最近では、ドコモ口座を悪用して連携していた地銀を中心にお金が不正に引き出された事件が問題になっていますよね。
ですが、お金を盗む手法はなにもシステムを使ったものばかりではありません。
今回は、一度騙されると何度も詐欺られる「古くて新しい詐欺:原野商法」
についてご紹介します。
→「ドコモ口座の不正引き出し」については、こちらの記事で紹介しています。
「原野商法」は古くて新しい?
そもそも、原野商法というのは「価値の低い山林や原野を騙して売付ける悪徳商法」のことです。いうまでもなく、犯罪です。
もともとは、1960年代~1980年第に多発した詐欺の手口で、バブルなど土地ブームが起こると増加する手法でもあります。
つまり、2020年になった今から考えると約60年前に主流になっていた古い手口と言うことができるでしょう。
ただ、その土地を親から相続していれば、所有者は子どもである2代目が所有者になっているかもしれません。
さて、そんな原野商法の怖い点は、なんといっても土地を買わされていることです。
「土地」と言えば、固定資産税がかかりますし、相続をする場合なら相続税が必要になります。
しかも、もしも相続時に土地を手放す場合は、他の相続も手放さなくてはいけなくなるため、原野商法で買わされた土地は負債。いわゆる「負動産(価値のない不動産)」になる可能性が高くなります。
かといって、そんな土地を欲しい人を見つけることは難しいですし、自治体に寄付しようにも維持費などがかかるため断られる可能性が高いでしょう。
そうこうしている間に、この負動産をめぐってその時の所有者が、また詐欺にあうことになります。
原野商法による二度目の詐欺
価値のない土地(遊ばせている土地)に、固定資産税を払い続けることは苦痛でしかありません。さらに、そんな土地であっても相続を拒否すれば他の相続もできなくなります。
もしもあなたなら、「できるだけ速やかにそんな土地は売ってしまいたい!」と思いますよね。
そんな心の隙を突いて、詐欺師が近づいてきます。
日本人は契約に弱い!?
❶相続対策に原野を売却しようとしたが騙された事例
原野を所有しているが、子に相続すると迷惑をかけるので手放したいと思っていた。先日不動産業者から電話があり、自宅を訪問され「約 800 万円で買い取りたい」と勧誘された。その際「移転登記をするまで時間がかかる、それまで仮のしるし」と言われ、遠方の原野の売買契約書に署名した。意味がわからなかったが業者が「気にしないで」と言うので信用した。手続き費用として約 400 万円を支払い、住民票と印鑑証明書、土地の権利書を業者に渡した。しかし実際は、遠方の原野と自分の売却額の差額分と別の原野の購入費用となっていた。
この事例は、「800万円で原野を購入したい!」という不動産業者からの電話から始まった事例です。
ところが、子どもへの相続対策として原野を売ろうとしたが、いつの間にか別の原野を購入させられています。
問題は、被害者が意味も分からず遠方にある原野の売買契約書に署名してしまい、土地の権利書まで渡してしまっている
ことです。
➋宅地建物取引業の免許を持つ業者
5 年前に約 1,000 万円で購入した山林を高値で買い取ると電話が来た。宅地建物取引業の免許を持つ不動産業者だと言うので、信用して自宅で詳細を聞くことにした。「あなたが所有する土地を約 1,250 万円で買い取るが、その代わり別の山林をあなたに買ってもらい、それを 3 カ月後に同額で買い戻す」という話だった。その山林を 1,500 万円で購入したことにして、差額の 250 万円を支払った。登記事項証明書は届いている。それから 3 カ月がたったため、山林を買い戻してもらおうと連絡したが、連絡が取れない。
この事例も、業者から電話が来ています。
さて、「宅地建物取引業の免許」というのは、「不動産の売買、仲介、交換、賃貸の仲介などの不動産の取引に関与する仕事を行うこと」をいいます。
つまり、この仕事をする為には、都道府県知事に免許の申請を行い「免許」が無ければできません。
*ちなみに、自分の不動産を自分自身が賃貸する場合(賃貸住宅の大家さん)は、この資格は必要ありません。
こういった事例のように、原野商法の被害は山林などを持っていれば続いていくことになります。
→「秋田地方裁判所大曲支部平成29年9月22日判決」で詐欺行為を行った訴外会社に対し,名義の使用を承諾した宅地建物取引士の共同不法行為責任を認めた判例があります。
二次被害はこれからも続く・・・
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)では、二次被害の相談件数が増加しています。
2013年に相談件数が1,032件と1,000件を越えましたが、2015年には847件に減少しました。ところが、2016年には1,076件・2017年には1,196件と増加傾向になっています。
さらに、契約者の年齢は60代以上が9割を越えているため、高齢者を狙った犯罪だと言うことができます。
また、騙された金額も1件当り増加傾向が見られています。
2014年には、1件当り189万円でしたが、2015年には338万円と急増。2017年には、467万円が平均的な被害額になってしまっています。
つまり、被害者も被害額も増加傾向にあります。
原野商法の二次被害の特徴は?
原野商法は2018年には1,500件を越えていますが、二次被害で特に多いのは・・・
- 売買契約の内容が違う
→例えば、「400万円で森林を売ります!」と業者に言われ契約書にサインしたとします。
ところが、その契約書は所有していた森林(1,200万円の価値)+400万円で1,600万円の原野を購入する契約書だった。
つまり、所有していた土地を下取りに出されて足りない分(400万円)を補填させられて「さらに高い原野を買わされていた」ということです。
このように、詐欺師は契約を守るつもりが最初からないため、相手が興味をもつ内容に合せて話しを進めていくだけです。
- 調査費用を請求される。
→「売却するには、調査や整地費用が必要」などと言い、支払後、連絡が取れなくなる。
- 管理費用を請求される。
→突然、管理業者(詐欺師)から管理費用や滞納金を支払うように請求される。
*なにより、かつて原野商法で騙された人が二次被害に狙われている現状があります。
最後に
基本的には、業者から一方的に連絡がくることになります。
ですが、そもそも誰も欲しがらない土地をなぜ欲しがるのでしょうか?
そして、一度あなたが騙されてしまうと、今度はあなたの子どもが騙されて新しい土地を買わされ、また次の子(孫)も被害に遭うかもしれません。
このように、原野商法で1度騙されると自分の子や孫にまで、永遠と被害を被る危険性
があります。
しかも、一度お金を払ってしまうと業者とは連絡がつかなくなるため、回収することはほぼ不可能に近いでしょう。
そして、また悪徳業者に狙われます。
この手法は、そもそも「説明された内容が契約書にも書かれている!」と思い込んでいる時点で、カモにされてしまう古典的なやり方です。
なにより、相手から都合のいい話しがあった時点で疑わなくてはいけないでしょう。
「おかしい?」と感じたらお金を払う前に、契約書にサインする前に消費生活センターへ連絡して下さいね。
参考
政府広報オンライン
→https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201806/2.html
相続税の教科書
→https://souzoku-satou.com/dishonest-business-practice
ウチコミ!
→https://uchicomi.com/uchicomi-times/category/investment/knowhow/12689/
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