睡眠時随伴症として、睡眠に関する病気を取り上げてきました。
これまで紹介した病気は、夢遊病や驚愕症など睡眠中に引き起こされる病気でした。
そこで今回は、「覚醒時に引き起こされるナルコレプシー(居眠り病)」についてご紹介します。
→夢遊病についてはこちらの記事で紹介しています。
→驚愕症についてはこちらの記事で紹介しています。
ナルコレプシーってそもそもなに?
ナルコレプシーは、所構わず突然居眠りをしてしまう病気です。
不眠の人にとっては、「どこでも眠れるなんてうらやましい!」なんて感じる人もいるかもしれません。
ところが、問題は眠気を自分でコントロールすることができないことにあります。
最近では、睡眠時無呼吸症候群が社会問題化していますよね。
ですが、そもそも睡眠時無呼吸症候群が有名になる前は、ナルコレプシーが慢性的な過眠症の代表的な存在でした。
子どもに多いの?
ナルコレプシーは、10代半ば(14~16歳がピーク)に発症することが圧倒的に多い病気です。
男女差は特にありませんが、日本人の有病率は0.16~0.18%(1万人当たり16人~18人)と報告されています。ただ、調査地域・対象年齢・調査年の相違から数値に開きがみられることから、一般的には約6人に1人と考えられています。
この数値だけを見ると少なく感じるかもしれませんが、日本人の有病率は世界で最も高いことが知られています。
原因はよく分かっていない!
睡眠不足が原因?
睡眠不足とは関係なく、十分な睡眠をとったとしても昼間にひどい眠気に襲われます。
→「睡眠発作」と呼ばれるような、引きずり込まれるような強い眠気に襲われる場合もあります。
この睡眠発作はまさに病的といえます。
- 食事中
- 運転中
- 会話中
- 仕事中
といった、通常では考えられないような状況で起こります。
睡眠発作で眠り込んだ後は、通常30分以内に目が覚め非常に爽快感があります。ですが、しばらくするとまた眠気に襲われます。
職場にこんな人がいたら、「不真面目」「怠け者」のそしりは免れないでしょう・・・
ですが、症状はこれだけではありません。
情動性脱力発作(カタプレキシー)
誰でも、日常生活をしていれば笑ったり驚いたりすることはありますよね?
ですが、そんなときに突然首や膝の力が抜け、ひどいときには倒れこんでしまうこともあります。
→この「日中の眠気」と「脱力発作」が見られる場合はナルコレプシーと診断することができます。
ただ、ナルコレプシーには4大症状があるため、あと2つご紹介します。
ナルコレプシーの4大症状
「日中の眠気」と「脱力発作」意外にも、ナルコレプシーにはこのような症状があります。
睡眠麻痺
いわゆる「金縛り」です。
個人的には、怖い話しは好きなのでそういう意味での金縛りを否定する気はまったくありません。
話がそれましたが、寝入りばな(寝ぎわ)や目が覚めたときに身体に力が入らなくなるという症状があらわれます。
正常でも引き起こされますが、ナルコレプシーの場合はその頻度や程度が強く現れやすいという特徴があります。
④入眠時幻覚
非常に生々しく、時には恐ろしい内容の幻覚をみることもあります。
→夢の中の体験が、現実の感覚に入り込んでしまうために起こると考えられています。もちろん、病気がなくても起こる場合があります。
いかがでしたでしょうか?
あなたの金縛りは、ひょっとしたらナルコレプシーが原因かもしれません。
このように、ナルコレプシーは①ありえない場面でも居眠りをする②脱力発作③金縛り④入眠時の幻覚といったまさに病的な症状があらわれます。
《ナルコレプシーの症状まとめ》
病名 | 症状 | |
主症状 | 日中の強い眠気と睡眠発作 | 突然、強い眠気に襲われ眠り込む。 |
副症状 | 情動脱力発作 | 興奮したときなどに身体の力が抜ける。 |
入眠時幻覚 | 眠りばなに鮮明な恐ろしい夢をみる。 | |
睡眠麻痺 | 幻覚にともなう金縛り状態。 | |
その他 | 自動症 | 眠気のあるとき、行動を覚えていない。 |
夜間の熟睡困難 | 睡眠サイクルの乱れにより熟睡できない。 | |
頭重(ずおも)・頭痛・複視 | 複視:物が二つに見えること。 |
共通点は?
ナルコレプシーの方の共通点はいくつかあります。
①夜の睡眠の質が悪い。
睡眠ポリグラフ検査では、何度も目を覚まし、睡眠が分断されている場合があります。
②自動症
眠ってしまったことを覚えておらず、自分の行動が後から思い出せない状態。
こういった症状があれば注意が必要です。
治療法は?
はっきりとした原因がまだ解明されていないことからも分かるように、根本治療は確立していません。
ただ、対処療法でかなりよくなることが分かっています。
- 薬物療法→症状の改善を維持することで、通常の社会生活を維持する。
- 生活習慣の改善
長い年月をかけることで症状は軽くなり、薬の量を減らすことができる病気でもあります。
最後に
子どもに多い病気ですが、大人もなる可能性があります。学校なら、ナルコレプシーの症状があっても進級することができるでしょう。
ですが、社会人なら普通に考えればクビになりますよね・・・
そもそも、本人に病気の認識がない場合も少なくありません。
ちなみに、ナルコレプシーのある幼い子どもや青年の場合、眠気や夜間睡眠の分断により攻撃性が高くなるため、しばしば行動上の問題が発生します。
このように、睡眠関連の病気は攻撃性が伴う場合があり注意が必要です。
参考
医療法人 上島医院
→https://ueshima-iin.com/sleepcenter/narcolepsy/
NPO法人 ナルコレプシー協会
→http://narukokai.or.jp/about_nalco.html#page001
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