射がない状態」では・・・

気温22℃・湿度100%ならWBGTは「警戒レベル」気温37℃・湿度が20%でも同じ「警戒レベル」です。

また、温度40℃であっても湿度30%を越えなければ、「厳重警戒レベル」になります。(気温40℃・湿度30%以上で「危険レベル」)

このように、「温度が低くても湿度が高い状態」と「温度が高くても湿度が低い状態」は同じ警戒レベルになル場合があります。


つまり、日常生活(屋内)において熱中症に気をつけるべきことは、温度だけではなく温度と湿度のバランスだということです。

→「WBGTと気温、湿度の関係」の一覧表は、こちらの環境省熱中症予防情報サイトから見ることができます。

*上記の表から分かるように、「厳重警戒レベル」以上で「全ての生活活動で危険」が生じます。ちなみに、気温38℃以上は「厳重警戒レベル」か「警戒レベル」しかありません。

それでは、「運動」する場合の熱中症に対する目安はどうなっているのでしょうか?

 

運動に関する指針

気温
(参考)
暑さ指数
(WBGT)
熱中症予防運動指針
35℃以上 31℃以上 運動は原則中止
  • 特別の場合以外は運動を中止する。
  • 特に、子どもの場合には中止すべき。
31~35℃ 28~31℃ 厳重警戒
(激しい運動は中止)
  • 熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
  • 10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の捕球をおこなう。
  • 暑さに弱い人(体力が低い・肥満・暑さに慣れていない)は運動を軽減または中止。
28~31℃ 25~28℃ 警戒
(積極的に休憩)
  • 熱中症の危険性が増すので、積極的に休憩を取り適宜、水分・塩分を補給する。
  • 激しい運動では、30分おきくらいに休憩を取る。
24~28℃ 21~25℃ 注意
(積極的に水分補給)
  • 熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
  • 熱中症の徴候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
24℃未満 21℃未満 ほぼ安全
(適宜水分補給)
  • 通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。
  • 市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

上記の表から分かるように、運動をしている場合はそもそも30℃を越えた時点で熱中症の危険性があります。(湿度や運動量など場合によっては、気温が21℃未満でも熱中症になる)

このように、運動時は気温と湿度だけでなく、運動量も関係してきます。

さらに、高温注意情報の指標になっている気温35℃以上は、運動は原則中止しなくてはいけません。そして、35℃以上ということは、「猛暑日」を意味します。

このように、「日常生活」と「運動」をする場合とで熱中症の危険性はまったく異なります。

 

「猛暑日」ってどういうこと?

そもそも、WBGTの指針をみても分かりますが、WBGTが31℃以上なら危険な状態に陥ります。

つまり、死なないための行動をしなくてはいけないという意味になります。

 

◎気象庁による温度別の呼ばれ方◎

  • 0℃未満の日→真冬日
  • 最低気温が0℃未満の日→冬日
  • 25℃以上の日→夏日
  • 30℃以上の日→真夏日
  • 最高気温が35℃以上の日→猛暑日

気温によって、このようにそれぞれ呼ばれ方が変わります。


それでは、40℃を越えた日は何というのでしょうか?

答え. ありません。

(ちなみに、「酷暑日」は「猛暑日」の俗称ですので同じ意味です)

つまり、「猛暑日」が熱さの表現では最高ということになります。

そのため、高温注意情報の指標になっている「翌日・当日の気温が概ね35℃以上が予想される」ということは、気象庁の発表ではこれ以上表現できない暑さ「猛暑日」という意味です。

 

高校野球は「高温注意情報」がでてもなぜか中止されない・・・

これはなにも、高校球児だけの話しだけではありませんが・・・

また、選手を応援する観客にとっても同じことがいえます。

忘れてはいけないことは、「高温注意情報が発表されれば、命を守る行動をしないといけない」ということです。とはいえ、私が学生の頃も35℃以上でもスポーツは確かにしていました。

ただ、今は熱中症の危険性が昔以上に分かっていて、OS1といった水分補給飲料など熱中症対策も確かに進んでいます。

にも関わらず、毎年当たり前のように子ども達が甲子園で熱中症や日射病で病院へ運ばれています。そもそも、「高温注意情報が・・・」という以前に、特に屋外にいるなら気温35℃以上は全ての人にとって命に関わる暑さです。

国際規定まで利用して、なぜ危険性を無視しているのかは分かりませんが、暑さ指数(WBGT)を利用する以上は、危険度にそってスポーツを中止させるか、熱中症が起きない対策をしないといけないと思いますが・・・

 

高校野球の対策とは?

日本高野連は、101回目になる今年(2019年)に開催される全国高等学校野球選手権大会で行うにあたって、7つの熱中症対策を発表しています。

  1. 場内通路にエアコンを設置
  2. 入場門に壁付型扇風機を設置
  3. アルプススタンドの床面に遮熱塗装と通路の窓に遮熱シートの貼付
  4. 両内野デッキの入り口ゲートにミスト噴射機を設置
  5. アルプス入場門に大型テント・扇風機を設置
  6. アルプス学校応援団用の休憩所を設置(長椅子やベッドも準備し体調不良者が出た場合に使用可能)
  7. 駅前広場にミスト扇風機を設置

「暑さ対策」とはありますが、体調不良者つまり「熱中症患者がでることが前提?」


確かに気温を下げることはできないので、できる対策といえばできる限り涼しくすることや、水分補給しかないのかもしれません。

ですが、外でエアコンをどんなにつけても意味がないように、グラウンド内に扇風機やエアコンを付けてもほとんど効果がないでしょう。そもそも、場内に風が拭いていれば試合にならないでしょう・・・

つまり、観客席などはミストなどで多少の対策ができてもグラウンド内は暑さ対策のない無法地帯になります。

なにはともあれ、今年も「高温により場合によっては中止」ということはないようです。強い雨や風が吹いていれば中止となるかもしれませんが、「高温注意情報ではたいしたことじゃない!」という認識なのでしょう・・・

 

最後に

高温注意情報は、「警報」と付いていないだけで危険性は特別警報と比べてもなんら遜色ありません。しかも、広範囲で起こるのでたまったものではありません。

例えば、目の前で大規模な洪水が起こっていれば誰もが「危険だ!」と直感的に感じることができます。ですが、目に見えない暑さにさらされても、「いつものこと!」としかうつらないのかもしれません。

厚生労働省の発表によると、平成29年の熱中症による死者は635人。その内、65歳以上の死者は8割にとどこうとしています。とはいえ、毎年子ども達も熱中症により犠牲になっています。

今年(2019年)は、5月の時点で高温注意情報が発表されるという異常事態も発生しています。高温注意情報が発表されれば、暑さ対策に「中止」を考慮してもいい時がきているのかもしれません。

気温についての認識を早急に改めないと、地震などの災害がくる前に、今後も子ども達の命が「想定外?」な思わぬところで危険にさらされ続けることになります。

よく「2020年のオリンピックの対策として・・・」なんていわれますが、オリンピックに関係なく早急に対策が必要ではないでしょうか。


参考

環境省:熱中症予報情報サイト
http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

気象庁
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/netsu.html

京都府
https://www.pref.kyoto.jp/kentai/heat-stroke.html

厚生労働省:熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)より→https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho17/index.html

日刊スポーツ:夏の甲子園7つの熱中症対策発表、ミスト噴霧機など
https://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/201904170000493.html

livedoor NEWS :対策が事実上無意味だった?甲子園期間中に343人が熱中症の疑い
http://news.livedoor.com/article/detail/15193488/

 

 

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