子育てをしていると、何度か子どもが喉や気管になにかを詰まらせてしまった経験があるのではないでしょうか?
そもそも、固形物に限らずミルクなどを吐き出してしまうこともありますよね。
今回は、そんな「子どもと事故」について、日本小児科学会で紹介されている傷害速報から事例を紹介します。
傷害速報
「傷害速報」は、傷害の事実のみができる限り正確に記載
されていますが、症例報告ではありません。
例えば、小児科医が「こんな事故が起こるの?」と驚いてしまうような事例は単発であるため、そもそも症例報告がほとんどありません。
つまり、確かに事故は発生していますがその情報がないため、その結果、予防策がないまま同じ傷害が引き起こされることになります。
そこで、重症度が高い傷害を繰り返さないために、発生状況を詳細に記録したものが「傷害速報」です。
それでは、傷害速報の事例を見ていきましょう。
試供品の保管場所には要注意!
子育てをしていると、ミルクなどに試供品が付属している商品を目にすることがあると思います。
また、例えば私の場合なら「赤ちゃん本舗」などでポイントカードを作った時に、試供品をもらったことがあります。
このように、子育てをしていると赤ちゃんのための試供品(ミルク・オムツ・消毒剤など)を手に入れるタイミングが何度もあると思います。
ですが、そんな試供品でこんな事故が起こっています。
❶タブレット型の消毒剤を誤飲
食べ物以外の物を誤って口から摂取することを「誤飲」といいますが、この事故は、姉弟の間で起こった事故でした。
この事例によると消毒剤は、自宅の台所の流しの下に哺乳瓶と一緒に置かれていましたが、お母さんが気付いたときには、お姉ちゃんが哺乳瓶で遊んでいる所でした。
~何があったの?~
姉(2歳)が、弟(9ヶ月)に「哺乳びんや乳首などを消毒するための消毒剤(タブレット型)」を食べさせてしまった事故でした。
そもそも、試供品は簡易包装になっていることが多いと思うのですが、今回の事故では2歳の子どもにも開けることができたようです。
そして、弟の口に入れた結果、呼吸が苦しくなりその後、近くの医院で口腔内洗浄が実施され入院となった実例です。
~この実例が恐い点は?~
事故は12月3日に発生し、状態がよくなり翌年の1月5日に退院したにも関わらず、退院後、2週間以上も経過した1月20日に再度、呼吸が苦しくなり緊急入院している点です。
つまり、一旦症状が落ち着いても油断できないこと。
そして、緊急入院後、退院できたのは5月4でした。つまり、一度入院してから退院するまでに約5ヶ月間も治療が必要でした。
緊急入院になった原因は、「下咽頭、喉頭部の狭窄」が見られ「気管切開術、食道バルン拡張術」
が必要だったためです。
ただし、完治しての退院ではなく気管切開をしたままの状態で、外来でのフォローが継続中という事例でもあります。
この事故は、置き場所が悪かったこともあるかもしれません。ただ、そもそも「子どもの手の届かない所」は非常に難しいです。
ハイハイしかできない子どもなら、つかまり立ちをしても届かない場所に置かなくてはいけません。
また、100均などで売られているチャイルドロックは、数ヶ月後には自分で開けているかもしれません。
つまり、子どもの成長は早いため、いつも1歩・2歩先の「手の届かない所」を想定しなくてはいけません。
イスを運べるようになってくると、「鍵が閉まるところ」や「大人でも高いな・・・」と思うところでもないと難しくなります。
そのため、「子どもの手が届かない所」はどんどんなくなっていくでしょう。
➋ペットによる事故
自宅でペットを飼われている方もいらっしゃるかと思います。これは、そんなペットにより引き起こされた事例です。
2歳のミニチュアダックスフンドが、お母さんの実家で室内犬として飼われていました。さて、この家の居間では、お母さんが4ヶ月の男の子と昼寝をしていました。
当時、実家にはお母さんと祖母だけで、15分程、お母さんは部屋を離れその間、犬と赤ちゃんだけになっていました。
15分後、祖母が赤ちゃんを見に行くと顔面蒼白でオムツには咬まれた跡があり、外陰部から出血していました。
→救急搬送され、右精巣摘出術が施行。「右精巣粉砕」という診断名が記されています。
ただ、「ペットに咬まれる」という事故は他にも発生しています。
例えば、最近では2019年3月に室内犬として飼っていたシェパードに10ヶ月の男の子が咬まれ、「両側陰嚢皮膚欠損、両側精巣欠損、陰茎皮膚欠損、亀頭部分欠損」というひどい事故がありました。
ただ、陰部受傷は犬咬傷の 1.4%という希な事故(ほとんどが飼い犬による事故)
です。とはいえ、その子の人生が大きく変わる事故であるだけに気をつける必要があります。
さらに詳細は不明ですが、「犬がオムツの尿臭をエサと勘違いして陰部に噛付いてしまう」という報告があるようです。
これが本当なら、犬種に関わらず抵抗できない赤ちゃんと犬だけが一緒になる時間は、避けなくてはいけないでしょう。
❸窒息
3歳の男の子がスーパーボール(直径3.5㎝)を喉に詰まらせ亡くなった事例があります。
当時、口の中にスーパーボールを2つ口に入れて遊んでいて、気付いた母親が「ボールを口からだすように!」と叱ってしまいました。
男の子は、驚いて1つを吸い込んでしまい窒息状態となり、母親が取り出そうとしましたが取り出せず、救急車により救急搬送されました。
入院後、意識が回復することなく6ヶ月後に亡くなられています。
~スーパーボールが危険な理由~
そもそも、3歳児の最大開口口径は39mmです。つまり、事例にある35mmなら口い入れてしまうことができてしまいます。
そのため、大きさを直径45mm以上にすることや、スーパーボールに通気孔を開けることで詰まったとしても呼吸が確保できる規制を作れば窒息は免れたでしょう。
ですが、この事例では普通のスーパーボールがを2 つも口腔内に入れてしまっています。
つまり、スーパーボールは縦並びにしか口に入らないため、奥のほうのスーパーボールは喉頭部にはめ込まれやすい状態になっています。
その状態で叱られたため、思わず吸い込んでしまったようです。
恐い点は、スーパーボールのように「外表面がスムースで、ある程度の大きさと弾力を持った物」
を取り出すことは、至難の技だということです。
他にも、傷害速報にはたくさんの実例が掲載されています。子育てをしていると思わぬ事故の連続です。
ですが、知っていれば防げる事故が大半です。
どんな事故が発生しているのか、一度、目を通してみてはいかがでしょうか?
最後に
最後に紹介した「窒息事例」は、2020年9月にも、幼稚園で4歳の男の子が給食に出された「ぶどう」を喉に詰めて亡くなられています。
このぶどうの直径は、およそ3㎝でした。
悔やまれるのは、傷害速報にもぶどうによる窒息事故が挙げられていることです。
2013年に家で巨峰(3㎝大)を食べされていたところ、泡を吹いて意識消失。母親が手でぶどうを取り出そうとしたが出せず救急要請をした事例です。
この事例では、母親が子どもを抱いて外に出たところ、通行人が「ハムリッヒ法」を施行し、ぶどうは排出され一命を取り留めました。
まるで、ドラマのような事例です。
ただ、他の事例では、ぶどうが詰まり窒息死してしまっている事例もありました。
子どもは、なにが原因で命を落としたり、取り返しのつかない怪我をするか分かりません。少なくとも、親自身が基本的な救命方法を知っていれば、助かっていた命はあったかもしれません。
今回は、実際の実例を一部紹介しました。
「自分だったらどうするか?」考えるきっかけにして頂けると幸いです。
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