●この記事では、磁石誤飲の症状や危険性についてお伝えしています。
皆さんは、「子どもの誤飲」ときいてどんな物を思い浮かべますか?
ちなみに、「誤飲」というのは、食べ物ではない物を誤って飲み込んでしまうことです。
特に、子どもや高齢者は注意が必要です。
ちなみに、私の場合は「誤飲・・・」と言えば、息子(当時2歳)が噛みちぎった「単四電池の黒い液体」が一番に思い浮かんできます・・・
さて、今回はそんな誤飲のなかでも度々問題になる「磁石の誤飲」についてご紹介します。
→当時の状況は、こちらの記事で紹介しています。
磁石の誤飲はそんなに多いの?
そもそもの話しになりますが、私達の周りには想像以上に磁石がたくさんあります。
- おもちゃ(立体パズルのマグネットボールなど)
- 文具
- 磁気ばんそうこう(ピップエレキバンなど)
「おもちゃ」から「医療器具」まで、さまざまな所に磁石は使われています。
それこそ、100均でも強力な小さいマグネットは売られていますし、例えばそれを冷蔵庫などに貼り付けているご家庭もあるのではないしょうか?
また、そもそも誤飲で危険な物はたくさんあります。
そもそも「誤飲」で危険な物と言えば?
例えば、「代表的な危険な誤飲」の1つに、以前紹介した「ボタン電池」があります。
もちろん、ボタン電池を誤飲したとしても自然に排出(ほとんどが無症状)ならいいですが・・・
もしも、電池が消化管内で一箇所にとどまるようなことがあれば、組織障害(傷付く・穴が開くなど)が引き起こされることになります。
しかも、この場合、早急に病院へ行く必要があります。
電池の内容物が漏れ出すまでの目安
- 水銀電池:4時間
- アルカリマンガン電池・酸化銀電池:8時間
- リチウム電池:大きい・電圧が強いため2~3時間でも危険
このように、誤飲した電池の種類によって残された猶予が大きく変わり、特にリチウム電池に関して言えば一刻を争います。
他にも、例えば釘など先の尖った物は排出されるまでに消化管などに刺さる危険性が高いため、こういった物を誤飲したときはすぐに医療機関を受診する必要があります。
→「電池の誤飲」については、こちらの記事で紹介しています。
それでは、「磁石の誤飲」はどうして危険なのでしょうか?
磁石の誤飲はすでに発生している?
実は、国民生活センターなどですでに「マグネットボールを誤飲した幼児の事故事例」が紹介されています。
これは、幼児が複数のマグネットボールを誤飲したことで開腹手術がおこなわれるほどの事故でした。
「磁石」と一言でいっても、磁力の強さはさまざまですよね。
今回、事故報告があったマグネットボールは、そもそも手指を間に挟んだとしても、しっかりとくっつく強力な物でした。
問題は、この強い磁力があるマグネットボールを複数個誤飲してしまったことです。
結論から言えば、複数個を誤飲した結果 → 消化管が穿孔(穴が開く状態)になってしまいました。
それでは、どうしてマグネットボールは自然に排出されなかったのでしょうか?
自然に排出されなかった原因は?
「磁石を複数個誤飲した」とお伝えした時点で、ある程度予測できるのではないでしょうか?
そもそも、マグネットボールは手指を挟んでも、しっかり磁力でくっついてしまうような代物です。
つまり、今回の事例では誤飲した先の消化管内の腸壁を挟んでしまいその状態が維持されていました・・・
こうなってしまうと、基本的に自然に排出されることはないため、物理的に取り除くしかなく開腹手術がおこなわれました。
→ただ、磁石どうしでなくても例えば「金属」と「磁石」を誤飲した場合もくっついてしまう危険があるため、どちらにしても小さい子どもが誤飲してしまう大きさの物は片付ける必要がある。
それでは、具体的な事例を国民生活センターの事故報告からいくつか見ていきましょう。
磁石誤飲で引き起こされた事故事例
《事例1:男児3歳》
クリスマスプレゼントとしてインターネットで2種類の磁石商品を購入。
マグネットボールを5個誤飲したところを保護者が気づいて受診。レントゲンで消化管内に5個連なっていることを確認し経過観察とした。
翌日も磁石は移動しておらず、紹介先の病院で内視鏡検査を実施したが、胃内になく経過観察とした。その翌日もやはり移動がなく手術を実施した。
磁石は2個が胃壁から、3個が空腸から壁を穿通(せんつう)していた。摘出し空腸穿孔部を縫合した。
この事例では、マグネットボールを5個も誤飲しています。なにより、「クリスマスのプレゼント」として購入されていますよね。
子どもに、「お誕生日」や「クリスマス」などプレゼントを贈る機会がありますが、磁石に限らず誤飲の可能性があるおもちゃなどは避けた方がいいでしょう。
そして、この事例では誤飲したマグネットボール全てが消化管内で留まり、穿通を引き起こしてしまっています。
「穿通」というのは、大腸などの消化管で穴があいたところが、隣接する組織や臓器によってふさがれた状態のことをいいます。
この状況を一言でいえば、「マグネットボールにより、手指を挟むように胃と腸が磁力でくっついた」ということになります。
ただ、さらに恐ろしい事例があります。
この事例では、誤飲した磁石は5個でしたが、さらに多くの磁石を誤飲した事故が発生しています。
《事例2:女児1歳9ヶ月》
友人の幼児が遊んでいたのを見て患児が欲しがったため4カ月前に買い与えた。
その後、患児が磁石を口の中に含んでいることがあったため、保護者は手の届かないところに保管していた。嘔吐(おうと)を繰り返したのでかかりつけ医を受診すると胃腸炎の疑いで薬を処方された。
しかし、その翌日も嘔吐が続いたため、紹介状を書いてもらい他院を受診し、レントゲン検査で腸内に異物が見つかった。
その後当院で開腹手術を行ったところ、小腸内の3カ所にあった磁石が磁力で引き合い、小腸を結着し、圧迫壊死(えし)を起こして穿通しており、直径3mmの磁石計37個を摘出した。
この事例では、磁石がなんと37個も腸内から発見されましたが、最初は嘔吐を繰り返して胃腸炎の疑いで処方までされています。
つまり、最初の受診ではレントゲン検査がおこなわれていないため、そのまま家に帰されています。
そして、翌日も嘔吐が続き圧迫壊死が確認されています。
このように、レントゲンなどで確認しないと他の病気と誤診される可能性があります。
→磁石の誤飲は放置すると壊死につながる可能性があり、喉に詰まれば窒息し命に関わる。そのため、そもそも誤飲はどんな物であっても危険がともなうため注意が必要。
最後に
磁石の複数誤飲により「継続した嘔吐」・「穿痛」・「圧迫壊死」が引き起こされることが、今回紹介した事例から説明されています。
他にも、1歳児が「磁気ばんそうこう」の磁石部分を剥がして6個誤飲。X線検査により、上部小腸から6個連なった状態で発見された事例もあります。
子どもは、どこからなにを持ち出すか予想できません。
また、どんなに片付けても、いつの間にかできるようになった身体能力を駆使して、昨日できなことも今日はできてしまいます。
→子どもの身体能力の高さは、「ハイハイ」から「つかまり立ち」の過程が、一番イメージしやすいかもしれません。
子どもの誤飲の危険は、身の回りに溢れています。
嘔吐を繰り返したり、いつもと様子が違えばなにかを誤飲しているかもしれません。
特に、部品が足りないなど、あった物が減っていることに気付いた時は誤飲を疑う必要があるでしょう。
ちなみに、冷蔵庫などにくっつけている「プラスチックが被さっているマグネット」がありますよね。
過去に、2歳の男の子が、それを飴のように舐めてプラスチックが外れて磁石だけになっていたヒヤリハットも報告されています。
このように、飲み込めないと思っていても、遊んでいる内に分解されて危険な大きさになることもあります。
参考
消費者庁:Vol.383 磁石の誤飲に注意!
→https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20180111/
東京暮らしWEB:小さな子供が磁石を誤飲する事故が発生しています!~磁石の安全な使用に関する調査を実施しました~
→https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/magnet_press.html
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