「恩赦」についてどれだけ知ってる? 実は、種類があるんです!

 

2019年10月22日は、「即位礼正殿の儀」がとりおこなわれました。

この日は、休日になりましたよね。

そして、もう一つ「恩赦」が話題になりました。

恩赦と言えば、「刑が軽くなること」は多くの方がご存じだと思います。

ですが、そもそも「恩赦」とひと言でいっても実はいくつも種類があります。

今回は、「漠然としか知らない恩赦」についてご紹介します。

 

そもそも「恩赦」ってなんであるの?

法務省のホームページを確認すると、このように書かれています。

恩赦にはいくつかの役割がありますが,その中で最も重要なものとして,「罪を犯した人たちの改善更生の状況などを見て,刑事政策的に裁判の内容や効力を変更する」というものがあります。具体的に説明しますと,裁判で有罪の言渡しを受けた人たちが,その後深く自らの過ちを悔い,行状を改め,再犯のおそれがなくなったと認められる状態になった場合などには,被害者や社会の感情も十分に考慮した上で,残りの刑の執行を免除したり,有罪裁判に伴って制限された資格を回復させたりということが行われます。
このように恩赦は,有罪の言渡しを受けた人々にとって更生の励みとなるもので,再犯抑止の効果も期待でき,犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしているといえます。

さて、このように恩赦は必要なものと考えられています。

とはいえ、恩赦には反対されている方も多いのではないでしょうか?

それでは、「恩赦」にはどういった種類があるかご存じですか?

 

恩赦の種類とは?

そもそも恩赦は、1947年に交付された「恩赦法」によって定められています。

  1. 大赦
  2. 特赦
  3. 減刑
  4. 刑の執行免除
  5. 復権

この5種類があります。


❶《大赦》

一定の犯罪者全体について、刑を消滅させる恩赦

例えば、有罪の言い渡しを受けた者はその効力が失われます。また、受けていない者は公訴権(刑事手続き上の訴え)が消滅します。

 

➋《特赦》

有罪の言い渡しを受けた者の内、特定の者について有罪の言い渡しの効力を消滅させる恩赦です。

 

❸《減刑》

刑の言渡しを受けた者に対して、制令で罪又は刑の種類を定めて刑を軽くする恩赦です。または、特定の者に対して刑や刑の執行を軽くする恩赦をいいます。

→ちなみに、「刑減」は裁判所が刑を言渡すときに刑を軽くすることをいいます。

 

❹《刑の執行免除》

刑の言渡しを受けた特定の者に対して、行われる恩赦。

ただし、以下の場合は執行免除は行われません。

  • 刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者
  • 刑の一部の執行猶予の言渡しを受けてその刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わった者

これらの者で、まだ猶予の期間を経過していない者に対しては、刑の執行免除は行われません。

 

❺《復権》

復権とは、資格を回復することです。

例えば、選挙違反により資格を喪失・停止された者の権利が復権します。

さて、このように「恩赦」とひと言でいっても様々な種類があります。

それでは、これら全ての恩赦が今回の「即位正殿の儀」を理由に実施されたのでしょうか?

gregroose / Pixabay

 

実際に実施された恩赦は限定的!

そもそも恩赦には、大きく分けて二つの種類があります。

 

政令恩赦

制令で恩赦の対象となる罰や刑の種類・基準日等を定めて、その要件に該当する者について一律に行われるもの。

大赦・減刑・復権の3種類があります。

 

個別恩赦

有罪の裁判が確定した特定の者に対して、個別に恩赦を相当とするか否かを中央更生審査会が設置し、相当と判断される者に対して内閣が決定し天皇の認証を受けて行われます。

特赦・減刑・刑の執行免除・復権の4種類があります。

個別恩赦には、常時いつでも行われる「常時恩赦」と内閣が一定の基準を設け一定の期間に限って行われる特別基準恩赦があります。

さて、今回実施されたのは限定的な「政令恩赦」と「特別基準恩赦」でした。

 

実施された「政令恩赦」

  • 恩赦の種類は、「復権」のみに限定されています。つまり、大赦や減刑はおこなわれません。
  • 恩赦の対象を、罰金刑のみ、かつ刑の執行終了または執行の免除から令和元年10月22日の前日までに3年以上を経過している者のみに限定。

 

特別基準恩赦

  • 病気等で長期間刑の執行が停止され、なお長期にわたり執行困難な者に対する、刑の執行免除。
  • 刑を受けたことが社会生活上の傷害となっている罰金刑の執行終了者に対する復権。

 

結局、どうなったの?

罰金刑を受けて3年たった約55万人を対象とする「復権」

  • 交通関係法令違反者・・・約8割
  • 公選法違反者   ・・・約430人

→政令恩赦

 

中央更生保護審査会が個々に審査する「個別恩赦」の要件を記しました。

  • 罰金を受けてから3年に満たなくても、就職や結婚の障害になっている場合は復権を認める。
  • 病気などで懲役刑や禁固刑の執行を長期間停止されていれば「刑の執行免除」の対象。

→個別基準恩赦

 

注意点は?

政令恩赦の注意点

交通関係法令違反者は約8割が対象になっていますが、たとえ「復権の対象」になったとしても以下の注意点があります。

  1. 過去に納付した罰金は返金されない。
  2. 取り消された運転免許証が戻ってくることはない。
  3. 欠格期間が短縮されることはない。

→運転免許取消処分は、刑事処分を根拠に行うものではありません。あくまでも、違反行為を点数化しその累積に基づいておこなわれるため、復権の効果が及ぶことはありません。

*復権したことを証明するには、希望者は有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁で、復権証明書が発行されるため、申し出る必要があります。

 

特別基準恩赦の注意点

「特別基準恩赦」を希望する場合は、出願の手続きが必要です。

原則、令和元年10月22日~令和2年1月21日までの間に、有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官に書類を出願する必要があります。

→復権を希望する人で、2個以上の裁判により複数の罰金に処せられた人は、最後に有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官に出願する。

*一律に恩赦を認められる「政令恩赦」とは違い、「特別基準恩赦」の場合は法務省に設置されている中央更生保護審査会による審査があるため、出願すれば必ず認められるわけではありません。

 

最後に

「恩赦は必要か?」という議論があります。

ですが、そもそも「恩赦」について知らなければ議論もできません。

個人的に気になるのは、恩赦の対象になった公選法違反をした約430人の存在です。

公職選挙法はとても厳しく、それだけ責任が重い代わりにとても大きな収入・権限を有しています。

はたして、どういった人が復権したのかとても気になる所です。

それはそうと、今回の恩赦では少なくとも「大赦」や「特赦」は含まれていません。もう少し冷静な議論ができるといいですね。

恩赦そのものがいけないのか?それとも、恩赦の限定的な部分が問題なのか?

「問題がある!」と考えるのなら何が問題か、もう一度考えてみてはいかがでしょうか?


参考

恩赦法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000020

法務省
http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo08_00006.html

nippon.com:政府、即位礼合わせ恩赦実施=復権令・特別基準を施行
https://www.nippon.com/ja/news/yjj2019102200487/

 

 

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