ペットと生活を共にしている人は、たくさんいらっしゃるかと思います。
仮に、自宅では飼っていないにしても、実家がイヌや猫などを飼っている場合もあるでしょう。
そこで気になるのが、「新型コロナウイルスはペットから人に感染してしまうのか?」という素朴な疑問ではないでしょうか。
そもそも、新型コロナウイルスはすでに「動物から人に感染している」と言われていますよね。ですが、ペットして飼育している犬や猫といったペットから感染してしまうことはあるのでしょうか?
今回は、そんな「動物由来感染症」についてご紹介します。
「動物由来感染症」ってなに?
そもそも、人と動物に共通する感染症のことを英語で「ズーノーシス」と呼びます。なぜか、日本ではカタカナ表記が多いので今後、この「ズーノーシス」という名前でニュースで取り上げられるかもしれません。
ただし、日本ではズーノーシスのことを「人獣共通感染症」「人と動物の共通感染症」と呼んでいます。そして、動物から人に感染する病気を総称して動物由来感染症(ズーノーシス)といいます。
さて、そんな動物由来感染症ですが、実は世界で次々と見つかっています。
例えば、SARSやエボラ出血熱、マールブルグ病、MERSなども動物由来感染症です。このように、これまで聞いたことがあるような感染症も動物由来感染症だったりします。
問題は、そういった感染症の中でも・・・
- 感染力が強い
- 重症化する傾向がある
- 特異的な治療がないもの
- ワクチンがない
こういった感染症が発生した場合です。まさに、新型コロナウイルスもこれに当たります。
そんな動物由来感染症は、世界保健機関(WHO)によれば「200種類以上ある」と言われており、炭疽菌やペスト菌など、生物テロ兵器として悪用されることさえあります。
ただし、そんな動物由来感染症も日本の場合は寄生虫も含めて数十種類程度だと考えられています。つまり、世界に比べて日本は動物性由来感染症は比較的少ないことがいえます。
とはいえ、今回のようにパンデミックが引き起こされるような事態が起きれば、世界中が同じように感染してしまうため「対岸の火事」というわけにはいかなくなります。
それでは、新型コロナウイルスは動物から人に感染してしまうのでしょうか?
世界小動物獣医師協会(WSAVA)の声明
2020年3月7日:新型コロナウイルスと伴侶動物:WSAVA メンバーへのアドバイス
この声明の中でも述べられていますが、そもそもコロナウイルスは「コロナウイルス科」に属しています。そして、このコロナウルスには以下のような種類があります。
- 「アルファコロナウイルス」や「ベータコロナウイルス」→通常、哺乳類に感染する。
- 「ガンマコロナウイルス」や「デルタコロナウイルス」→通常、魚類や鳥類に感染する。
このように、そもそもコロナウイルスには様々な種類がありますが、これまで人に感染するコロナウイルスは6種類が知られていました。
つまり、今回の新型コロナウイルスは、初めて人に発見された7種類目の新しいコロナウイルスであるため、「新型」という名前が付けられているだけです。
それでは、今回の新型コロナウイルスは人から動物に感染してしまうのでしょうか?
人から動物に感染する?
先程も紹介したように、コロナウイルスは種類によって哺乳類や鳥類などでは、感染する種類が違います。
例えば、犬が軽度の下痢を引き起こす「犬コロナウイルス」や猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因となる「猫コロナウイルス」は、いずれもアルファコロナウイルス属に当たります。
ですが、今回の新型コロナウイルスに「これらのコロナウイルスは関係ない」ことが分かっています。
❶WASVAの結論(3/7時点)
現時点では伴侶動物が SARS-Cov-2 ウイルスに感染しうるというエビデンスは限定的であり、犬や猫がほかの動物や人に対する感染源となるというエビデンスはない。本件は急激な展開を見せることがあるため、新しい情報が入り次第アップデートされる。
つまり、今のところ「犬や猫が他の動物に対する感染源となるエビデンス(根拠)はない」ということになっています。
ただ、そもそも最初は「ヒトーヒト感染はしない」なんて言われていました。このように、感染源となる根拠は見つかっていないだけで、感染する可能性を否定するものではありません。
仮に、本当に感染しないとしても、ない物は証明できない(悪魔の証明)ため、今後も研究は続けられることになるでしょう。
さらに、CDCではこのような注意喚起がなされています。
➋米国疾病予防管理センター(CDC)
「COVID-19 に感染している場合は、伴侶動物やそのほかの動物との接触を、そのほかの人に対するものと同様に、制限すること。伴侶動物やそのほかの病気が COVID-19 に罹患して症状が出たという報告はないが、このウイルスに関する更なる情報が出てくるまで COVID-19 の罹患者は接触を制限するべきである。可能であれば、病気の間は家族の別の人が世話をしてほしい。COVID-19 にかかっている場合は、
なでる、くっつく、キスする、なめる、同じ食べ物を食べることも含めて伴侶動物との接触を避けるべきである。病気の間に伴侶動物の世話をする必要や近くにいる必要がある場合は触る前後に手洗いをしてマスクをつけるべきである。」
つまり、すでに新型コロナウイルスに感染しているのならば、人と同様に動物との接触を避ける必要があります。もしも、世話をしないといけない場合は、触る前後に手洗いをしてマスクの装着が推奨されています。
ただ、どちらにしても根拠がないため「念のため」という意味合いが強くなります。
このように、「新型コロナウイルスに感染したペットから人に感染するかについては、科学的な裏付けがないため実際のところはまだよく分からない。」これが現時点での結論です。
とはいえ、動物由来感染症は新型コロナウイルスだけではありません。狂犬病などペットに必要な予防接種があります。
また、犬などに付着しているマダニなども感染症の原因になります。
どちらにしても、あまり親密すぎるスキンシップは日頃から避けた方がいいのかもしれません。あとは、専門の獣医さんに確認しながら一緒に生活することになります。
最後に
もしも、ペットから感染する可能性があるのなら今回の緊急事態宣言により、人の行動が制限されたとしても大きな効果は期待できないかもしれません。
それこそ、動物の潜伏期間など、また分からないことが増えてしまいさらに研究のための時間がかかることになります。
例えば、動物のワクチン開発を進める必要があるため、人の治療だけでは済まなくなります。
ちなみに、朝日新聞でこのような記事がありました。
「AP通信によると、ペットの犬や猫が飼い主などから感染する事例はすでに確認されています。さらに、4月5日には米ニューヨーク市のブロンクス動物園の4歳のメスのマレートラが感染したことが発表されています。」
つまり、人からペットに感染することはすでに証明されていることになります。
現時点では、「人から感染した犬や猫などから、人に新型コロナウイルスが感染するのかどうか?」はまだはっきりと断定することができません。
参考
厚生労働省:動物由来感染症 2018ハンドブック
→https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000155227.pdf
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