Go Toトラベルで、残念ながら悪用されるケースがニュースになっています。
その悪用ケースの一つに、「無断キャンセル」があります。
私としても、せっかくコロナ禍であっても旅行ができる雰囲気になってきたので「今度は自分たちも・・・」と思っているのですが、今後も継続されるのか不安があります。
ところで、そもそも無断キャンセルは、過去すでに逮捕者も出ていますよね。
今回は、「無断キャンセルと悪用されたGo Toトラベル」についてご紹介します。
そもそも、「無断キャンセル」は犯罪行為?
単純に考えて欲しいのですが、例えばあなたが「旅行」や「食事」などのために予約をしたとします。
予約された店側としては、お客さんをもてなす準備をしなくてはいけませんよね。例えば、部屋の確保や料理の準備、当日の人員配置など全てが変わってきます。
また、忘年会などで食事予約をすれば、「コース料理の準備」や「席の確保」などは必須になります。
つまり、予約人数が多ければ多いほど、宿泊期間が長ければ長いほど、それだけ準備に手間と費用がかかってきます。
仮に、食事予約で席の確保のみだったとしても、その日のその時間は、その席を他のお客さんが使えない状態になります。
つまり、無断キャンセルが続けばお店の存続にまで関わります。
そのため、例えば「席の予約だけだし無断キャンセルしても問題ない?」と考えるのは、勘違いもいいところです。
→「No show(無断キャンセル)」については、こちらの記事で紹介しています。
それでは、この「無断キャンセル」は犯罪行為にならないのでしょうか?
無断キャンセルの状況は?
2018年4月に、「飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査」が実施されています。
対象は20代~50代の906名が対象でした。
無断キャンセルされやすい予約手段
- 電話予約・・・59.4%
- グルメサイトのネット予約・・・55.5%
意外にも、電話での予約がまだ少し多いことが分かりました。
さて、問題は無断キャンセルになった理由ですよね。
無断キャンセルをした理由
- 複数飲食店をとりあえず予約した・・・39.8%
- 予約したことを忘れていた・・・35.2%
- 人気店でとりあえず予約を確保したかった。・・・34.4%
さて、「予約したことを忘れた」という理由は、あってはいけませんが「うっかり」はどうしても引き起こされてしまいます。
ですが、「複数店を予約していた」という場合は、他にも被害にあった飲食店があり、最初から全てのお店を利用することは難しいため悪質だと言えるでしょう。
また、予約が取りにくいことが分かっていたにも関わらず、「とりあえず予約」で無断キャンセルをしているのですから、こちらも悪質だと言えるでしょう。
それでは、こういった無断キャンセルは法律的に罰せられることはないのでしょうか?
損害賠償だけでなく逮捕もありえる!?
そもそも、先程もお伝えしたように無断キャンセルをすれば、確実にお店には損害が発生してしまいます。
仮に、席の予約だけだったとしても、本来そこで食事をされたであろうお客さんが食事ができず、勤務のシフトにも影響があったかもしれません。
人気店となれば、その損害はさらに大きくなるでしょう。当然、ホテルなどになればさらに影響が大きくなることは言うまでもありません。
つまり、大前提として「無断キャンセル=店への損害」は発生しています。
それでは、まず「民法」から見ていきましょう。
民法と刑法
民法による損害賠償
民法では、損害賠償が請求されることになります。
→債務不履行に基づくもの(民法 第415条)
そもそも、予約は「その日・その時間・予約人数で行きます」という契約として扱われます。
さて、債務不履行は契約の当事者が契約内容に従った義務を履行しない場合に生じます。
つまり、予約したにも関わらず無断キャンセルをする行為は、一方的な契約違反とみなされる可能性が高くなります。
「債務」とは、特定の行為(今回の場合は「予約」)を守る義務があるが、それを不履行(実行しなかった)。
つまり、「債務不履行」ということです。
ちなみに、「不法行為」は民法(709条)でこのように示されています。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
少し分かりにくいですが、契約を破った場合は、「債務不履行」。交通事故などのように契約とは関係ない事柄で、相手に損害を与えた場合は「不法行為」となります。
つまり、無断キャンセルは、「予約」という契約の一方的な破棄になるため、不法行為ではなく「債務不履行」が民事で争われることになります。
→過去に14万円の支払いが言渡されたケースがある。
*ちなみに、旅館予約の無断キャンセルでは280万円の賠償が命じられた事例もある。
このように、被害の大きさによって賠償額も大きく変わってきます。ただ、問題は刑事事件として前科が付く可能性があることです。
刑事事件にまで発展する可能性がある?
民事訴訟は、あくまでも私人間の紛争が解決されるための手段ですので、示談などもできます。
ところが、刑事訴訟は被告人が「犯罪行為を行なったかどうか」、「刑罰を科すべきかどうか」を判断するための手続きです。
例えば、息子が包丁で親を切りつけて深い傷を負わせたとします。
親が訴えなければ民事訴訟は免れますが、ケガをさせたわけですから、息子は「傷害罪」や「殺人未遂」など刑罰を科すがどうかが問われることになるでしょう。
つまり、刑事訴訟はあくまでも犯罪行為をしたかどうかが争点になり、当てはまれば逮捕されることになります。
そして、そんな刑事訴訟は無断キャンセルの場合は、「故意」かどうかが争点になります。
実は、店舗を利用する気もないのに予約をキャンセルする行為は「偽計業務妨害」になります。
→3年以下の懲役または50万円以下の罰金
例えば、けが人がいないにも関わらず、119番通報で「⚪⚪に人が倒れている!」といった虚偽の通報も、この偽計業務妨害に当たります。
つまり、他人の不知や錯誤を利用する意図を持って錯誤を生じさせる手段(偽計)を使って、人の業務を妨害する行為のことです。
逆に言えば、「急な予定でキャンセルの連絡ができなかった」・「キャンセルの連絡が申し訳なくて連絡できなかった」といった理由があれば、債務不履行は当たりますが、故意ではないため逮捕される可能性は低くなるようです。
とはいえ、民事訴訟に発展する可能性があることはいうまでもありません。
このように、無断キャンセルはお店やホテルなどとの契約行為を破る行為であるため、民事訴訟に発展する可能性があり、故意であれば刑事訴訟にまで発展する可能性まであります。
それでは、「Go Toキャンペーンを悪用した無断キャンセル」とは一体どういうことなのでしょうか?
Go Toキャンペーンが悪用?
Go Toキャンペーンでは、「地域共通クーポン」が発行されます。
- 旅行代金の15%相当額を地域共通クーポンとして、旅行者に配布します。
(1,000円未満の端数が生じる場合には四捨五入(端数が500円以上の場合は1,000円のクーポンを付与)します。)- 旅行先の都道府県+隣接都道府県において、旅行期間中に限り使用可能です。
- 紙クーポン、電子クーポンの2種類があり、お釣りは出ません。
- 旅行業者・宿泊事業者より配布します。
つまり、旅行先での「買い物・食事・アクティビティ・移動など幅広く使えるクーポン」で、旅行中に限って旅行先とその隣接都道府県限定で使える、まさに旅行者のためのお得なクーポンです。
確かにこの仕組み自体は、コロナ禍で萎縮してしまった人達が、外出したくなるような事業だと思います。
ただ、これを悪用した事例が報道されています。
問題は、旅行代金の15%相当額の共通クーポンが無断キャンセルをした人にまで発行された点です。
なぜ、無断キャンセルで「地域共通クーポン」が配布された?
そもそも、地域共通クーポンはホテルにチェックインしたときにもらえる「紙のクーポン」。
そして、チェックイン当日の15時以降(日帰りの場合は12時以降)に、予約番号を入力すると発行される「電子クーポン」の2つの仕組みがあります。
もう分かりますよね・・・
つまり、無断キャンセルしたとしても「電子クーポン」を申請すれば、旅行代金の15%相当の共通クーポンを受け取れることになります。
当然、Go Toキャンペーンは税金で運用されているため、これは不正受給に当たるかもしれません。また、ホテルにも多大な損害を与える結果になっています。
→8名で5連泊:総額63万円の予約だったため、その15%ですので94,500円を不正受給。
*「国」と「ホテル」を騙したと判断される可能性がある。
被害届が出されるようですので、今後逮捕の一報があるかもしれません。
最後に
そもそもの話しですが、無断キャンセルは以前から日本だけでなく世界中で問題になっていました。
そして、先程お伝えしたように「偽計業務妨害」により、すでに以前から逮捕者も出ています。
なにより、コロナ禍で始まったGo Toキャンペーンでもあり、多くの人達が注目しているため「このまま放置?」ということはありえないでしょう・・・
くれぐれも、真似しないようにご注意下さい。
持続加給金の不正受給者と、同じような末路をたどることになるかもしれません。
参考
ベリーベスト法律事務所:無断キャンセルでキャンセル料を請求された! 支払い義務はある?
→https://niigata.vbest.jp/columns/general_civil/g_damages/3761/
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