前回、「寸借詐欺(すんしゃくさぎ)」についてご紹介しました。
寸借詐欺というのは、「財布を落とした」などと嘘をついて相手から少しだけお金を騙しとる詐欺の手口です。
ただ、本当に財布を落としてしまうことはあるかもしれません。
今回は、「緊急事態の時は警察でお金が借りられる!公衆接遇弁償費」についてご紹介します。
→「寸借詐欺と詐欺の定義」については、こちらの記事で紹介しています。
警察がお金を貸してくれるの?
正確に言えば、「場合によっては貸してくれる地域もある」ということになります。
どういうことかと言えば、公衆接遇弁償費は法律で定められたものではなく、「公衆接遇弁済費事務取扱要綱」で定められているからです。
「要綱」ってなに?
それでは、「要綱」の効力についてご存じでしょうか?
例えば、市の法規に「規則」・「条例」があります。これらは、どちらも法令の範囲内で運用されています。
一方、「要綱」はそもそも法令による根拠がありません。あくまでも、市の基本的な内事務の取扱いについて定めたもので、法的な拘束力もありません。
川崎市のホームページより
「要綱」は法令に基づく制度に関して・・・
- より細かな運用面について規定するもの
- 行政実務上の処理の方法等を規定するもの
- 行政指導の指針を定めるもの
- 補助金等の交付を定めるもの
- 法定外の組織や職の設置を規定したもの
こういった行政内部の一般的な準則を定めているものです。
*法律・条例・規則とは違い、市民に対して直接法的な効果を及ぼすものではない。
つまり、公衆接遇弁償費を制定する義務はないため、そもそも制定していない都道府県もあります。
これは、「公衆接遇弁償費事務取扱要綱」ができた経緯を見ていくと理解できます。
どうして、「公衆接遇弁償費事務取扱要綱」ができたの?
実は、この制度ができるまでは交番にいたおまわりさんのポケットマネーでお金を貸していました。
ですが、こんなことを続けていればそのおまわりさんが無用なトラブルに巻き込まれるリスク高くなる可能性がありますよね。
そもそも、給料が減っていきます・・・
そういった諸事情もあったことが想像できますが、「要綱」としてルールが定められました。
それが、1963年に制定された「公衆接遇費弁償事務取扱要綱(旧要綱)」です。
その後・・・
- 公衆接遇弁償費に関する事務が「警務部(警察職員の人事・福利厚生・教育などを担当する部署)」から、「警ら部(警戒して見回る部署)」に移管
- 実情にそぐわない事例が発生
こういった事情があり旧要綱は廃止され、1968年から「公衆接遇弁償費事務取扱要綱」が制定され、今も継続されています。
つまり、警察からお金を借りられる制度は半世紀以上前から地域によっておこなわれていましたが、それ以前はおまわりさんのポケットマネーから貸出されていました。
そのため、地域によって大きく違います。
ただし、お金を借りられる可能性があるのは、おまわりさんだけとは限りません。
「利便供与や応急的な措置に要する軽費」として扱われる!
先程もお伝えしたように、「おまわりさんのポケットマネー」では問題があるためルール化された地域があります。
当然、軽費として貸出しできる理由も定められています。
その理由というのが、「利便供与や応急的な措置に要する軽費」という名目で、弁償費として支給されることになります。
→「利便供与」というのは、他人のために物や利益を提供したりして特別なはからいをすることをいいます。
公衆接遇弁償費として認められるには?
- 外出先で所持金を盗まれ、または遺失した物に対する交通費
- 行方不明者等の保護にあたり、応急的な措置に要する経費
- 行路病人の保護または交通事故等による負傷者の救護に当たり、一時的応急措置に要する経費
- その他、公衆接遇の適正を帰するため必要とする軽費
このように、応急的に必要と認められた場合のみ支給されることになります。
また、借りられる場所や人も決まっています。
公衆接遇弁償費の支給はどこに行けばいい?
- 警察署
- 企画課
- 運転免許試験場
- 鉄道警察隊
- 交番
- 地区交番
- 駐在所
- 地域安全センター
- 鉄道警察隊分駐所
- 警察署の警ら用無線自動車
このように、以外といろんな場所で借りることができます。
極端な話し、バトカーや白バイのおまわりさんに相談することでも場合によっては、公衆接遇弁償費の処理を済ませてくれる可能性もあります。
それでは、貸出し額は1人に対していくらになるのでしょうか?
公衆接遇弁償費のあれこれ!
そもそも、公衆接遇弁償費は「帰るための交通費」の借り入れが基本になるため、1人当たり1,000円が上限になっています。
ただし、事務担当者などの承認があれば1,000円を超えて支給されることもあります。
また、あくまでも「貸出し」ですので以下の記入が必要になります。
- 住所
- 職業
- 電話番号
- 氏名
- 年齢
- 支出額
無事に借りることができた場合は、こういった必要事項を記入する必要があります。
警察が寸借詐欺にあわないための防止策にもなりますが、残念ながらお金を返さず寸借詐欺で捕まった事例がすでに発生しています。
「警察を騙す人がいるなんて・・・」と思う人もいるかもしれませんが、寸借詐欺に限らず残念ながら返しに来ない人は意外に多いようです。
こういったことから、公衆接遇弁償費はいつ廃止されてもおかしくない制度でもあります。
最後に
公衆接遇弁償費は、こちらの「お金を借りる大全」を確認すると、東京都・群馬県・大阪府・京都府・熊本県とかなり限られた地域でおこなわれているようです。
とはいえ、「交番に相談したら貸してもらえた!」という話しはTwitterなどで散見されるため、切羽詰まったときは最後の手段として覚えておくといいでしょう。
もちろん、借りているわけですから返すのが大前提です。
ないとは思いますが、冗談でも交番などでだまし取るような行為をすれば、寸借詐欺で逮捕される可能性もあります。
公衆接遇弁償費は、行政機関の税金からお金を借りる仕組みです。
普段のニュースで、「税金を不正に流用」なんて事件が取り沙汰されることがあります。
そのたびに、多くの人達は「私達が払った税金になにしてるねん!」と、盗まれた気分になるのではないでしょうか?
ですがこれは、私達にも同じことが言えます。
少額でも返さなくてはいけません。
「嘘つきは泥棒の始まり」なんて、小さい頃に習ったのではないでしょうか?
特に、お金に関することは自分自身の信用に関わる問題になりやすいため、正直にやっていきたいですね。
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