新型コロナウイルスの重症化する原因の1つ「COPD」 日本と世界の差は?

 

前回、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)についてご紹介しました。

この病気は、新型コロナウイルスと隣あわせの呼吸苦になった場合に命の危険があります。

さて、そんなそもそも新型コロナウイルスが重症化する呼吸器疾患の1つとして厚生労働省は、「COPD」という病気を挙げています。

今回は、「新型コロナウイルスが重症化しやすいCOPD」についてご紹介します。

 

ARDSについては、こちらの記事で紹介しています。

新型コロナウイルスとARDS ~再生医療も進展している?~

 

「COPD」ってどんな病気?

COPDは、「Chronic obstructive pulmonary disease」の略です。

  • Chronic・・・慢性
  • obstructive・・・閉塞性
  • pulmonary・・・肺の
  • disease・・・疾患

日本語では、「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれます。また、COPDは「たばこ病」や「肺の生活習慣病」とも呼ばれます。

さらにいえば、日本では年間1万8千人が亡くなり日本人男性の主な死亡原因の第8位となっています。

ちなみに、全世界では死亡原因の第4位に当たるため、とてもポピュラーな病気だと言えます。

この時点でピントきた人が多いと思いますが、つまりタバコの煙などの有害な物質を長い間吸い続けることで引き起こされる肺の病気です。

*国内の調査では、40歳以上の約530万人、70歳以上の約210人がCOPDに罹患していることが報告されている。

 

肺でなにが起こっているの?

そもそも、空気の通り道といえば「気道」ですよね。

ところが、COPDになるとその気道で炎症が引き起こされていたり、酸素を取り込む肺胞の壁が壊れたりします。

つまり、炎症により空気の通り道である気管支(下気道)が狭くなってしまいます。

さらに、酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)をしている肺胞が破壊されているため、吸った空気が出ていかないため肺胞に空気がたまってしまうことになります。

それでは、実際にどのように進行していくのでしょうか?

 

COPDの影響!

  1. 咳や痰がみられる程度のため、「病気」と認識されにくい。
  2. 肺機能の低下とともに動くと息切れがする。

さて、息切れによりどんどん行動が制限されていきます。

階段を使わなくなる→坂道を避ける→携帯の酸素吸入がないと外出できない→安静にしていても息切れ

ただし、こういった動かなくなる流れは、COPDの悪循環となりどんどん病気を進行される原因になってしまうため、なによりも「動くこと」が最重要課題となります。

 

原因はタバコ?

そもそも、COPD患者の約90%は喫煙歴があります。つまり、受動喫煙も含めてCOPDの最大の原因がタバコということになります。

ちなみに、タバコ以外にはこのような原因があります。

  • 大気汚染
  • 有機燃料(バイオマス)を燃焼させた煙の吸入
  • 職業性の粉塵や化学物質への暴露
  • 呼吸器感染症
  • 小児期の呼吸器疾患

こういったものも原因と考えられています。

つまり、例えば中国や韓国などで大気汚染が社会問題化していますが、すべての人にCOPDの危険性があることになります。

それでは、COPDの進行は抑えられないのでしょうか?

 

COPDの進行を止めるには?

日本もPM2.5や黄砂など、例えば大気汚染が深刻な季節がありますよね。

とはいえ、大気汚染は個人では外出を控えたりマスクをするといった予防しかできません。

→日本の大気汚染地図については、こちらの「日本の大気汚染: 現在の大気汚染地図」でご確認下さい。

ですが、COPDの最大の原因がタバコなら、禁煙することで進行を抑えることができます。ただ、進行が完全に止まるわけではなく、あくまでも「進行を緩やかにすることができる」ということです。

ちなみに、「喫煙後、20年後ぐらいに相当数の人がCOPDが発症する」と考えられています。さらに、40代では男性35.5%と平均喫煙率が最も高くなります。

単純な話し、例えば「60代で症状が現れ、70代で酸素吸入器が必要になるのと、80代以降から酸素吸入器が必要になるのとどちらがいいですか?」ということになります。

 

最後に

COPDは、進行することで栄養不足となり痩せていきます。そして、新型コロナウイルスに限らず、合併症を引き起こしやすくなります。

特に・・・

  • 肺がん
  • 心・血管疾患(高血圧・心筋梗塞・狭心症・脳血管障害)
  • 糖尿病
  • 骨粗鬆症
  • 消化性潰瘍
  • 胃食道逆流症
  • うつ病

こういった、肺だけでなく全身管理が必要になるとても怖い病気でもあります。なにより、進行していくと寝たきり状態になってしまいます。

そもそも、喫煙者の肺は本人が喫煙をやめたとしても損傷しているため、受動喫煙によりさらに進行してしまうことが指摘されています。

本来なら、日本たばこ産業(JT)が声明を出したり国が何らかの措置を講じるべきでしょう。ただ、2020年4月1日からは「改正健康増進法」が施行されます。

ですが、すでにJTは改正健康増進法の対象にならない煙のでないタバコ「無煙たばこ」の販売を開始しています。

今後は、煙も臭いもしない「無煙タバコの害」が社会問題になるかもしれませんね・・・

 

「改正健康増進法」についてはこちらの記事で紹介しています。

改正健康増進法も関係ない?無煙タバコが普及してしまうかも・・・

厚生労働省が発表している「人口動態統計の概況」によると、COPDの死亡者数は2017年の1年間で18,523人でした。

ただし、世界では2030年にはCOPDの死因が第3位になると予想されています。新型コロナウイルスの日本と世界との差は、COPDの患者数。つまり、喫煙者の人数が影響しているのかもしれません。


参考

COPD-jp.com
https://www.copd-jp.com/concept/about_copd.html

独立行政法人 環境再生保全機構:ぜん息などの情報館
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/about/02.html

文京区 COPD講演会と肺年齢測定
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/platform/event/news/2019/pdf/20190702_1.pdf

日本生活習慣病予防協会:「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」
http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/copd/

 

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