新型コロナウイルスで「歴史的緊急事態」に指定!? でも実は・・・

 

2020年3月6日の閣議後の記者会見で、『日本政府は、新型コロナウイルスの影響により「歴史的緊急事態」に指定しました!ただ、指定時期の明言は避けられました。』

なんて報道がありました。

一瞬、「日本で非常事態宣言が出されたのか!?」と驚きましたが、そういうことではありません。

結論からいえば、議事録の作成が義務づけられるかもというお話です。

今回は、『マスコミ報道に振り回されないための「歴史的緊急事態に指定」』についてご紹介します。

 

「歴史的緊急事態に指定」って大変なことなの?

そもそもどうして指定されることになったの?

この指定ができた理由は、2012年の東日本大震災が発生したときに対処するための会議等の議事録が問題になったことで、すでにあった「行政文書の管理に関するガイドライン」が2012年6月29日一部改正されたときに盛り込まれました。

その問題というのが、震災に対応するために設置された会議等の議事内容の記録が未作成だったためです。

もちろん、震災という混乱の中にあったため、議事録を100%残すことは難しかったかもしれませんが問題が指摘された時、議事録作成の結果はこのようになっていました。

会議 議事録の作成・保存 議事概要の作成・保存
原子力災害対策本部 × ×
政府・東京電力統合対策室 ×
原発事故経済被害対応チーム ×
原子力被災者生活支援チーム
緊急災害対策本部 × ×
被災者生活支援チーム × ×
復興対策本部 ×
復興構想会議
官邸緊急参集チーム ×
各府省連絡会議 ×
経済情勢に関する検討会合 ×
電力需給に関する検討会合 ×
電力改革及び東電に関する官僚会合 ×
除染及び特定破棄物処理に関する関係閣僚会合
エネルギー・環境会議

つまり、15会議中10会議は議事録がない状態でした。さらに、議事録とその概要の両方ともない会議が3議会もありました。

ちなみに、表中の「△」は概要が一部しか作成されていない状態でした。

こういった実情を踏まえて、「政府のずさんな文書管理が浮き彫りになり、未曾有の災害を踏まえた対策づくりで参考になるはずの議事録の欠如は、今後の災害対策にも影響する!」ということで、公文書ガイドラインに「歴史的緊急事態」が盛り込まれることになりました。

ただし、当時の岡田克也副総理は「2月中を目途に事後的に記録を作るように閣僚懇談会で閣僚に要請していた」ようです。

ですが、この「公文書作成がずさんだった!」と言われるようになったのは2012年1月頃からでした。

国会内部の事情(ゴタゴタ)は分かりませんが、こういった経緯で「公文書作成をしっかり残していこう!」ということで、公文書ガイドラインに「歴史的緊急事態に指定した場合」が盛り込まれることになりました。

*「歴史的緊急事態に指定」というのは、つまり公文書の記録についての取り決めのことです。

 

「歴史的緊急事態」に指定されたら結局どうなるの?

大震災のような国民の生命・身体・財産に大規模かつ重大な被害が生じる緊急事態(「歴史的緊急事態」と定義)に対して、政府全体として対応する会議等について、「現在と将来の国民に説明する責務」という観点から、その記録の作成・保存の徹底が図られることになりました。

とはいえ、緊急事態が発生したときに、会議録を作成し保存することは、当然といえば当然ですよね・・・

逆にいえば、「緊急事態ではない会議録はどうなっているの?」って不安になってしまいます。

緊急事態ではないときの厚生文書については、こちらの行政文書の管理に関するガイドラインを確認してみて下さい。

それでは、引き続き「歴史的緊急事態に指定された場合」についての行政文書の取扱いについて見ていきましょう!

 

記録はどうなるの?

政策の決定や了解をおこなう会議等

今回の場合でいえば、新型コロナウイルスは国民の生命・身体・財産に大規模かつ重大な被害が生じ、または生じるおそれがある緊急事態(歴史的緊急事態)とされることになったことを意味しています。

そのため、作成すべき記録が決められることになります。

 

《作成すべき記録》

  1. 開催日時
  2. 開催場所
  3. 出席者
  4. 議題
  5. 発言者及び発言内容を記録した議事録または議事概要
  6. 決定または了解を記録した文書
  7. 配付資料

など。

 

政府の決定または了解を行わない会議等

緊急事態に関する会議の中には、各行政機関の対応を円滑に行うため政府全体として「情報交換」を行う会議等、必ずしも政策の決定や了解を得る会議ばかりではありませんよね。

ですが、このように政府の決定または了解を行わない会議等についても、作成すべき記録が義務づけられることになりました。

 

《作成すべき記録》

  1. 活動時間
  2. 活動場所
  3. チームの構成員
  4. その時々の活動の進歩状況や確認事項(共有された確認事項・確認事項に対して構成員等が具体的にとった対応など)を記載した文書
  5. 配付資料

など。


このように、記録を残しておくことで、「なぜその決定に至ったか?」という時系列や、「誰がどの会議に出席したか?」など、知りたいことを事細かに追えることができるようになります。

ただし、会議録を書いたことがある人は分かると思いますが、かなりの手間がかかります。さらに、公文書となるため過不足なく正確に書く必要があることは言うまでもありません。

なにより、膨大な資料となるため、緊急事態にここまでのことを強制させること事態にリスクはあります。

例えば、歴史的緊急事態が発生した場合は普段から行われる「点検」や「監査」に加えて、当該事態に対応する会議等の記録の作成の責任を負う行政機関は・・・

  1. 事後作成のための資料の保存状況や文書の作成・保存状況を適宜点検する。(マニュアル等に沿った対応がなされているか)
  2. マニュアル等で想定されていない事態が発生した場合は、関係する行政機関において記録の作成の責任体制を明確にした上で、当該事態に応じた必要な文書が適切に作成・保存されているか確認する。

つまり、記録のチェックにかなりの時間を要することになることが予想されます。

ということで、歴史的緊急事態に指定されたことで直接関わってくるのは、「議事録を作成して公表していかなければいけない政府の関係者」ということになります。

そして、次に「その情報を受け取る私達や各種関係機関」ということになります。

 

最後に

「歴史的緊急事態の指定」というのは、今回の場合でいうなら新型コロナウイルスに関するさまざまな会議の議事録を確実に残しておくための指定のことです。

そして、新型コロナウイルスが初めての指定となりました。

「歴史的緊急事態」なんて言われたら、なにが起こるのか不安になりますよね。例えば、配給制になるとか、どこかが隔離されるとかそういったことを想像する人もいるかもしれません。

ただし、そういったことが起こりうるのは、「非常事態宣言」の場合です。日本では、人権問題が先に考えられるため、アメリカのように非常事態宣言が発令される確率はかなり低いと思いますが・・・


さて、非常事態が発生したときに議事録を残しておくことは、確かに現在・未来にわたって重要なことだと言えます。

ただ、議事録の作成ばかりに負われて、どんどん進めていかなくてはいけない肝心の政策がおろそかになっては意味がありません。

例えば、会議の様子を録画しておけば、誰もが議事録を作成できますし、そもそも音声アプリなどを使えば自動的に文字に起こしてくれるツールなどもあります。

そういったツールを利用しながら、少しでも議事録作成に係る時間を短縮できればいいですね。

高齢化している国会議員が、テレワークなどをはじめ情報技術をどれだけ使いこなせているのかは不明です。ただ、そもそもそれができていなければ政府が掲げる「働き方改革」を進めていくことはできません・・・

今後も、新型コロナウイルスによる混乱は続きそうですが、新型コロナウイルス直接の影響というよりは、イベントの中止など、それ以外で波及している弊害が広がり続けています。


参考

議事録未作成問題の経緯と現状 ― 東日本大震災・原発事故対応会議から閣議へと展開 ―
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2012pdf/20121005160.pdf

行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正について
https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120704/20120704haifu1.pdf

日本経済新聞:震災10会議で議事録なし ずさんな文書管理
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2700A_X20C12A1MM0000/

 

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