スポーツ飲料で嘔吐!? 原因の「銅」は、そもそも毒性は低い!

 

夏になると、熱中症予防にスポーツドリンクを飲む機会が増えるのではないでしょうか?

ですが、実はこのスポーツ飲料をめぐって銅による食中毒が発生したことが2020年7月8日の厚生労働症食品安全情報がツイートされました。

今回は、「まさかの食中毒、銅による食中毒と誤解」についてご紹介します。

 

そもそも、なにがあったの?

大分県臼杵市の高齢者施設で、ヤカンに入れたスポーツ飲料を飲んだ13人が食中毒になったことがことの発端だったようです。

どういうことかというと、2020年7月6日に施設の利用者がヤカンに市販の粉末を入れて作ったスポーツドリンクを飲んだ後に、下痢や吐き気などの症状が出てしまいました。

そして、その原因が「銅による食中毒」でした。

正直、銅による食中毒というものを知らなかったので、ひょっとしたら私も知らずに危険なスポーツドリンクを子ども達に飲ませてしまっていたかも知れません・・・

ですが、実は過去にも銅による食中毒は引き起こされていました。

 

「銅による食中毒」って結局なんなの?

例えば、理科の授業で「金属は酸性により溶け出すこと」は、習ったのではないでしょうか?

例えば、アルミニウム・銅・鉄などの金属で作られた容器や調理器具は、私達の身の回りにたくさんありますよね。

ただ、そんな金属でできた容器や調理器具に酸性の食品が接触することで、金属が溶け出してしまうことがあります。

「酸性の食品」といえば、例えばレモンを思い浮かべると思います。それでは、今回の食中毒の原因になるような「酸性飲料」にはどういった物があるかご存じでしょうか?

 

酸性飲料とは?

そもそも、酸性飲料というのはPh7未満の飲料のことをいいます。

Ph(ピーエイチ)は、私の時代だと「ペーハー」と習いましたが、今は「ピーエイチ」とそのまま読むようです。

さて、このPhは水素イオン指数のことで、Phは1~14の範囲までしかありません。

「酸性飲料は、Ph7未満」というのは、以下のように分類されているためです。

  • Ph7未満ー酸性
  • Ph7ー中性(「牛乳」や「純水」など)
  • Ph7より大きいーアルカリ性

それでは、酸性飲料にはどういった物があるのでしょうか?

 

酸性飲料の一例

  • 炭酸飲料
  • 乳酸飲料
  • 果汁飲料
  • スポーツ飲料

などが、酸性度が高くなる飲料の一例です。

つまり、炭酸・乳酸・ビタミンC・クエン酸(柑橘類をはじめとする果物に多く含まれる)といった物を多く含む飲料は、酸性度が高くなるため注意が必要です。

そのため、容器や調理器具の内側がコーティングされている器具を使う必要がます。

 

器具がコーティングされていれば安全?

「コーティングされた器具を使う!」これで銅による食中毒が解決すればいいのですが、実はそう単純な話しでもありません。

そもそも、通常、短時間で溶け出す金属の量はごく微量です。さらにコーティングされていれば確かに危険性はかなり低くなるでしょう。

ところが、容器や器具が傷付いていればどうでしょうか?

また、酸性度の高い飲み物を長時間保管してしまった場合はどうでしょうか?

つまり、容器は定期的に交換する必要がありますし、そもそも「酸性飲料を金属の容器に入れることは危険な場合がある」ということです。

うっかりしていると、こんなことが起こるかもしれません。

 

①内側に傷が付いた水筒が原因で引き起こされた銅による食中毒事件

東京都福祉保健局

平成20年に、「スポーツ飲料を飲んで6名が苦みを感じ、頭痛・めまい・吐き気などの症状を呈した」との連絡が入った事例。

→このスポーツ飲料は、本来なら乳白色のはずが青緑色に変化しており、水筒の内部には小さな褐色の物質がたくさん付着していた。(見た目には、水筒の破損は分からない状態だった)

  • 残っていたスポーツ飲料から高濃度の銅(880µg/g(ppm))が検出。
  • 水筒の内部に付着していた褐色物質の主成分も銅だった。
  • 当日の7時半頃に粉末を水に溶かして水筒に詰め、14時頃までそのまま保管(約6~7時間放置)。
  • 水筒の内部が破損(水筒の壁は二重構造になっており、本来は接触しないはずの二重構造部分の一部に銅が使用されていた)。

つまり・・・

『「破損していた水筒」に「長時間酸性飲料(スポーツ飲料)を入れた」ことで、通常は飲料に接触しない二重構造部分にスポーツ飲料が染み込み、保温構造に使われていた銅が溶出した』

と結論づけられています。

 

ワンポイントアドバイス! ~スポーツ飲料の「Ph」ってなに?~

スポーツ飲料のPh=3.5です。もしも、お酒が好きな人なら「梅酒」や「ワイン」はPh=3未満ですので、さらに酸性が強いことになります。

*ビールは、Ph=4。

容器に詰替えるときは、くれぐれも材質にはご注意下さい。ただし、銅による食中毒は酸性飲料だけではありません。

 

②銅鍋を使った銅による食中毒事件

こちらも東京保健局の報告ですが、平成13年に2件発生しています。

2件とも、「焼きそば」が原因食品となっています。

 

事例1

1つ目の事件の概要は、「10月11日,葛飾区の幼稚園で昼食に仕出し弁当を摂食した園児及び職員117名のうち18名が,摂食約10分後から嘔吐等の症状を呈した」というものでした。

仕出し弁当ですので、煮豆や天ぷらなども入っていましたが、原因はその中の「焼きそば」でした。

実は、焼きそばの調理には銅鍋が使われており、残品の焼きそばからはそれぞれ51,48,10 µg/gが検出されました。

銅の常用量は1回0.2gとされていますが、過去にも銅による食中毒を引き起こして濃度は42~310μg/gであったことから、数十μg/gで発症すると推定されています。

 

事例2

2つ目の事例は、「12月18日に小平市で焼きそばを製造・販売している商店から購入した「やきそば」を友人家族等5人が接触したところ、5人とも直後から吐き気・嘔吐・下痢等の症状を呈した。」というものでした。

やきそばの調理には、同じように銅鍋が用いられており130μg/gと高い濃度の銅が検出されました。

銅鍋で焼きそばソースを熱した場合、560 µg/gと高い濃度で、傷等表面が劣化した鍋による調理、酸性(pH3.6)で塩分濃度の高いソースと、高温での処理等の条件が銅の溶出に影響を及ぼしているものと結論付けられています。

つまり、焼きそばソースが強い酸性だったことが2例とも原因だったようです。

と言うわけで、「銅は猛毒なので大変危険です。」と言いたい所ですが、実はそうでもありません。

 

「銅」はそもそも猛毒なの?

これまで説明してきたように、銅による食中毒は「金属でできた容器や調理器具に酸性の食品が接触することで、金属(銅)が溶け出す」ことで発生します。

症状としては、吐き気・嘔吐・下痢等が数十μg/gの摂取で発症することになります。

ただし、そもそも銅は栄養機能食品として厚生労働省からも1日0.5~5mg摂取することで健康を保つことができるとされています。

さらに言えば、銅は有害ではありません。

ただし、社団法人 銅センターより、銅について動物実験の結果、このようにも説明されています。

  • 大量の銅を投与すると肝硬変に連なる一連の肝障害変化を惹起(じゃっき:問題などを引き起こすこと)させる。

→これは、人間の体重を60kgとした場合、銅として0.6g以上を毎日摂取した場合に相当するようです。

その一方で、そもそも「銅を含まない食品はない」とされています。

さらに、「銅の中毒量はその溶解度に関係があり、金属銅は無害」とはっきり書かれています。

また、銅は水温の上昇によって溶解量も少しずつ増加しますが、多く溶けた場合も0.15mg/l程のわずかな量にしかなりません。

ちなみに、銅が錆びると「緑青(りょくしょう)」と呼ばれる錆びの一種ができますが、これも「無害に等しい」と1984年に厚生労働省は認定を出しています。

こういったことから、銅は有害かどうかと言えば人間にとってなくてはならない物であり、普通の生活で摂取している分には有害ではありません。

そもそも、銅が危険であるなら銅鍋なんて売られているはずがありませんよね・・・

 

もしも、事件になったヤカンに水やお茶が入っていたら・・・

一般社団法人銅センターで、気になるQ&Aが紹介されていました。

銅製やかんの中に何日も放置した水やお茶などをもし飲んでしまったら具合が悪くなるのでしょうか。鍋はメッキ加工されていると思いますが、メッキがはがれてしまった鍋などで調理したものを口にしたら具合が悪くなるのでしょうか。毒なのでしょうか。

この質問に対して、このように回答されています。

銅鍋に限りませんが、調理したものは食器に移して保存した方がよいと考えます。これは、金属成分が酸などで溶出して味に影響するからです。書かれているような中毒症状は考えにくいですが、鍋の場合も銅イオンが溶出しますので味や色(青くなる)が変わる可能性があります。

まさに、今回引き起こされた銅による食中毒が、もしも水やお茶だったら発生していなかったことを意味する回答になると思います。

この根拠として・・・

銅鍋や銅製やかんから溶出する銅イオンは恐らく1ppm以下と考えますが、このお湯等を1リットル飲んだとしても1mgの摂取量にしかなりません。

と説明されています。

つまり、お茶や水などでは影響がほとんどないことが見てとれます。

となると、銅による食中毒は酸性の食品を入れたことが大きな原因になったと考えられます。

なんでも、取りすぎれば毒になります。これは「水」でも「空気」でもほとんどの物に当てはまります。これで、銅による食毒症状を防ぐために、なにに気をつければいいか分かったのではないでしょうか?

 

最後に

「銅による食中毒」と見出しが付くと、まるで「銅が猛毒?」のような印象を受けてしまいます。ちなみに、もしも溶け出していれば、味や色(青色)が変わるため、基本的には「おかしい?」と気付くことができます。

さて、そんな銅ですが、実際は極わずかな銅を水に混ぜるだけで大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌などを7時間以内に殺菌するなど衛生的に優れた金属でもあります。

このように、もともと銅製品は私達の生活に密接に関わっていますが、今回のように間違った使い方をして食中毒症状が引き起こされれば「ごく希に大騒ぎになる」ということになります。

「ごく希に」と言ったのは、私もこれまで何度もスポーツドリンクを水筒に入れて持ち歩いてきましたが、一度も食中毒症状を引き起こしたことがないためです。

もちろん、こういった食中毒は誰からも聞いたことがありませんでした。

ただ、危険であることには変わらないようなので、これから暑くなる夏をのりきるためにも、「銅製品と酸性の物」は、組み合わせないように注意して過ごしていきたいですね。

ちなみに、日本コカコーラ株式会社では、アクエリアスのQ&Aに対してこのように紹介されています。

「アクエリアス」を金属製の水筒に入れてもいいですか?

代表的なメーカーが販売する金属製の水筒の多くは、内部にフッ素加工が施されておりますので問題なくご使用いただけます。ただし、スポーツドリンクなどの酸性飲料には適さない容器もありますので、必ず容器の取り扱い説明書をご確認ください。また、使用後はすぐにお手入れをしてください。
※弊社がCMなどに起用する容器は、スポーツドリンクに対応できることを確認しています。

<注意>
使用前には容器内部に傷やサビなどがないことを確認してください。内部の成分やサビが溶け出し風味が損なわれることがありますので、容器の使用・取り扱いについては、容器メーカー推奨の方法に従ってご利用ください。


参考

日本水処理工業株式会社:pHとは
https://www.mizu-shori.com/

 

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