「ノロウイルス」といえば、誰もが名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?
- 激しい嘔吐に襲われて・・・
- 特に冬場に発生する・・・
- 「アルコールでは滅菌できない!」って聞いたような・・・
なにか知っていたことはありましたか?
今回は、「感染力の強い危険なノロウイルス」についてご紹介します。
身近なノロウイルス
福祉現場ではたらいていた私にとって、インフルエンザの次に身近だったものといえばノロウイルスでした。8年程、高齢者の介護職員として現場で働いていましたが幸いにも私自身はノロウイルスに感染したことは1度もありませんでした。(施設内で発生したこともありませんでした)
施設ではこんな対応をしていました。
- 毎食後、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)でまな板や包丁を消毒(薄めた次亜塩素酸ナトリウム液に浸す)。
- 食器類は、食器乾燥機で熱消毒。
- 便失禁などがあればすぐさま汚れた衣類は洗って次亜塩素酸ナトリウム液に浸して消毒。
- 手すりなど、よく触るところは薄めた次亜塩素酸ナトリウム液を布などに付着させて拭いて消毒。
などなど、とにかく徹底してノロウイルスに有効な消毒を毎日していました。
ただ、これだけしても当然のように発生してしまうのがノロウイルスです。そして、一度発生(ノロウイルスによる「嘔吐」や「下痢」)してしまえばフロアにいる人全体に空気感染してしまうため、かなり怖いウイルスです。
ただ、ノロウイルスは別に施設に限ったものではありません。さて、ここからは厚生労働省のHPも参考にしながらもう少し詳しく説明していきます。
ノロウイルスってそもそもなに?
ノロウイルスは、50年以上も前(1968年)にアメリカで発見されています。オハイオ州の「ノーウォーク」という町の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者のふん便からウイルスが検出されたことから、ノーウォークウイルスと呼ばれました。
感染経路は?
「感染」と聞くと、「どんな症状があるの?」「どんなことに気をつければいいの?」って気になりますよね。
健康な人は軽症で回復しますが、高齢者や子どもは重症化しやすく吐物を誤って気道に詰まらせて死亡することもあります。そのため、施設としてはそもそもノロウイルスの発生を防ぐために消毒を徹底しています。
*高齢者施設で働いていたときに30代の先輩(チーフ)からこんな話を聞きました。利用者からノロウイルスに感染して、「数日ほど嘔吐が止まらずトイレにこもっていた・・・」とのことでした。どちらにしても、ねんのため1週間は自宅待機になるため年齢に関わらず、絶対に避けたい感染症の1つです。
対処法は?
ノロウイルスは、「手指」・「食品」などを介して経口感染。症状としては、腸管で増殖するため嘔吐・下痢・腹痛などを引き起こします。
このように感染経路や症状は分かっていますが・・・
ワクチンがありません。つまり、輸液(点滴)など対処療法しかできません。
ということで、そもそも感染しないようにしていくしかありません。
具体的には、先程お伝えした「消毒」が中心となりますがもう少し詳しく説明します。
❶手洗い
ただ、真面目にやりすぎると手が荒れて最終的にはひび割れがひどくなり出血して手が血だらけになります。(私がそうでした)というのも、介護現場で働いていれば手洗いのタイミングが10分に1回は必ずあるためです。
- 食事の前
- トイレ後
- 排泄や吐物介助後
これは、使い捨て手袋で対応したとしても手洗いはしなくてはいけません。(爪はいつも短い状態)
例えば、子どものために自宅で消毒を徹底しようとするなら、自分にあったハンドクリームは必須です。
*私の場合は、「ニュートロジーナ」というハンドクリーム以外は手に塗ると激しい痒みが発生し眠ることができなくなったたため使うことができませんでした。
➋次亜塩素酸ナトリウムや加熱で消毒
アルコール消毒は効果がないため、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)を薄めて使うのですが猛毒です。絶対に素手で触らないで下さい。皮膚がボロボロになっていきます。
❸嘔吐物の処理
- 必ず、使い捨て手袋・マスク・エプロンを使用します。
- 嘔吐は、噴水のように吐くことが多いためすぐに窓をあけて換気をします。嘔吐で汚れた衣類はビニール袋にいれて空気を抜かずに口を閉めます。(ビニール袋の空気を抜いてしまうとウイルスが拡散されてしまうため)汚れた床には、新聞などを嘔吐物の上に敷いてから薄めた次亜塩素酸ナトリウムをかけてしばらく放置します。
- 周囲の人はすぐに別の場所へ避難させます。
- 嘔吐した人は、いったん隔離します。
→ノロウイルスではなかったですが、利用者が嘔吐したことがあり看護師の指示で何度か上記の対応をしていました。(幸い嘔吐は1回だけでしたので、別の原因でした)
*ノロウイルスの場合は、下痢と嘔吐が続くので続くようならまず疑う必要があります。
*次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、容器に書かれているので手にかからないように水で薄めて下さい。
*12日以上前にノロウイルスが付着したカーペットを通じて感染した事例もあるため、すべて消毒する必要が
あります。
発生件数は?
ノロウイルスが冬場に多いといわれるのは、冬場に発生件数が集中しているためです。
前述したように、ノロウイルスは「食品」と「感染者からの便や嘔吐物」から感染します。それでは、食品から、つまり食中毒としてのノロウイルスによる発生件数を確認してみましょう。
ノロウイルスによる食中毒発生割合
図1 ノロウイルスによる食中毒件数と患者数
図1は、2007年~2017年までの11年間のノロウイルスによる事件数と患者数をグラフ化したものです。例えば、2017年は件数でいえば214件ですが、注目すべきはその患者数です。8,496人もノロウイルスによる食中毒が発生しています。
平均すると、1件につき約40人が感染していることになります。つまり、1件発生すれば集団化しやすいことを意味しています。発生件数は、多いときもあれば少ないこともありその年によってまったく違います。
*この11年間で、ノロウイルス食中毒による死者は誰もいないようです。
*総食中毒に占めるノロウイルスの割合は、病因物質別の患者数では第1位。
- 2017年の総食中毒発生事件は1,014件(ノロウイルスは事件全体の21.1%)。
- 食中毒による総患者数は16,464人(ノロウイルスは患者全体の51.6%)。
ノロウイルス食中毒の「原因食品」による発生件数は?
2017年に発生した総214件のうち、食品別では図2になります。
図2 2017年度 ノロウイルス食中毒の原因食品別発生件数
「二枚貝に気をつけよう!」とよく言われますが、図2にあるように気をつけるべき食品はそれだけはありません。なにより、もっとも多い食事の特定(171件)からみても分かるように、ノロウイルスに汚染された食品まで特定できないことが圧倒的に多いことが現状です。
図2以外にも、他の年度では「肉類」からノロウイルスが検出されるなど「この食品なら安全・危険です!」といえないことも特徴です。
*図2の複合調理食品とは、コロッケ・餃子など食品そのものが2種類以上の原料により作られるが、いずれも主ではない食品のことです。その中で、どの原料が原因食品か分からないため「複合調理食品」として統一されています。
それでは、最後に冬場が本当に発生しやすいのか確認してみましょう。
月別のノロウイルス発生件数
図3 2017年の月別発生件数と患者数
圧倒的に1月と2月に集中して発生していますが、少ないとはいえ真夏にも発生しているため年間を通してノロウイルスによる食中毒には注意する必要があります。(そもそも、「食中毒」といえば夏のイメージですよね)
最後に
ノロウイルスは、どんなに気をつけても発生してしまう危険性があります。
そして、1度発生してしまえば周囲の人を巻き込んで爆発的に感染していきます。患者は隔離し、感染予防には消毒しかなく、対処療法で症状を緩和していくしかありません。
嘔吐による窒息だけでなく、嘔吐と下痢が続くことで脱水がどんどんすすみ命に関わります。
ノロウイルスが直接の原因で亡くならなくても、高齢者の場合なら吐物が肺にはいりこみ肺炎になり亡くなる場合も少なくありません。体調不良は次の病気を呼び込みます。
子育て中や介護中のご家族の方は、特にご注意下さい。
参考
厚生労働省
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