今年も猛暑が続いていますが、新しい生活様式によりマスクを付けなくてはスーパーにも入れなくなってしまいました。
ただ、そんななか総務省消防庁の発表によると、熱中症による救急搬送が、8月10日~16日までのたった1週間で12,084人にもなりました。
前年度は、同時期7,639人だったため、前年比と比較すると約1.5倍も増加しています。
ちなみに、6月1日~8月16日を比較すると・・・
- 2019年:50,121人
- 2020年:35,317人
→6月から比較すると前年度よりも少なくなっていますが、さらに猛暑が続くと逆転するかもしれません。
今回は、「高齢者は特に要注意!屋内も危険な熱中症」についてご紹介します。
今年(2020年)の熱中症の状況は?
冒頭でお伝えしたように、熱中症により救急搬送された人数は、去年(2019年)の6月から比較すると、むしろ今年は約15,000人も少ないことが分かります。
ところが、猛暑が続いている8月10日~16日だけで見ると去年よりも1.5倍増加しています。
つまり、今年の夏は暑さに特に弱くなっていることが予想されます。
『正直、原因は「マスク」や「マスクをしたままの運動」にあるのでは?』と思いますが、6月からの比較では救急搬送者が少ないところを見ると、他の原因があるのかもしれません。
さて、そんな誰がなってもおかしくない熱中症ですが2020年8月10日~16日の間で、どんな場所で多く発生してたと思いますか?
熱中症が発生しやすい場所とは?
2020年8月10日~16日
- 屋内 :6,183人(48.3%)
- 道路 :2,384人(18.6%)
- 公衆(屋外):1,450人(11.3%)
つまり、屋内だけで約半数を占めています・・・
ちなみに、2020年8月10日~16日の間で熱中症による救急搬送が1,000人を越えたのは「東京都」だけでした。→1,574人(2番目-埼玉県:997人)
2020年6月1日~8月16日
2020年6月1日~8月16日の期間を確認しても、「屋内」での熱中症による救急搬送人数が最も多くなっています。
- 屋内 :15,043人(42.6%)
- 道路 :6,628人 (18.8%)
- 公衆(屋外):3,671人 (10.4%)
少なくとも、今年は2020年8月時点で熱中症が最も引き起こされやすい場所は、他の場所よりも約2~3倍「屋内」の方が発生しやすいことが分かります。
*ちなみに、2020年6月1日~8月16日の間で熱中症による救急搬送が3,000人を越えたのは「東京都」だけでした。→3,138人(2番目-大阪:2,481人)
ところが、「屋内」の熱中症についてあまり危険視されていないという結果が、旭化成建材株式会社 快適空間研究所が実施した「―「住宅の温熱性能と居住者の意識(熱中症に関する意識)」調査結果について―」で報告されています。
どんな報告だったの?
- 期間:2018年8月30日~9月5日
- 対象者:戸建持家居住者 20 代~60 代 既婚男女 (回答者数:1175 名)
- 地域:全国6地域(19都府県)
首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)、中京圏(岐阜、静岡、愛知、三重)、阪神圏(京都、大阪、兵庫、奈良)、山陽・四国(岡山、広島、香川、愛媛)、福岡県、宮崎県・鹿児島県
→webアンケートで実施。
調査結果は?
- 2~3年以内に、住宅内で疑いも含めて熱中症になったことがある人
⇒10人に1人
- 住宅内で熱中症が発生した場所
⇒「寝室(28.3%)」・「居間・食堂(25.6%)」・「脱衣所(16.9%)」
- 温熱性能が高い住まいに暮らす人ほど、熱中症になる割合が明らかに低くなる。
寝室 | 居間・食堂 | |
温熱性能(低) | 30.2% | 34.4% |
温熱性能(中) | 33.2% | 20.6% |
温熱性能(高) | 1.1% | 8.7% |
*温熱性能というのは、「暖房や冷房にかかるエネルギーをいかに抑えることができるか」という能力のこと。
→外の熱を屋内に伝えない性能(断熱など)
上記のように、熱中症は屋内で発生しやすく、その中でも特に「寝室」や「居間・食堂」などで発生しやすい傾向
があります。
ただし、温熱性能に優れた住宅の場合は熱中症になる割合は1割を切るようです。
特に、温熱性能に優れた住宅の場合、熱中症が最も発生しやすい「寝室」で熱中症になる可能性は、ほぼ皆無になっています。
さて、「熱中症が引き起こされやすい場所」・「温熱性能」によって、その危険性が大きく変わることがこれで分かりました。
ところで、熱中症で救急搬送される年代についてはご存じでしょうか?
熱中症で救急搬送される多くが高齢者!
2020年8月10日~16日
2020年8月10日~16日で熱中症により救急搬送された人達は、高齢者が最も多くなっています。
- 高齢者-満65歳以上 :7,914人(61.8%)
- 成人-満18歳以上~満65歳未満 :3,987人(31.1%)
- 少年-満 7 歳以上~満 18 歳未満の者 :845人(6.6%)
- 乳幼児-生後 28 日以上~満 7 歳未満の者:57人(0.4%)
- 新生児-生後 28 日未満の者 :1人(0.0%)
このように、高齢者の救急搬送者が全体の6割を越えてしまっています。
これは、2020年6月1~8月16日までまでの年代別の救急搬送者をみても同じことが言えます。
2020年6月1日~8月16日
- 高齢者-満65歳以上 :21,099人(59.7%)
- 成人-満18歳以上~満65歳未満 :11,211人(31.7%)
- 少年-満 7 歳以上~満 18 歳未満の者 :2,811人(8.0%)
- 乳幼児-生後 28 日以上~満 7 歳未満の者:193人(0.5%)
- 新生児-生後 28 日未満の者 :3人(0.0%)
このように、熱中症による救急搬送は、高齢者だけで約6割となっています。
ところが、最も警戒しないといけないはずの高齢者が、むしろ熱中症の心配をしていないことが指摘されています。
高齢者は熱中症に対する関心が低い?
先程紹介したアンケート結果より、そもそも年代が上がるにつれて熱中症を心配する人は低くなる傾向になっています。
熱中症に対して、「心配している+少し心配している」と答えた年代別の割合
- 20代:65.1%
- 30代:39.6%
- 40代:47%
- 50代:42.3%
- 60代:38%
つまり、若い人ほど熱中症に対して警戒心を持っており年を重ねるほど、なぜか熱中症に対する警戒心が薄くなる結果となっています。
ちなみに、60代で「心配している」と答えた人は2%しかいませんでした・・・(20代:17%)
この原因の1つに、屋内における「熱中症の危険度」について正しく理解していないことが挙げられます。
「熱中症の危険度」ってなに?
環境省が熱中症予防情報サイトを公開しています。
温度基準
(WBGT)注意すべき
生活活動の目安注意事項 危険
(31℃以上)すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。
外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。厳重警戒
(28~31℃※)外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。 警戒
(25~28℃※)中等度以上の生活活動でおこる危険性 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。 注意
(25℃未満)強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。
このように、熱中症の警戒レベルを「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階で表わしています。
ちなみに、ほぼ全ての一般の物件で熱中症の危険は「厳重警戒以上になる!」という報告((出典)柴田祥江、北村恵理奈、松原斎樹「高齢者の夏期室内温熱環境実態と熱中症対策-体感温度の認知(見える化)による行動変容の可能性ー」)もあります。
ところが、「自宅で熱中症の危険度がどの程度まで上がると思うか?」と確認したところ、「危険」「厳重警戒」まで上がると理解していた人は、全体で17.3%しかいませんでした。
→60代は、最も低く7.6%だけでした。
高齢者は熱中症に対する意識が低い・・・
- 高齢者は、自分達が熱中症で救急搬送される可能性が高い年代だと理解していない人が多い。
- 屋内で命に関わる熱中症になると理解していない人が多い。
*熱中症を全体的に甘く考えている傾向がある。
さらに、深刻な問題がもう一つアンケート結果から示されました。
高齢者は、自分が熱中症になっていたことすら自覚できていない!?
そもそも、熱中症で救急搬送されている年代は、約6割が高齢者です。つまり、本来なら「疑いも含めて熱中症になったことがある!」と答えた年代の多くは、「高齢者」でなくてはいけないことになります。
ところが、「住宅内で熱中症になったことがある!」と答えた人は年代が上がるほど低くなりました。
- 20代:28.1%
- 60代:4.2%
つまり、高齢者は「熱中症になるかもしれない」という危機感が薄く、さらに「熱中症になっていても気付かない」ということがこのアンケート結果から示されました。
もちろん、アンケートですので毎回同じ結果が出るわけではありませんが、「偶然」にしてはあまりにも現実と認識が乖離した結果が出てしまっています。
→「熱中症警戒レベル」については、こちらの記事で紹介しています。
最後に
熱中症に対する認識は、高齢者に限らず全体的に薄いのかもしれません。
少なくとも、現状では熱中症よりも新型コロナウイルス対策の方が優先されています。夏場にマスクの装着をしないといけない現状からも、このことはうかがえます。
ただ、熱中症は全ての人がいつ命を落としてもおかしくありませんが、やはり高齢者が最も注意しなくてはいけません。
コロナ対策だけをやっていては、命がいくつあっても足りません。今、優先順位を考えた行動が求められているのではないでしょうか。
→「熱中症対策」については、こちらの記事で紹介しています。
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