新型コロナウイルスの拡大により自粛規制が1ヶ月延長され5月31日までとなりました。
さて、そんな中、子どもの予防接種をどうするか悩まれている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、そんな「予防接種を遅らせたら?」についてご紹介します。
そもそも予防接種はなぜするの?
予防接種といえば、「定期接種」と「任意接種」がありますが、例えばインフルエンザは任意接種ですよね。
ただし、「定期と任意の予防接種は、単純に予防接種法で接種が定められているかどうか」という違いだけで、任意だからといって必要のない接種ではありません。
→「定期接種」と「任意接種」についてはこちらの記事で紹介しています。
それでは、予防接種を遅らせるとなにが危険なのでしょうか?
なぜ、接種するタイミングは決まっているの?
そもそも、予防接種のタイミングを遅らせてもいいのなら接種するタイミングはいつでもいいことになります。それではどうして、それぞれの予防接種の実施期間が細かく定められているのでしょうか?
今回の記事の確信部分にもなりますが、例えば「新型コロナウイルスに感染したら怖いから遅らせた」としたとします。
この答えは、日本小児科学会の発表にあります。
例えば、「ロタウイルスワクチンの初回接種時期について」このように述べられています。
定期接種となっているロタウイルスは、生後6週から接種可能で特に8週~15週未満が推奨されています。
→他の予防接種も同じように、闇雲に打っているわけではなく、必要に応じて接種のタイミングが定められている。
さて、ロタウイルスの場合は生後15週以降は初回接種後7日以内の腸重積症の発症リスクが増大するため、原則として初回接種は推奨されていません。(ロタウイルワクチンの副反応として腸重積症になることがある)
例外的に、長期入院など何かしらの医学的理由により接種機会がなかった乳児に対しては、十分な検討と保護者の同意の上で考慮される場合もあります。
ただし、遅らせるだけで予防接種によるリスクが高まることに違いはありません。
→腸重積症についてはこちらの記事でも説明しています。
それでは、そもそも予防接種をしなかったらどうなるのでしょうか?
予防接種をしないとどうなるの?
先程は、予防接種のスケジュールを遅らせた場合に副反応(予防接種の副作用)のリスクが高まるという内容でした。
それでは、新型コロナウイルスの感染を防ぐために、小児科へ予防接種に連れて行かないまま放置するとどうなるのでしょうか?
そもそも、予防接種のワクチン対象になっている病気は、命や健康に重大な危険をもたらすもので、根本的な治療がなかったり後遺症を残すものも少なくありません。
つまり、乳幼児検診も同じことが言えますが、新型コロナウイルスを理由に予防接種を避けることは、他の感染症へのリスクがあまりにも大きすぎることになります。
そのため、日本小児科学会でも予定通り実施することが提言されています。
それでは、最後にそもそも新型コロナウイルスの子どもへの影響についてご紹介します。
新型コロナウイルスと子どもへの影響
日本で新型コロナウイルスの感染情報が入ってきたのは、2019年12月末頃からでした。ですが、感染症ですから分かった頃にはすでに拡がっていたことが予想できますよね。
とはいえ、仮に1月から日本で感染が拡がっていたとしても、すでに4ヶ月以上が経過したことで様々なことが分かってきました。
日本小児科学会では、子どもがかかった場合の新型コロナウイルスの影響についてこのようにまとめています。(20204月20日更新)
❶子どもの症状
- 発熱・乾いた咳(鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ない)
- 発熱が続き肺炎になる例も報告されている
- 一部で、嘔吐・腹痛・下痢などの消火器症状を認める
- 「胸部エックス線検査」や「肺のCT検査」を行うと肺炎が認められる場合もあるが、ほとんど1~2週間で回復している
子どもの症状は、このように分かってきていますがそれではそもそも重症化するのでしょうか?
➋ほとんど重症化しない!
- 小児患者が重症化する割合は成人と比べるとかなり低い
- 成人同様に呼吸状態が悪くなることもある
- 年齢の低い乳児は注意が必要
- 小児ぜんそくなどの合併を持っている子どもの呼吸器感染症は重症化する可能性がある(基礎疾患ごとにリスクや対応が異なる)
なにより、ほとんどの場合は軽症で医学的には入院する必要はありません。
❸子どもは誰から感染するの?
「無症状の子どもが不特定多数の人に感染させる!」なんて報道もありましたよね。確かに、そういった面もあるかもしれませんが、それではそもそも子どもは誰から感染しているのでしょうか?
実は、子どもへの感染の多くは同居している成人(保護者)感染者から伝播されています。
つまり、そもそも保育士や子ども同士の感染は少ないため、保育所や幼稚園、学校などへの通園、通学を自主的に控える必要性がないことが指摘されています。(ただし、地方自治体の指示に従う必要がある)
つまり、子どもは基本的には保護者から感染することが当たり前の状態になっています。
以上のことから結論からいえば、少なくとも子どもにとっては、「新型コロナウイルスよりも予防接種をしないことで感染する病気の方がよっぽど危険」だと言うことです。
最後に
そもそも、予防接種は感染症にかかる前に接種しないと意味がありません。
そもそも、感染症は新型コロナウイルスだけはありません。
そもそも、子どもにとって危険な感染症は新型コロナウイルスではありません。
緊急事態宣が延長されたことを理由に、予防接種を遅らせたりそもそも実施しない場合は、その間に「防げる」または「重症化しない」はずだった感染症に感染するリスクが高くなります。
さらに、場合によっては予防接種を遅らせたことで、強い副反応が引き起こされる危険性まで高くなることが示されています。
こういった理由から、必ず小児科医と相談しながら予防接種は進めていって下さいね。
参考
ミューザ川崎クリニック:Q 新型コロナウイルス流行のため、乳幼児健診や予防接種を遅らせたほうが良いですか?
→https://mk-kodomo.com/
日本小児科学会:新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて
→https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=326
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