前回、「特定外来生物」の危険性と重い罰則についてご紹介しました。特定外来生物は、国家レベルで世界中で対策がおこなわれています。
ちなみに、既に*定着している特定外来生物といえば例えば「セアカコケグモ」がありますが、今回は、最近話題になっているまだ定着されていないと考えられている特定外来生物「ヒアリ」についてご紹介します。
*定着:外来種が新しい生息地で、継続的に生存可能な子孫をつくることに成功する過程のことです。
→特定外来生物については、こちらの記事で紹介しています。
「ヒアリ」ってそもそもなに?
- 和名=ヒアリ(別名=アカヒアリ)
- 原産地=南アメリカ
- 赤茶色をしていて、2~6mm(通常のアリの2倍~3倍という大きさ!)
さて、日本では「ヒアリは定着していない・・・」とされていますが、ヒアリはそもそも2017年6月に初めて日本で確認されています。
そもそも「ヒアリ」は、船や飛行機に積まれたコンテナや貨物につぎ込んで1940年代頃から、アメリカ合衆国やカリブ諸島に次々と侵入。2000年にはオーストラリア・ニュージーランド・中国・台湾でも発見されています。
*ただし、ニュージーランドだけは定着初期に徹底的に対処がおこなわれたため、唯一根絶に成功しています。
それでは、日本ではどのような場所でヒアリが発見されているのでしょうか?
日本国内での「ヒアリ」発見場所!
- 国際貨物が到着する港・空港・コンテナや貨物の中
- 港から陸送されて倉庫に運び込まれた荷物の中
- 海外製品の箱の中
から確認されています。
もし、ヒアリが定着するとこんな場所に巣が作られます・・・
海外の例
ヒアリは、日当たりの良い開放的な場所を好んで巣を作ります。
- 公園
- 芝生・緑地
- 水辺
- 畑地
ひと言でいってしまえば、「子ども達がよく行くところ」です・・・
また、ヒアリは他のアリとは違い大きなアリ塚を作るため、「見た目にも分かりやすい!」という特徴があります。そのため、そもそもヒアリが定着しているかどうかは見た目に分かりやすいことになります。
一目で分かる巨大なアリ塚
アリ塚は、大きく目立つようになるまでに2~3年かかりますが、アリ塚は、地中で深く広がっているため放射状に地下トンネルが十数メートル先まで伸びています。
そして、迷宮状にたくさんの部屋があり、女王ありと数千~数十万匹もの働きアリが集団で生活しています。つまり、アリ塚が1つでもあればすでに手遅れの状態といえるでしょう。
日本では、2019年2月に環境省が発表した「ヒアリの防除に対する基本的な考え方」より
→コンテナヤードでのみ、地中で集団で生息していることが見つかっていますが定着は見つかっておらず、アリ塚も今のところ発見されていません。
もし、「ヒアリ」が定着してしまったら?
1⃣人への健康被害!
全ての人に現れる症状
- 刺された瞬間に、熱いと感じるような激しい痛み。
- 刺された部位に小さな赤みが出る。
- 刺された翌日には、赤みの中央に膿がたまったようになる。
ヒアリ類の毒にアレルギー体質を持っている場合に起こる症状
❶じんましん
→刺された直後から刺された部分を中心に赤みや腫れが起こり、痒くなる。
*時には全身に痒みをともなう赤み・ミミズ腫れ(じんましん)が現れることがある。
➋呼吸困難・血圧低下・意識障害など
→刺されて20分以内に・・・
- 息苦しさ
- 声がれ
- 激しい動悸・めまい
- 腹痛
といった症状を起こすことがあり、さらに進行すると血圧が低下して意識を失うこともあります。つまり、「アナフィラキシーショック」の可能性が高く、迅速な救命措置が必要になります。
*ヒアリ類の毒には、ハチ毒と共通の成分などが含まれるため過去にヒアリだけでなく、ハチ毒アレルギーの体質を体質を持っている場合も注意が必要!
→ちなみに、ペット(犬やネコなど)も人と同じように重い症状を起こすことがあります。
2⃣電気設備・インフラ被害
- 電気設備(配電盤・変圧器・機械の内部)に巣を作り、信号機や空港の着陸灯を故障させる。
- 電線をかじって、停電やショートさせて火災の原因になる。
3⃣生活への影響
ヒアリが巣を作る場所から分かるように・・・
- 花見
- ピクニック
- BBQ
- 花火大会
- 公園・河川敷でのレジャー
- 家庭菜園・ガーデニング
など、これまでのように気軽にできなくなります。もし、誤ってアリ塚を壊せばヒアリが大量に出てきて一気にかまれます。(ヒアリは、「殺人アリ」・「無敵アリ」なんて呼ばれます)
4⃣農業被害・産業への影響
- 農作物をかじって品質や収量を低下
- 家畜を襲う
- 農作業をする人が頻繁に刺される(海外では、耕作放棄や離農者が増えるなどの影響が出る)
- 輸入された商品などにヒアリが混入すれば物流にも影響がでてきます。
5⃣生態系被害
- 日本の在来アリを駆逐
- 小動物を捕食して減少
→生態系のバランスを壊していきます。(海外では、希少種にも影響が出ている)
このように、ヒアリが定着することでこれまでの生活が一変してしまう可能性が高くなります。少なくとも、気軽にアウトドアには行けなくなるでしょう・・・
対処法はあるの?
予防策は・・・
- 野外での作業時はプラスチック製の手袋を着用する等、肌を露出しない。
- アリが身体をのぼりにくくするために、ベビーパウダーを靴やズボンに振りかけておく。
- サンダル等を外に置きっぱなしにしない。
- 屋内でも注意が必要。
もっとも、これらの対策はあくまで国内でヒアリが発見されている場所や定着してしまった場合の予防策です。
刺されたら・・・
- 刺された直後20~30分後程度は安静にし、体調に変化がないか注意。
→軽度の場合は、刺された部分の痛み・痒み・じんましん等の症状が現れる。
→息苦しさ・声がれ・激しい動悸やめまい等、容体が急変した場合は急いで最寄りの医療機関を受診する必要がある。(「アリに刺された」「アナフィラキシーの可能性がある」と伝える)
「ヒアリかな?」と思ったら・・・
環境省 ヒアリ相談ダイヤル
- 0570-046-110(IP電話の場合:06-7634-7300)
- 受付:月・水・金・土・日・祝(AM9:00~PM17:00)
→または、都道府県の環境部局に連絡してくださいね!
*都道府県の環境部局の連絡先はこちらから
最後に
ヒアリは、世界的に生息域を拡大し定着すれば根絶が難しい。そして、米国では毎年約1500件の被害があり約100人が亡くなられています。
これだけでも、いかに危険なアリかは分かるかと思います。
また、ヒアリ(火蟻)と呼ばれるだけあり、「その痛みは火に触れたときのような痛み」から‘’fire ant‘’と名付けられたほどです。
このように、ヒアリはとても危険なアリです。もし、「日本に定着していることが認められた・・・」なんてニュースがあれば不用意に公園にも行けなくなるかもしれません。
子育て世代にはかなりの痛手です・・・
子ども達は、特に注意してあげて下さいね!
参考
気をつけて!危険な外来生物
→https://gairaisyu.tokyo/species/danger_15.html
特定外来生物ヒアリに関する情報
→https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/attention/hiari.html
兵庫県:特定外来生物「ヒアリ」及び「アカカミアリ」について
→https://web.pref.hyogo.lg.jp/nk20/hiari.html
産経ニュース:殺人「ヒアリ」の恐怖 刺されるとどうなる? 米では毎年約100人死亡
https://www.sankei.com/affairs/news/170630/afr1706300016-n1.html
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