●この記事では、「無許可音楽アプリと著作権法改正」について説明しています。
前回、著作権法の改正により漫画のアップロードも2021年1月1日から厳しく取り締まられることをご紹介しました。
というのも、そもそも著作権法は「音楽」や「映像」に限られていたためです。
それでは、そんな「音楽」は本当に違法なダウンロードが増えているのでしょうか?
今回は、「日本レコード協会が実施した2019年度の調査結果」についてご紹介します。
→「著作権法と漫画について」はこちらの記事で紹介しています。
「著作権法の改正」でなにが変わるの?
前回紹介した漫画のアップロードは、冒頭でお伝えしたように2021年1月1日から厳しく取りしまわれることになります。
その一方で、違法アップロードされた音楽へ誘導される、いわゆる「違法音楽アプリ(無許可違法アプリ)」への規制強化は、2020年から10月からすでに施行されています。
注意点としては、「改正された著作権法は、規制によって施行のタイミングが違う」という点です。
ちなみに、「違法音楽アプリ」というのはアーティスト、レコード会社等の権利者に無断で、データ蔵置サイトにアップロードされた音楽を聴けるように誘導するアプリのことです。
→利用者は無料で聞けますが、収入はアーティスト・レコード会社などの権利者には一切還元されない。
つまり、全く関係ない人にお金がはいるだけで、お金を出して制作などをしている側にはお金が入らないことになります。
アーティストなどからすれば、「収入がない!?」ということは評価されていないことと同じ意味になり、解散に追い込まれる可能性もあります。
少し話しが反れてしまいますが、例えば私のこのブログもまったく収入につながらないのであれば、続ける意味がなくなるためやめることになるでしょう。
→このブログ1つとっても、ドメイン代など諸経費が毎年かかる。
さて、話しを戻しますがその一方で、できあがった物(音楽)だけを勝手に配信する「アプリ運営者」や「リンク提供者」には広告収入が入ることになります。
そのため、今回の改正で以下の場合は刑事罰の対象に・・・
- 違法音楽アプリを提供する行為(5年以下の懲役または5百万円以下の罰金またはその両方)
- 違法にアップロードされた音楽へのリンクを違法音楽アプリに掲載する行為(3年以下の懲役または3百万円以下の罰金またはその両方)
も違法となりました。
むしろ、これまで違法になってなかった方が不思議なくらいで遅いくらいでした。
ちなみに、私達は「知らずに違法アップロードされた音楽を再生しても違法にはなりません」が、「知っていてダウンロードすれば違法」となります。
さて、それではどうして「遅いくらい」と言えるのでしょうか?
その理由は、調査結果を見れば明らかになります。
調査結果はどうなったの?
2019年の現状とこれまでの推移から見ていきましょう。
2019年度の調査結果
2020年4月に日本レコード協会が発表した報告書によるとこのようになっていました。
2019年度の音楽聴取方法は、年代別ではっきりと分かれていました。
- 10代:you tube→約75%
- 20代:定額制音楽配信サービス→約40%
ちなみに、10~20代は無料音楽アプリ・サービスの利用が他の年代と比べても高い結果になりました。
*50・60代の高齢層は、「テレビ・ラジオ」の割合が高い。
1人につき、半年間の音楽への支出額は?
1人につき、半年間の平均は総支出額は9,394円
- 「コンサート、演奏会、ライブ、音楽イベント、ミュージカル等の入場料」:2,341円
- 「音楽関係のグッズ、出版物」:1,663円
- 「CD購入」:1,318円
つまり、コンサートやライブなどへ直接出かける人の支出が最も多くなっていることが分かりました。
さて、このアンケートで支出が減った項目は多い順から「カラオケ(29%)」・「CDレンタル(28.5%)」・「CD購入(26.8%)」が最も多くなっていました。
それでは、「楽曲購入が減少した理由」はなんだったのでしょうか?
楽曲購入が減少した理由は?
- 金銭的な余裕が減った(34.9%)
- 無料の音楽配信サイトや動画配信サイト、アプリで満足するようになった(30.3%)
- 現在所有している楽曲で満足している(29%)
「金銭的な余裕の減少」が最も多い原因になっていたことは衝撃的でしたが、ということは音楽にお金をかけられない人が増えたことを意味しています。
また、「無料サイト・アプリで満足」が約3割になっていました。
つまり、「音楽にお金をかける余裕がない3割以上の人は無料サイトやアプリを使っている」ことが容易に予想できますし、そもそも「無料サイトやアプリを使って満足している人は、約3割」いますよね。
つまり、平均すると少なくとも全体の6割以上の人達が利用した音楽アプリやサイトの一部から、全く関係ない人に楽曲の収入がわたっていた可能性があることになります。
さらに言えば、「満足していない人」もそういったサイトやアプリを利用している可能性もあります。
それでは、いつからこういった状況にあるのでしょうか?
これまでの推移と現状は?
無許諾音楽アプリ実態調査委員会によれば、現状ではこのようになっています。
- 無許可音楽アプリの推計利用者数:246万人(人口の2%)→10代~20代:約194万人(全体の78.7%)
- 年間再生回数:115億回(1日平均:平日-12.25回 / 休日-13.75回)
つまり、10代~20代の若者が中心に1人当たり、1日12~13回ほど2020年10月から違法になっている違法アプリでこれまで音楽を聴いてきたことになります。
さて、問題はこの違法アプリの利用者数が年々爆発的に増えていったことです。
2013年~2020年までの推移
2013年~2020年までの約8年間で、違法音楽アプリ(無許諾音楽アプリ)の利用者数は年々爆発的に増加していきました。
図1 《違法音楽アプリの利用推移》
図1から分かるように、2013年は約18万人しか利用者はいませんでした。
ところが、たったの3年で2016年には100万人に迫る勢いにまで増加。さらに、2年後の2018年には200万人に迫り、2020年には約246万人が利用するにいたりました。
これだけの人数が毎日のように違法アプリから音楽を聴いていたわけですから、なんの関係もない運営元にはたくさんの広告収入が入っていたことでしょう。
ただ、その陰で解散していったアーティストがたくさんいたことは、想像に難しくありません。
そして、今回の改正がもしもなければ「アーティストがさらに食い物にされていた・・・」であろうことが、最後に紹介するアンケート結果から分かります。
アーティストに収益が還元されないことを知っても使い続けるのか?
この答えは、以下のようになっています。
「使うのをやめる」と回答
- 10代:13.1%
- 20代:14.2%
つまり、2割もいませんでした。
何が言いたいかといえば、「使うのをやめる」と回答した若者も、周りのほとんどの友人などが違法アプリを使っていれば、使うようになるという点です。
そして、そんな若者も年をとり、今度はその子ども達も当たり前のように違法アプリを使うようになるでしょう。
最後に
私が子どもの頃は、音楽は「テレビ」や「ラジオ」以外で音楽を聴こうと思えばCDを買ったり、ライブに出かける必要がありました。
つまり、「音楽は無料」という感覚はほとんどありませんでした。
ところが、you tubeやアプリなどにより、「音楽は無料」が当たり前になっていきました。最初は多くの人にとって違和感があったのではないでしょうか?
ですが、その状態が続けば普通になってしまいます。
今後も、便利になればなるほどさまざまな規制が設けられることになるでしょう。
これまでなかったことなので、法律が間に合わないことは仕方がないのかもしれません。ですが、「昨日までよかったのに、今日からはダメなこと」がこれからも増えていくことになります。
今、使っている音楽アプリが違法にならないか?
もう一度、確認してみてはいいでしょうか?
「エルマーク」を確認!
エルマークは、音楽や映画などの配信コンテンツを正しく利用するためのマークです。このマークがあるサイトは、許可が取られているため安心して利用できる目印になります。
「パソコン向けサイト」・「携帯電話向けサイト」・「レコード会社・映像製作会社の公式サイト」の・・・
- トップページ下
- 購入ページ(ダウンロードボタンや購入ボタンのあるページ)
- 再生画面ページ
などに、「エルマーク」があるか確認して下さいね。
参考
あの音楽アプリはもう違法
→https://www.noinfringingapp.jp/#movie
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