皆さんは、思い込みの力を信じていますか?
例えば、「プラセボ効果(プラシーボ効果)」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
実際、「プラセボ」と呼ばれる治験で使われる薬まであります。今回は、「マイナスの思い込みの力:ノセボ効果」についてご紹介します。
そもそも「思い込みの力」ってなに?
プラセボ(プラシーボ)効果
大前提として、怪しい宗教的な話しでも、スピリチュアルだけの世界の話しでもなく「事実」として科学的に認められている効果の1つです。
さて、この思い込みの力は医学界でも認められていることは、冒頭でお伝えした「プラセボ」と呼ばれる薬からも分かります。
この、「プラセボ」は治療効果のない薬。つまり偽薬のことです。
日々、治験が行われることで薬の「効果」や「安全性」等が確認されて、やっと認可が下りることで私達の治療に使われることになる薬。
そんな、治験薬の有効性を科学的に明らかにするために使われている薬。それが「プラセボ(プラシーボ)」です。
というのも、例えば医師が仮に砂糖を処方したとしても、患者さんの治療に効果が出ることがあります。
これを、「プラセボ効果」と呼びます。(効かないはずのものが効いて、好ましいプラスの結果が得られた場合)
ですが、プラスの効果がプラセボ効果として現われる以上、残念ながらマイナスの効果も引き起こされます。
ノセボ(ノーシーボ)効果
薬を処方されるときは、必ず薬の効果とその副作用の説明がありますよね。薬局などで薬を買うときも外用箱に必ず使用上の注意が記載されています。
五本木クリニックのHPでは、カフェインの事例が紹介されています。
「この薬の副作用として眠気がでる場合があります」と説明してカフェインを処方します。するとあら不思議、一定数の患者さんは次の診療日に「先生、あの薬を飲んだら眠くなっちゃいました」、こんなことが実際に起こり得るのです。
つまり、「カフェイン」は眠気覚ましとして有名ですよね。コーヒーを飲むと目が覚めるため、朝から愛飲されている方もいらっしゃるのではないしょうか?
ところが、患者さんに「この薬は副作用として眠気が出る場合があります。」と説明して、カフェインを処方したとします。
その結果、「眠たくなった」と報告されることが起こりえるということです。
つまり、薬の効果が発揮されないばかりか、でるはずのない効果が現われてしまっています・・・
このように、「ノセボ効果」というのは予期せぬ副作用だけでなく、理論的に説明の付かないマイナス効果が出ることをいいます。
ただ、この思い込みの力ばかりがまかり通ってしまうと、そもそも私達が服薬している薬は、栄養剤でもなんでもいいことになってしまいます。
そのため、こういった思い込みの力を排除するためにも治験が行われています。
二重盲検試験(ダブル・ブラインド・テスト(double blind test:DBT))
現実問題として、なにを飲んでいるか分かっていると、思い込みの力により心理的な物が影響し正確なデータを摂ることが難しくなることを説明してきました。
そのため、臨床試験では1つの方法として、「治験実験に関わる全ての人がどんな薬を投与するのか一切知らずに行われる」
という試験方法があります。
これが、「二重盲検試験」です。
具体的には、被験者をAとBのグループに分けて、例えばAのグループには被験薬。Bのグループにはプラセボ薬などの対象薬を投与して比較していきます。
さらに、どちらの薬をどちらのグループに投与しているか医師・患者・スタッフが誰も知らない状態で行われるため、思い込みの力(「プラセボ効果」や「ノセボ効果」)は除外されることになります。
ちなみに、他にも例えばこんな試験方法があります。
- 「投与されている薬を被験者のみが知らない単盲検試験(シングル・ブラインド・テスト)」
- 「治験実施側と被験者の両方が投与される薬を知っている非盲検試験」
このように、治験にも当たり前のように「思い込みの力」が考慮されています。
*プラセボを用いた治験に参加している時は、「薬の成分を含んだ治験薬」と「成分を含んでいない薬(プラセボ)」は、外見上見分けが付かなくなっている。
それでは最後に、ノセボ効果の怖い実例について見ていきましょう。
ノセボ効果はどれくらい人体に影響があるの?
ここでいう影響とは、当然「悪い影響」のことです。
例えば、先程カフェインの事例を紹介しましたが、無印良品:暮らしの研究所では他にもこんな事例が紹介されています。
①新薬の治療の際に、「この薬を飲むと、頭痛や腹痛が起きるかも知れない」と説明して偽薬を渡します。すると、偽薬を処方されたグループから頭痛や腹痛の症状を訴える人が出てきます。
ただ、この事例はストレスで腹痛や胃痛を経験している人は、私も含めて起こりうることは想像できるのではないでしょうか。
ところが、命に関わる場合もあります。
②モントリオール大学のマリオ・ボーリガード准教授の著書「脳の神話が崩れるとき」より
- 26歳のA氏は、失恋をして気分が落ち込んだときに広告を見て精神薬の治験に応募
- 1ヶ月の投薬後、症状が改善
- 2ヶ月目に、別れた恋人と口論になり、治験でもらっていたカプセルを大量にのみ自殺を図った
- 病院に担ぎ込まれ、顔面蒼白・呼吸は速い・血圧が下がった状態でマグネシウム点滴を実施
- 4時間にわたり意識がもうろうとしていた
さて、A氏が実施していた治験はプラセボ薬が使われていた治験でした。
これだけを見ると、A氏は「薬の成分を含んだ薬を服薬していたグループだった?」ように考えるのではないでしょうか?
ただ、治験の担当医がA氏が飲んだ薬は「偽薬」だったことを伝えると、たちまち息を吹き返し元気になったそうです。
→医師は必死に、「ただの栄養剤だから!絶対、死なないから!」と説明したのかも知れませんね・・・
ただし、もしも薬の成分を含んだ薬が処方されたグループだったとしても、被験者に致死量になる量の薬を渡すとは考えにくいですが。
最後に
「病は気から」なんて言われます。まさにその通りだとも言えますが、それが全てでもありません。
ただ、ノセボ効果の怖い所は「思い込みだけで命を落とす。」
そんなことが、指摘されている点です。
例えば、「間違って癌と宣告された人が、余命よりも早く亡くなってしまった事例」まであります。
「自己暗示」とも言われますが、どうせ自己暗示にかかるならプラセボ効果の方がいいですよね。あまり、楽観的すぎるのも困りものですが、悲観的すぎるよりはいいのかもしれません。
参考
九州医療センター
→http://www.kyumed.jp/chiken/ordinary3.html
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