「羞明」は、眼の病気とは限らない!? まぶしさの恐怖とは?

 

皆さんは、「羞明」という言葉をご存じでしょうか?

2020年度に、厚生労働省では障害者総合福祉推進事業で、「羞明(まぶしさ)等の症状により日常生活に困難を来している方々に対する調査研究」が始められることになりました。

それでは、なぜ国が対策するほどの調査が必要なのでしょうか?

今回は、「あまり知られていない羞明(しゅうめい)」についてご紹介します。

 

そもそも「羞明」ってなに?

「羞明」とは、普通の人がまぶしいと感じない光を「まぶしい」と感じる状態をいいます。この「まぶしい状態」を専門用語で羞明(しゅうめい)と言います。

ただ、その程度や原因は千差万別です。

さらに言えば、決して人ごとではなく最近では、パソコンやスマホを見る時間が増えたことで、ギラギラした画面を見ることから「まぶしさを訴える人」が増加しています。

 

原因としては様々な原因が挙げられています。

  1. ドライアイや逆さまつげなどによる「角膜の病気」
  2. 白内障
  3. 白内障の手術後
  4. 斜視
  5. 眼瞼けいれん
  6. 網膜色素変性・加齢黄斑変性
  7. 虹彩炎
  8. 視神経疾患
  9. 光過敏症

例えば、瞳孔は明暗に反応して小さくなったり、大きくなったりしてカメラの絞りと同じ役割をしています。

ですが、反射機能が働かなくなり瞳が開いた状態になってしまうと、まぶしさを感じることになります。

他にも、白内障や角膜・網膜の病気など眼球に異変があることで、光を避けることもあります。

つまり、そもそも治療をしようとすれば「そのまぶしさの原因」となる疾患を治療することが基本になります。

ですが、高度で持続的な羞明の場合はそもそも目の病気ではなく、脳の誤作動で生じている可能性が高いことが指摘されており、「中枢性羞明」とも呼ばれています。

つまり、目ではなく脳の機能に異変が生じているために引き起こされている状態です。

ただ、「視床や視床下部の誤作動といったメカニズムがある説」などもありますが、そもそも誤作動は形に異常がでるわけではないため、画像診断などが進歩したとはいえ、いまだに科学的に証明することができていません。

どちらにしても、結果的に周りには分からないが「光に苦しんでいる人達がいる」ということは確かです。それでは、そんな「羞明」にはどういった問題があるのでしょうか?

 

「羞明」のなにが怖いの? -1-

羞明の治療ができない場合は、日常生活の工夫が必要になりますが、ここには同時に問題もはらんでいます。

 

羞明の対策とは?

  • 帽子やフードをかぶって光を遮る。
  • 乗り物に乗っている時は目を閉じて休む。
  • 蛍光灯が苦手な方は間接照明に切り替える。(LEDが苦手な方もいる)
  • 屋内では遮光カーテンを利用し、インテリアもシンプルな物に統一する。
  • 白い紙がまぶしいときは、色の下敷きを利用する。
  • パソコン・スマホなどは、輝度を下げる。
  • 疲労がたまると視覚過敏が出やすくなるため、早めに休息をとる。
  • 遮光眼鏡を利用する。サングラスのように暗さを感じさせずに、まぶしさを抑えコントラストを高めることができる。

他にも、職場ではまぶしくない席に座らせてもらうなど、日頃から光に対する対策をする必要があります。

ただし、「羞明」と一言でいっても、どの光にどの程度反応してしまうのかは個人差があるため、職場で席移動といった同じ対策だけでは不十分な対策になる可能性があります。

それでは、こういった光対策のなにが問題だと思いますか?

 

コロナの影響がこんな所にも・・・

例えば、サングラスをかけて帽子を深くかぶった人が後ろを付いてきたとします。普通に怪しいですよね・・・

最近では、コロナの影響で真夏でもマスクを付けることになりました。

さらに怪しいですよね。

しかも、こんな人が昼間の光を避けるために、夕方や夜に歩いてたらどうでしょうか?

その結果、この症状の人達が何人も職質されているようです。

「まぶしく感じるだけじゃないの?」と思うかもしれませんが、強烈な刺激にさらせると言うことは、それだけではすまないことが指摘されています。

 

まぶしいだけじゃない!「羞明」の怖さ -2-

ヨミドクターの記事より

パソコンやスマホを見続けるとまぶしさや痛みが生じ、それを我慢してなおも続けると頭痛、吐き気、めまいなど身体症状も出て、なかなか回復しなくなる

このようにあります。

高度の羞明を持つ人に比較的共通な医学的特徴は、「注視努力の企図や遂行で症状が悪化、出現する」と言われている点です。

つまり、「光を我慢してしっかり見ようとすればするほど、症状が悪化していく」ということです。さらに、回復するまでに長期間かかることまであります。

その結果、外出が難しくなり引きこもることになる可能性が高く、就労も難しくなります。職質の危険を犯してまで、外出する人は少ないですよね。

こういった理由から、一言でいえば「社会的に死んでしまう」。そんな危険性を「羞明」という症状がはらんでいることが分かるのではないでしょうか。

 

最後に

厚生労働省の調査がやっと入ることになり、少しずつ実態が明らかになるかもしれません。

ひょっとすれば、「オストメイトマーク」のような、一目で分かるシンボルマークができるかもしれません。そこから、就職支援や日常生活の援助にまで広げられる可能性もあります。

障害は、目に見える物ばかりではありません。

息子も、「発達障害の疑い」や「弱視の診断」を受けましたが、見た目にはまったく分かりません。

ですが、全く分からないだけで「問題がない」ということにはなりません。なぜなら、特に子どもの場合は成長するにつれて差が目立ってきてしまうためです。

多くの人にとって生きやすい社会になるといいですね。


参考

ヨミドクター:まぶしさ(羞明)に苦しむ患者の実態調査が実現…厚労省推進事業
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190726-OYTET50007/

つつみ眼科クリニック:羞明(まぶしさ)
https://www.tutumiganka.com/eye/eye_26.html

 

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