火災が発生すれば初期消火の約2分(炎が天井にのぼるまで)が個人で消火対応ができる限界です。
火災については、以下の記事で紹介しています。
ですが、防火住宅が建てられるようになり木造建築とは違い燃えにくくなりました。
ですが、たびたび「火災で亡くなられた」というニュースがあります。
中には、元気なはずの若物まで犠牲になっています。
燃えにくくなり、避難する時間が十分あるはずの住宅火災でなぜ逃げられないのか?
今回は、「住宅火災に潜む危険」について紹介します。
平均すると住宅火災で毎日亡くなっている!?
総務省消防庁の統計より、H29年の放火自殺者等を除く住宅火災による死者は、H27年と比べると減少しています。
H27~H29年までの住宅火災による死者数
- H27年ー914人(火災全体の死者数:1563人)
- H28年ー885人( 〃 :1452人)
- H29年ー889人( 〃 :1456人)
ですが、依然として住宅火災により900人近く亡くなっています。
- H29年の住宅火災での死者数は889人のため、平均すると1日に2人(2.4人)は住宅火災で亡くなっていることになります。
- また、住宅火災による死者数は火災全体の死者数の約6割を毎年しめています。
それでは、なぜ住宅火災によりこれほど多くの人が亡くなってしまうのでしょうか?
住宅火災の危険性
「一酸化炭素」という言葉をご存じの方も多いと思います。
木造建築とは違い、特にマンションなどは気密性が高く換気扇や窓を開けなければ空気がたまってしまいます。
つまり、火災だけでなく暖房器具などを使用した場合など、一酸化炭素中毒になりやすい環境にあります。
そして、住宅火災の約4割は「一酸化炭素中毒」が原因で亡くなられています。
東京消防庁が発表しているH25年~H29年に管内で発生した住宅・共同住宅での「一酸化炭素中毒事故」についての割合は(図1)。
図1 東京消防庁管内で発生した一酸化炭素中毒事故発生件数と救急搬送件数
そして、図2は救急搬送された患者さんの初診時の程度割合です。
図2 救急搬送時の初診時の程度別割合
*重篤・重症は命に危険がある状態で救急搬送されたという意味です。
図1と図2から・・・
- 一酸化炭素中毒は、屋内の人すべてを巻き込んでいく。
- 救急搬送されたときには約4割が命の危険が生じている。
なぜ、救急搬送されるまで逃げられないのでしょうか?
なぜ一酸化炭素中毒に気付けない?
一酸化炭素は、吸い込んでしまうと血液中のヘモグロビン(酸素を全身に送る役割がある)と結合してしまいその機能を失わせる猛毒とされています。
しかも、無色・無臭のため吸い込んでもほとんど分からず、気づいた頃には手遅れの場合もあります。
どんな症状があるの?
空気中に0.1%以上あると死ぬといわれる一酸化炭素ですが、一定量を超えるとさまざまな症状がでてきます。
空気中の一酸化炭素濃度(日本ガス石油機器工業会HP参照)
- 0.02%→2~3時間以内に軽い頭痛
- 0.04%→1~2時間で前頭痛→2.5~3.5時間で後頭痛
- 0.08%→45分で頭痛・めまい・吐き気→2時間で失神
- 0.16%→20分で頭痛・めまい・吐き気→2時間で失神
- 0.32%→5~10分で頭痛・めまい→30分で致死
- 0.64%→1~2分で頭痛・めまい→10~15分で致死
- 1.28%→1~3分で死亡
以上が、空気中の一酸化炭素の濃度別の身体症状になります。
火を使っているときに、頭痛など体調不良があればすぐに換気したほうがいいでしょう。
換気により症状が改善したなら、一酸化炭素中毒だった可能性が高いです。
*密閉状態で一度失神してしまえば、症状は進行していくため助かるのは難しくなるでしょう。
先程もお伝えしたように、マンションは特に気密性が高くなっています。
つまり、締め切った状態で火災や暖房器具の使用をすれば酸素が減少し一酸化炭素がどんどん部屋中に蓄積されていくことになります。
つまり、最初は一酸化炭素濃度が0.02%でもどんどん濃度が高くなるため実際は、もっと早く中毒症状は進むと考えられます。
もし、あなたが起きたときに火災が発生していたら・・・
すでに頭痛が始まっているようなら、一酸化炭素中毒の危険性が高いので失神してしまう前に、急いで酸素を確保する必要があります。
どんなものから一酸化炭素は発生するの?
一酸化炭素は、不完全燃焼をすることで発生します。
物が燃えるためには、酸素が必要ですよね。
締め切った状態で物を燃やし続けると酸素が少なくなり正常に燃えることができなくなり、一酸化炭素が発生します。
つまり・・・
①燃焼系の暖房器具(石油ストーブなど)やガスこんろなど火を密閉した状態で使い続ける
↓
②二酸化炭素が増え続け、火が正常に付かなくなる(不完全燃焼)
↓
③一酸化炭素が発生
という状態になります。
火を長時間使うときは十分にご注意下さい。
*経済産業省が、「飲食店の皆様へ」と一酸化炭素中毒事故に関する注意喚起をしています。
「飲食店への皆様へ」
→http://www.safety-kinki.meti.go.jp/kayaku_gas/inshokuten_p.htm
ラーメン屋や焼き鳥屋など飲食店でも、換気が不十分で一酸化炭素中毒により搬送される事故が発生しています。外食時はご注意下さい!
火災時に一酸化炭素中毒から身を守るには?
火災が発生すると大量の煙が発生し「煙に巻かれる」なんていいますよね。
実は、この煙の中に一酸化炭素も含まれています。
つまり、煙に巻かれるということは「息がしにくい」とか「目が痛い」とかそういう刺激としての問題だけではありません。一酸化炭素中毒により、「失神する可能性が高い」という意識を保っていられるかどうかという「命の問題」に直結します。
そのため、火災が発生したときは煙をできる限りすわないように逃げることがなによりも重要になります。
よく火災時の避難ポスターでも「煙を吸わないで!」と書かれていますがその理由が理解できたでしょうか?
煙を吸わないように
タオルやハンカチなどで鼻や口をおおう。→ではなく、指定ゴミ袋など大きな袋に空気をいれて頭からかぶる。(「けむりフード」が楽天などでも市販されています)- 煙は空気よりも軽く、上にのぼっていくため低い姿勢で逃げる。
- 煙が充満している場所は濃度が高いため可能な限り避ける。
- 煙を吸わないように騒いだり大声を出さない。
など、煙を吸わない工夫をして早急に避難する必要があります。
そして、避難後はもどってはいけません。
いざというとき、家族を守れるように準備をしておいた方がいいでしょう。
防災新常識
楽天市場でも販売されている「けむりフード」は、防災新常識として普及していっています。
歩いて5分程は酸素が確保でき、「目が痛くて開けられない!」といった状態も避けられるため、煙に巻かれる危険性も下がります。(海中で、あと約5分だけもつ酸素ボンベを使って海面に向かっているイメージ)
近場の大きめの袋を使うなら、無色透明のビニール袋にしないと視覚が確保できません。袋に空気を入れて膨らませそのまま頭にかぶります。
→ビニール袋を頭からかぶったら、二酸化炭素(呼吸により発生した)で窒息する前に急いで逃げる必要があります。
まとめ
- 一酸化炭素中毒は人間にはほとんど感知できない猛毒。
- 不完全燃焼により一酸化炭素は発生するため、頭痛など身体症状があればすぐに換気が必要。
- 火災が発生すれば、煙を吸わない工夫が重要。
参考
総務省消防庁
→http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList8_3.html
日本ガス石油機器工業会
→http://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/anzen/co/index.html
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