前回、駐車場などで車の扉を開けた時に、隣の車にぶつけてしまういわゆる「ドアパンチ」についてご紹介しました。
さて、そんなドアパンチは場合によっては「当て逃げ」になる可能性があることも合せてお伝えしました。
それでは、そもそも「当て逃げ」についてどれだけ正しく理解できているでしょうか?
今回は、「当て逃げで免停・刑事罰!?」についてご紹介します。
→「ドアパンチ」については、こちらの記事で紹介します。
そもそも「当て逃げ」に関係する法律は?
まず、「当て逃げ」は道路交通法により定められています。
さて、そんな当て逃げは「駐車場や道路上などで他人の車に接触したにも関わらず、警察を呼ばずに逃げてしまう行為」のことをいいます。
簡単に言えば、交通事故として取り扱われることになります。
つまり、前回紹介した「ドアパンチ」も場合によっては、当て逃げに含まれることになります。
同じ「当て逃げ」でも、道路交通法違反にならない?
前回の記事でも紹介しましたが、そもそも道路交通法で定められている「道路」には、基本的に私道が含まれていません。
例えば、駐車場は私道に作られていることが多いですよね。
ただし、例外としてショッピングモールのように不特定多数の人が行き交う駐車場は、「道路」として扱われます。
→逆に言えば、賃貸の駐車場などは特定の人しか使わないため「私道」として扱われ、当て逃げにならない可能性が高い。
このように、同じ事故でも「車に当たる・当てられる現場」によって、必ずしも道路交通法違反の交通事故として「当て逃げ」になるとは限りません。
ここまでが、前回の復習です。
それでは、私道ではない場所で「当て逃げ」と判断された場合、どうなるのでしょうか?
「当て逃げ」と判断されたら免停になる可能性が高い!?
そもそも、道路交通法第72条
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
とあります。
要約すると、交通事故を起こしたときの運転者の義務として交通事故を起こしたら運転を直ちに停止後・・・
- 負傷者がいる場合には負傷者を救護する「救護義務」
- 道路における危険を防止する等必要な措置を講じる「危険防止措置義務」
- 警察に対し、交通事故が発生した日時や場所、発生状況などを報告する「報告義務」
この3つの義務が、そもそも運転者には課せられています。
さて、負傷者がいれば「ひき逃げ」になりますが、「当て逃げ」の場合は車などの物損ですよね。
つまり、ひけ逃げによる「救護違反」はありませんが、「当てたにも関わらず逃げた」時点で、「危険防止措置義務」と「報告義務」の2つの違反をしたことになります。
*物損事故の場合は、基本的に刑事事件にならない。
ただ、問題は「危険防止措置義務違反」と「報告義務違反」には重い罰則があります。
「危険防止措置義務違反」と「報告義務違反」
❶危険防止措置義務違反
→1年以下の懲役または10万円以下の罰金刑
➋報告義務違反
→3か月以下の懲役または5万円以下の罰金刑
ただし、これは道路交通法として罰せられる場合です。
ですが、ドライバーはスピード違反など、違反に対してはさらに行政責任が問われため「違反点数」として減点されることになりますよね。
- 危険防止措置義務違反・・・5点
- 報告義務違反 ・・・2点
A.合計で7点
さて、前歴によって免停になる期間が変わります。
前歴と免停期間とは?
当て逃げをすれば、違反点数として7点減点されることになる可能性が高いですが、警視庁では免停になる違反点数についてこのように示されています。
- 前歴がない場合:6~8点 →期間30日
- 前歴が1回 :6~7点 →期間90日
- 前歴が2回以上 :4点以上→期間150日
3回以上は、さらに低い点数で免停期間が150日となります。
このように、当て逃げによる免停期間は一概には言えませんが、少なくとも「当て逃げはこれまで一度も違反がない人であっても免停になる可能性が高い行為」だということになります。
このように、「当て逃げ」をしてしまうと「行政責任(減点)」と「刑事責任」が課されることにことになります。
逆に言えば、物損事故を起こして逃げなれば(「当て逃げ」をしなければ)、行政責任も刑事責任もなく被害者との話し合い(民事責任)のみということになります。
当て逃げを放置したら?
現実問題として、当て逃げは泣き寝入りすることが少なくないようです。
ただ、周りに人がいなかったとしても、最近では「ドライブレコーダー」や「監視カメラ」の普及が進んでいます。
それでは、もしも警察による捜査が行なわれて、犯人として特定された場合どうなるのでしょうか?
*そもそも、当て逃げをして少しでも離れてしまうと「当て逃げ」になる可能性があるため、一時でも離れないように注意する必要がある。
→ココナラ法律相談を確認してみると、「1時間後に現場に戻ったが、当て逃げにはならなかった」という事例も紹介されているため、一概に離れれば「即アウト!」というわけでもないようです。
それでは、現場に戻ることもなく警察にも通報せずに放置した場合、どんな可能性があるのでしょうか?
いつ警察がやってくるか分からない
そもそも、警察の捜査は被害届を受理して初めて捜査が始まります。(捜査されない場合もある)
つまり、被害者が被害届をいつ出して、いつから捜査が始まるか(放置されるか)によって違いますが、明日かもしれませんし、1週間後に逮捕されるかもしれません。
そして、もしも逮捕されれば「略式起訴(手続の開始後すぐに証拠が評価され、2週間以内に処分の内容が決定)」される可能性が高くなります。
つまり、罰金刑が適用され、前科者になる可能性が高くなります。
とはいえ、もしも「当て逃げ」をしてしまっても、1日も早く自首をすることで不起訴になる可能性が高くなります。
→不起訴になれば、そもそも裁判沙汰にならないため「罰金刑」や「前科」が付くことはない。
なんにしても、「当て逃げ」は放置するほど大変な状態になることは覚えておいた方がいいでしょう。
最後に
「当て逃げ」は、言葉通り「逃げる」ことで民事責任だけでなく、行政責任・刑事責任まで負うことになります。
→逮捕されてしまえば、前科が付く可能性が高い。
他にも、警察に「交通事故があった」と届けていない場合、事故証明ができず自動者保険での保障もしてもらえない可能性もあります。
このように、逃げてしまうと八方塞がりになってしまう可能性が高くなるため、まずは安全なところに車を止めて気持ちを落ち着かせてから、警察への連絡と相手方との相談をする必要があります。
ちなみに、相手方との相談についは自動者保険会社によっては示談交渉をやってもらえる場合もあります。
ところで、当て逃げした加害者側の同乗者も罪に問われることがあるのでしょうか?
実は、当て逃げを見て見ぬふりをすれば、同乗者にも損害賠償の責任が生じる可能性があります。
さらに、運転者に「このまま逃げよう!」などとそそのかせば、刑法第61条の「教唆罪」になる可能性があります。
もしも、あなたが「当て逃げ」に限らず事故をしてしまった車に同乗していたら・・・
- 運転者を落ち着かせて
- 車を安全なところに停車
- 警察へ連絡
- 保険会社へ連絡
これが、基本的な行動になります。
「逃げる」という選択肢だけはやらないようにご注意下さい。
参考
ベリーベスト法律事務所
→https://keiji.vbest.jp/columns/3598/
弁護士法人 法律事務所ロイアーズ・ハイ
→https://keiji.lawyers-high.jp/category/trafic_accident/atenige.html
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