皆さんは、子どもが体重の○%までなら体にそれほどの影響がなく荷物をもてるかご存じでしょうか?
おそらく、ほとんどの人が知らないのではないでしょうか?
というのも、子ども達が持つランドルセルの重さがどんどん増加しているためです。今回は、そんなランドセルが子ども達に与える影響についてご紹介します。
ランドセルの重量についてはこちらの記事で紹介しています。
ランドセルの重さは伝統?
私が小学生だった25年以上前。やはり、ランドセルは重かったです。特に私は体が小さかったので大変だったことを覚えています。肩に食い込む肩ベルトを少しずつずらしながら登校していました。
ただ、私の親も「ランドセルは重い物だ!」という認識のもと私自身も辛いながらも「みんな同じだ!」とランドセルの重さには疑問をもちませんでした。
ところが、現在では私達が小学生だった頃とは比べものにならないほど、ランドセルの重量が上がっています。
ランドセルが重たいことは、伝統なのかもしれません。ですが、その重たさはこれまでだれも経験したことがないような重量になっていることをまずは私達大人は理解しなくてはいけません。
つまり、今の大人が誰1人として経験したことのない重量のランドセルを、今の小学生は毎日「置き勉禁止」の校則も関係して、毎日歩いて往復していることになります・・・
虐待レベル?
なんでもかんでも「虐待!」とレッテル貼りをすることは私自身好きではありません。ただ、あまりにも現状にあっていないのではないでしょうか?
例えば・・・
- 小学1年生(6歳)の子どもに親が2Lのスポーツドリンク✕3本(6kg)を透明のリュックにいれて背負わせて歩かせていた場合、あなたは「別に普通かな~」と思いますか?
- 6kgの米を小学生に背負わせていると想像するとさらに分かりやすいかもしれません・・・
この6kgというのは、子ども達の背負っているランドセルの重さです。さらに、雨が降れば傘を挿すし、体育があれば体操服など、そもそも荷物はランドセルだけとは限りません。
*セイバンが2018年におこなったアンケートでは、ランドセルの重さの平均は約6kgでしたが、最高で10kg以上のランドセルを背負っている小学年生もいます。
→小学生が10kgの重量を運んでいることも驚きですが・・・
ちなみに、このランドセルの平均重量は、2018年にNHKで紹介されていた内容では7.7kgでした・・・
*2020年から始まる教育改革ではさらに教科書が重たくなることが想定されています。
体重の10%以上は、背中や腰を痛める!
小学生(男女別)の平均体重
それでは、そもそも小学生の平均体重をご存じでしょうか?
文部科学省が公表している平成29年度の学校保健統計調査結果から紹介します。
図1 小学生の平均体重(男子)
学年 | 体重 |
1年生(6歳) | 21.4kg |
2年生(7歳) | 24.1kg |
3年生(8歳) | 27.2kg |
4年生(9歳) | 30.5kg |
5年生(10歳) | 34.2kg |
6年生(11歳) | 38.2kg |
図2 小学生の平均体重(女子)
学年 | 体重 |
1年生(6歳) | 21kg |
2年生(7歳) | 23.5kg |
3年生(8歳) | 26.4kg |
4年生(9歳) | 29.9kg |
5年生(10歳) | 34kg |
6年生(11歳) | 39kg |
これは、もちろん平均ですのでこれより重たい子もいれば軽い子もいます。図1・2の平均体重を参考に説明していきます。
「ランドセル」という重り
◎海外の場合◎
そもそもの話しなんですが、実は「体重の10%以上は体を痛める要因になる」ことがアメリカの研究結果で発表されています。
米国ハーバード大学元研究員でボストン在住の内科医:大西睦子氏がこのように解説されています。
「’10年のカリフォルニア大学の研究者らによる調査では、バックパック(日本のランドセルに該当)の負荷は、子どもの背中痛の原因となり、腰椎椎間板の変形などに影響する可能性が指摘されています。また、’12年のスペインの研究者らの報告では、調査対象のうちの60%以上が体重の10%を超えるバックパックを背負っている現状が明らかに。そして調査対象の約25%の子が年に15日以上の腰痛を経験していました」
また、
「’14年にカリフォルニア州では、小学生向けのバックパックの重量を制限する法案を可決しました。そのガイドラインでは、『子どもに体重の10%以上の重さのバックパックを持たせないようにする』とあります」
つまり、日本でいう所のランドセル(バックパック)の重量について、カリフォルニア州では法律まで設けられています。
それでは、日本の小学生への影響はなにもないのでしょうか?
◎日本の場合◎
小学1年生の体重の10%と言えば男女とも約21kgが平均体重ですので、約2.1kgが体に影響のない加重となります。ところが、加重が6kg・8kg・10kgともなればとんでもない数値だということが分かります。
小学1年生の平均体重:約21kg
- 6kg加重→体重の約28.4%
- 8kg 〃 →体重の約38%
- 10kg 〃→体重の約47.6%
にもなります。
つまり、少なくとも体を痛めるとされる10%の3倍近くの重量を、日本の小学生達は毎日運んでいることになります。
さらに10kgともなれば、小学1年生の体重の半分になります。もし、平均体重より少ない小学生が10kgのランドセルを背負って30分以上かかる通学路を歩いていたらどうでしょう。
親が普段、学校以外で同じことを毎日子どもにさせていれば、おそらくいつかは「虐待通報」されてしまうでしょう。
ですが、「学校の登校」というフィルターがかかると「当たり前」となり大人はなにも違和感を感じなくなります。
体に与える影響とは?
さて、何も問題がなければこんな記事を書く必要もないのです・・・
単純に、自分の体重の30%・40%・50%の重さの物を毎日繰り返して運ぶ動作に、「体になんの影響もない!」と考える方がそもそも不自然ではないでしょうか?
私達大人でも、腰痛になったり体のどこかに異常をきたします。
まして、成長過程の子ども達になんの影響もないとはかなり考えにくいですよね・・・(そんな危惧もあり、文部科学省は「置き勉」について通知をだしています。)
それでは、実際にどんな影響があるのでしょうか?
◎体への影響◎
- 背中やお腹の筋肉をはじめとする組織に負担がかかり腰痛などのケガになりやすい。
- ベルトが両肩の後ろに引っ張られるため、血管や神経の通り道を圧迫する。
- 長時間、圧迫が続くとしびれや麻痺などの症状が現れる。
- 両ベルトに不均等な重さがかかると左右不均衡に筋肉が発達するなど。→側湾症の危険性もある。
*側湾症は背骨が左右に歪曲した状態です。
◎そもそも、背中に重量がかかるため・・・◎
- 車やバイク、自転車がきたとき咄嗟によけられるのか?
- 後方へ転倒することはないのか?
という心配もあります。
「鍛えることができる!」という考え方もあるとは思います。ただ、子ども達の体の状態は千差万別で一律に、例えば10kgのランドセルを背負わせることには疑問があります。
もちろん、背負える子ども達は大人が様子をみながらやらせて見てもいいのかもしれません。ただ、今のように・・・
- 小学3年生で湿布を貼る
- 整体に通う
- ランドセルが重たくて不登校になる
といったことでは意味がありません。
ましてや、ランドセルの重さでバランスを崩して事故に遭ってはひとたまりもありません。それこそ、「小学生が運べる重量について」今後、有識者による話し合いが必要になるのではないでしょうか?
まとめ
ランドセルが重たいことは、「当たり前だ!」と私自身思っていました。
また、「体重の10%以上の荷物を持たせない!」と言いたいわけではありません。私が伝えたいことは、「体重の10%以上の加重がかかるだけで、人間の体は異常をきたす可能性がある」ことを大人にもっと知って欲しいだけです。
なんの知識もなく、子どもに「私もランドセルを頑張って背負って通学していた!」なんていっても通用しません。なぜなら、私達が背負っていた時よりも、今の子ども達はさらに重たい物を運んでいるのですから・・・
そして、大人になれば体重の10%以上の荷物を運ぶことは、普通にありますよね。ですが、私達自身も気をつけないといけないことが分かれば、子ども達への声かけも変わってくるのではないでしょうか。
参考
live doorニュース:「脱ゆとり」で教科書が大型化 重すぎるランドセルに小学生は悲鳴
→http://news.livedoor.com/article/detail/13222006/
ヘルプレ:ランドセルも危険? リュックサックで「背中や首に痛み」を訴える子どもが急増
→http://healthpress.jp/2015/09/post-1985_2.html
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