●この記事では、「乳児と大人の知恵熱」について説明しています。
皆さんは、「知恵熱」ときいてどういったイメージがありますか?
小さい子どもが風邪でもないのに熱を出すこと?
仕事で色々と考え込んでしまって頭が熱を帯びてくること?
テレビのクイズ番組でも「考えすぎて知恵熱が・・・」なんて、使われることもありますよね。
今回は、「知恵熱ってなに?」について紹介します。
そもそも知恵熱は赤ちゃんの発熱!
最初に結論から言えば、知恵熱は大人には起こりません。
そもそも、医学用語ですらありません。
そんな「知恵熱」は、もともとは生後6ヶ月前後の乳児に見られる原因不明の発熱のことです。
どういうことかといえば、そもそも生後6ヶ月前後の乳児は知的な発達がめざましい時期であることは多くの人がすでにご存じだと思います。
さらに言えば、この時期は乳児が発熱しやすくなる時期でもありました。
こういった原因を、「知能発達に伴う発熱」として、昔から知恵熱として称されてきました。
*知恵熱は、昔の名残で乳児(6ヶ月前後)の原因不明の発熱という意味で使われていた。
ただ、これは昔の話しで今は診断がつくことがほとんどではないでしょうか?
そもそも、乳児は母乳による母子免疫の低下で感染症を引き起こしやすい時期でもあります。
実際、発熱も「咽頭炎」や「感冒(風邪)」によることが多いことが分かっているため、昔のように「知恵熱」ではなくなりました。
「乳児の初めての熱」に関する論文も発表されている!?
外科小児科雑誌2008年より
- 上気道炎:52%
- 突発性発疹:25%
その他は、胃腸炎・ウイルス感染症・気管支炎・中耳炎・インフルエンザetc・・・
なにより、乳児の発熱原因は細菌やウイルスの感染症が圧倒的に多いことが知られています。
つまり、乳児の発熱は原因が診断されることになるため、そもそも「知恵熱」と呼ばれることが少なくなった。
乳児の知恵熱についてはこれで少し理解できたのではないでしょうか?
それでは、私達大人の「知恵熱のような症状」はなんなのでしょうか?
大人の知恵熱?
冒頭で説明したように、「知恵熱」は「乳児(生後6ヶ月前後)が引き起こす原因不明の発熱」のことです。
とはいえ、大人でも考えすぎたりすると「知恵熱?」のような熱が出たことがあるのではないでしょうか?
例えば、仕事や人間関係など、悩んだりしたときに誰もが経験したことがありませんか?
それでは、この「大人の知恵熱のようなもの?」は一体なんなのでしょうか?
nastya_gepp / Pixabay
大人の知恵熱は心因性(ストレス)の可能性・・・
例えば、風邪のように何日か症状が継続するものではなく、一晩寝たら治るような比較的短時間で回復するパターンの発熱がありますよね。
かくいう私も、仕事が休みになると同時に発熱で寝込むことがありました。
不思議なことに、仕事当日には回復し働いていました。
もしも、この発熱を治療しようと受診しても、かぜ薬を服用しても回復しない場合、原因と考えられているのが「心因性発熱(ストレス性発熱)」です。
ストレスといえば、一般的に頭痛や疲労感、食欲不振など身体にさまざまな不調を引き起こすことが知られていますよね。
実体験としても、体験している人も多いのではないでしょうか?
実は、このストレスでも発熱症状が引き起こされることが分かっています。
心因性発熱はウイルス性の発熱とは違う!?
当たり前と言えば当たり前ですが、そもそもウイルス性の発熱は炎症反応が引き起こされるため、検査をすれば異常が発見されます。
当然、解熱剤を処方すれば効果も見られます。
また、周囲からも「しんどそう・・・」とある程度分かるのではないでしょうか?
ところが、心因性のストレスではあくまでもストレス反応として、「発熱症状」が出現しているだけです。
そのため、検査をしても異常が見つからず、当然、解熱剤の効果もありません。その結果、周囲からも「本当に熱があるの?」と分かりにくくなります。
それでは、結局、心因性発熱はどうして引き起こされるのでしょうか?
心因性発熱は特別なことではない!?
聞き馴染みがないかもしれませんが、人間には「褐色脂肪細胞」と呼ばれる細胞があります。
この脂肪細胞は、体内に蓄積された余分なカロリーを熱に替え放出させる働きがあります。
さて、この熱を発生させる褐色脂肪細胞は、例えば寒い時に活性化し体温を一定に保とうとします。これは、「寒冷という環境ストレスに反応している」ということができます。
さらに、心理的ストレスによっても交感神経が亢進してしまい熱生産が上昇することが分かっています。
→ストレスが心因性発熱に大きく関わっていると考えられているが、詳しくは解明されていない。
「急性心因性発熱」と「慢性心因性発熱」
急性心因性発熱
例えば、「ストレスでカッとなる!」なんて言われますが、実際に体内で体温上昇が引き起こされています。
これが一過性ですめば「急性心因性発熱」と呼ばれます。
あくまでも一時的な発熱ですので、基本的には24時間以内に平熱に戻ります。(若者は体内で熱が作り出しやすいため、高熱になりやすい)
さて、問題となるのは「慢性心因性発熱」です。
慢性心因性発熱
慢性心因性発熱は、慢性的なストレスが続く中で、例えば数ヶ月以上も微熱が持続してしまいます。
さらに、そのストレスから解放された後も、平熱に戻りにくい特徴があります。
当然、発熱する期間が長いわけですからその分、エネルギーも多く消費されることになり、疲れやだるさが感じやすくなります。
ところが、感染症ではないため検査をしても服薬しても改善がみられず、感染症の時のような一見しただけでは「またサボってる・・・」と思われる可能性まであります。
当然、そのこともストレスになるため悪循環がうまれてしまいます。
しかも、原因がストレスのため改善するためには「よく休む・よく眠る・ストレスを遠ざける」ことが必要になります。
忙しい現代人ができることは、例えば眠る前にスマホを見ないといった、刺激を少なくして次の日に備えることが中心になるかもしれません。
とはいえ、そもそも発熱が長引く場合は、白血病など別の病気が隠されていることもあるため、まずは病院での受診が必要になります。
慢性心因性発熱は、生活習慣の改善が求められることは、言うまでもありません。
最後に
知恵熱は、乳児に引き起こされる原因不明の発熱のことです。
ですが、ストレスによる発熱症状が分かった現在、原因不明の発熱はそれほど多くないでしょう。
また、大人や中学生、高校性といった子ども達の知恵熱のような発熱は、仕事や家族関係、友人関係など周囲で引き起こされているストレスが原因かもしれません。
発熱は、身体や心の危険サインの可能性が高いです。
「知恵熱?」で自己判断しないようにご注意下さい。
参考
オフラボ:心因性発熱(ストレス性発熱)
→https://mediplus-lab.jp/contents/detail/3133/
コメントを残す