「トランス脂肪酸が危険!」はどこから来た? 日本人との関係は?

 

突然ですが、「トランス脂肪酸」という言葉を聞いたことがありますか?

トランス脂肪酸と言えば、日常的に摂りすぎれば「生活習慣病になるリスクが高くなる!」と言われています。

WHOでも、「トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも小さくするように!」なんて勧告まで出されています。

日本のテレビでもトランス脂肪酸の危険性については報道されており、その影響で例えばマーガリンの消費を抑えている人がいるかもしれませんね。

とはいえ、実は多くの日本人にとっては、そこまで深刻に考えなくてもいいかもしれません。

今回はそんな「日本人とトランス脂肪酸」についてご紹介します。

 

トランス脂肪酸は悪者?

厚生労働省農林水産省でも、トランス脂肪酸についてまとめられています。

そもそもトランス脂肪酸は、「脂質」の構成成分である脂肪酸の一種です。そして、トランス(trans)というのは、「横切って・かなたに」という意味があります。

少し難しい話しになりますが、「脂肪酸」には鎖の長さや炭素間の二重結合の数と位置により、さまざまな種類がありますが大別すると・・・

  • 飽和脂肪酸:炭素間の二重結合がない。
  • 不飽和脂肪酸:炭素の二重結合がある。

この2種類があります。

さて、トランス脂肪酸は「不飽和脂肪酸」に当たりますが、この不飽和脂肪酸にも炭素間の二重結合のまわりの構造の違いにより「シス型」と「トランス型」の2種類があります。

→「トランス」というのは、脂肪酸の場合では水素原子が炭素間(原子記号:C)の二重結合を挟んで(横ぎって)それぞれ反対側にいる状態。

本題の「トランス脂肪酸」とはつまり、「脂質の構成成分である脂肪酸のなかでも不飽和脂肪酸のことで、さらにそれのトランス型」ということになります。

つまり、ざっくり言ってしまえば、「脂質の構成成分の1つ脂肪酸の一種」ということになります。

やっと、最初の説明に戻ってこれました・・・

 

「脂質と脂肪酸」と言えば?

そもそも、「脂質」と言えば三大栄養素の1つですよね。

脂質は、食品から摂る量が少な過ぎると健康リスクが高まります。

ですがその反面、炭水化物などと比べても同じ量当たりのエネルギーが多いため、摂りすぎると肥満などにより生活習慣病のリスクを高める厄介な栄養素でもあります。

そんな、脂質の構成成分である「脂肪酸」は、人間のからだの細胞を作るために必要になります。特に、食品を通してバランスよく摂取する必要があることは、多くの方がご存じではないでしょうか?

→脂肪酸は、エネルギー源としても使われます。

ただし、本題の「トランス脂肪酸」については、そもそも食品から摂る必要がないと考えられています。むしろ、摂りすぎた場合の健康への悪影響が注目されるほどです。

→日常的にトランス脂肪酸を多く取り過ぎると、少ない場合と比較して心臓病のリスクが高まるため排除していく取組を進めていく必要があることが、WHOでも示されていることが食品安全委員会でも紹介されています。

それでは、そもそもトランス脂肪酸にはどういった食品があるのでしょうか?

 

トランス脂肪酸を含んだ食品?

さて、そんなトランス脂肪酸にはそもそも、「天然にできるもの」「油脂の加工・精製でできるもの」があります。

 

天然にできるトランス脂肪酸

牛や羊といった反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きで、トランス脂肪酸が作られます。

→牛肉・羊肉・牛乳・乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が含まれている。

 

油脂の精製・加工でできるトランス脂肪酸

少し難しい話しになりますが、常温で液体の植物油・魚油から、半固体または固体の油脂を製造する加工技術の1つに「水素添加」という方法があります。

→水素添加により、「酸化による品質劣化がしにくい油脂」・「特定の温度で融ける油脂」など、様々な特徴を持つ油脂を作ることができる。

ただし、この際にトランス脂肪酸ができることがあります。そのため、部分的に水素添加した油脂を用いて作られた・・・

  • マーガリン
  • ファットスプレッド
  • ショートニング

などには、トランス脂肪酸が含まれています。

当然、これらを原料に使った「洋菓子(パン・ケーキ・ドーナツなど)」や、「揚げ物」などにもトランス脂肪酸が含まれることになります。

さらに、植物や魚から摂った油を精製する工程で好ましくない臭いを取り除くために高温で処理した場合、サラダ油などの精製した植物油にも、微量のトランス脂肪酸が含まれるものがあります。

と言うわけで、冒頭でお伝えした「マーガリンを控える」という理由はここからきていますが、それでは本当に問題になる量なのでしょうか?

 

トランス脂肪酸と日本人

トランス脂肪酸について、農林水産が出している結論を先に紹介します。

1. 「通常の食生活では、健康への影響は小さい。」

2. 「ただし、脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要あり。」

3. 「脂質は重要な栄養素。バランスの良い食事を心がけることが必要。」

さて、「通常の食生活で健康への影響は小さい」と基本的に結論付けているのは、大きな2つの理由があります。

 

❶そもそも、日本人はトランス脂肪酸の摂取量が少ない!

まず、大前提としてWHOはトランス脂肪酸の摂取量は総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも少なくするように勧告しています。

ただこの、「総エネルギー摂取量の1%よりも少ない量」についてなんですが・・・

日本人が食品から摂っているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は0.92%~0.96%と農林水産省が2005年~2007年に実施した調査研究で推定されています。

→この量は、平均総エネルギー摂取量の0.44%~0.47%に相当。

さらに、食品安全員会は2012年の調査で日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を、平均総エネルギー摂取量の約0.3%(アメリカ:2.2%)と推定しています。

早い話、WHOが勧告している半分にも満たない量しか基本的に日本人は摂取していないことが示されています。

さらに、食品事業者も努力をしています。

 

➋食品事業者はトランス脂肪酸を減らす努力中!

日本人のトランス脂肪酸摂取量は、すでに圧倒的に少ないことが分かりました。

ですが、さらに食品事業者は食品中のトランス脂肪酸含有量を近年減少傾向にさせています。

→「一部製品は高いものがみられることから、引き続きその低減に努める必要がある」ことを、農林水産省からも指摘されているため、今後も食品中のトランス脂肪酸の低減は進められていくでしょう。

*事業者により、トランス脂肪酸を減らすために温度や時間・圧力を厳密に管理するなど、さまざまな工夫がなされている。

 

トランス脂肪酸が害になるという研究結果?

確かに、トランス脂肪酸は大量に摂取すれば健康に害をなすかもしれません。

実際、厚生労働省でもこのような見解が示されています。

トランス脂肪酸の過剰摂取により、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加する可能性が高いとされています。また、肥満やアレルギー性疾患についても関連が認められていますが、糖尿病、がん、胆石、脳卒中、認知症などについての関連は分かっていません。

さて、この「過剰摂取」についてですが、そもそも日本人よりも多くトランス脂肪酸を摂取している諸外国の研究結果がもとになっています。

逆に言えば、これらの諸外国は「脂質を日本よりも過剰に摂取する文化がある」ということになります。

また、病気との関連性などまだ分かっていないこともあります。

結論から言ってしまえば、海外の調査結果が大事なのではなく、あなたの体の状態を知る必要があります。

「だから日本人には関係ない!」とは言い切れませんが、少なくとも研究が報告された諸外国と日本とでは食文化が違うことは確かでしょう。

例えば、アメリカと日本でハンバーガーのサイズは違いますよね・・・

 

最後に

冒頭でお伝えした、「マーガリンを控える」という発想も、少なくともトランス脂肪酸を怖がっていることが理由なら、そもそも脂質を過剰摂取していなければ心配する必要はそれほどないでしょう。

そもそも、マーガリンのトランス脂肪酸の低減もなされています。

以上のことから、海外の研究結果から問題を指摘するのはいいですが、蓋を開けてみれば多くの日本人の食生活とはかけ離れていることが分かります。

もちろん、あくまでも「平均」であるため、アメリカの結果のように2%を越えてトランス脂肪酸を摂取している人はいるでしょう。

ですが、脂質の過剰摂取は他の病気を誘発するため、そんな食生活を続けているならすでに健康診断に引っかかっているのではないでしょうか?

どんなに素晴らしい調査結果も、私達が参考にできるものでなければそもそも注意する必要がありません。(不安を煽るだけのものになる)

例えば、「海外では部屋の中まで靴を履いて入る文化が一般的であり、それにより感染症が拡大する」なんて論文があったとしても、日本人の中で部屋の中にまで靴を履いたままの人はどれくらいいるのでしょうか?

今回のように、「トランス脂肪酸は危険!」ということなら、まずはその結論になった前提を調べないと、不必要に恐れることになります。

と言うことで、食生活が乱れていて脂質を過剰摂取している場合は、トランス脂肪酸のとりすぎにご注意下さい。

 

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