前回、「間伐」をすることで人工林は維持できることをご紹介しました。
とはいえ、何をするにもお金が必要になります。
今回は、「2019年にようやく開始された森林経営管理制度(森林経営管理法)」についてご紹介します。
→間伐の必要性については、こちらの記事で紹介しています。
森林を経営管理するってどういうこと?
そもそも、日本の面積の約66%(約7割)は、森林です。
→約2,500万ha
そして、先進国の中では有数の森林国です。(世界の平均森林率は約31%)
そんな日本で、過去40年間で森林面積の増減はありません。
1本の木を育てるのに、30年~50年かかると言われていますが、「すでに40年間増減がない」ということは、すでに多くの木が森林資源として使える状態になっていることになります。
ですが、日本で使われている木材のなんと7割は輸入材です。つまり、自給率はたったの3割しかありません。この理由については、後述しますがお金の問題が根深くあります。
さて、そんな日本で2019年にスタートしたのが「森林経営管理制度」です。
「森林経営管理制度」ってなに?
2019年4月1日に施工。
これまで、森林所有者が「森林管理をしよう!」と思えば森林所有者が自ら、または民間事業者に委託し経営管理をする必要がありました。
簡単に言ってしまえば、これまでお金がかかるだけで利益がでない森林管理は間伐もされず放置されている現状がありました。
そこで、経営管理がなされていない森林について、市町村が仲介役となることで森林所有者と林業経営者をつなぐシステムを構築し、担い手を探すことができるようになりました。
《森林経営管理制度》
適切に経営管理がされていない森林
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市町村が森林所有者に所有している森林を今後どのように経営していくか意向を確認。
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「市町村に委託したい」と回答があれば必要に応じて市町村と協議の上、経営管理の委託手続きを行なう。
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- 委託された林業経営に適した森林は、意欲と能力のある林業経営者に経営を再委託。
- 委託された林業経営に適さない森林は、市町村が森林を管理。
こういった流れで、森林管理は森林所有者から市町村または林業経営者が管理していくことができるようになりました。
これまでどんな問題があったの?
- 森林の所有は小規模・分散的
- 長期的な林業の低迷
- 森林所有者の世代交代等により、森林所有者への森林への関心への希薄化。
→83%の市町村が、「管内の民有林が手入れ不足の状態だ」と認識。
さらに、「所有者不明」「境界が不明確」などさまざまな問題もありました。
そこで、一括管理することで林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることを目的として、法整備がなされました。
このように、森林管理を適切に行なうための整備を目的とした法律ですが、いくつか疑問に思ったことはありませんか?
「輸入材が7割を占めている」という事実!
- 日本の木材の価格は1㎡4,000円~7,000円程の価格帯。
- 行政からの補助金が「間伐」に対して70~80%あるが、それでも赤字になる。
つまり、そもそも木材の価格があまりにも安すぎて売ることもできず、管理もできないことが日本の現状となっています。
さて、この赤字の原因の1つが日本の75%が占めると言われる「5ha以下」という極端に少ない森林所有者が、バラバラに森林管理をしていることでした。
ですが、市町村から委託された地域の林業経営者により、木材の販売収益から伐採等に要する経費を差し引いた額が森林所有者等に支払うこととされています。
これは、地域の林業経営者としても、多数の所有者と長期かつ一括した契約ができるため、経営規模や雇用の安定・拡大が見込めることになり、森林所有者としても収益の確保が期待できることになります。
→林業経営者には、「効率的・安定的な林業経営をおこなう能力」+「経理的な基礎(赤字経営でない・所有者ごとの収支管理の実施など)」ができている経営者が選定されます。
林野庁の見解
ただし、「2018年の森林経営管理法案をめぐる議論」のなかで、費用についてこのように林野庁は見解を示しています。
- 民間事業者は、森林経営によって利益を上げることが可能だと自ら判断した森林において、経営管理実施権の設定を受けることにあっているため、経営が赤字になった場合は民間事業者が責任を負う。
- 市町村は、そもそも赤字と見込まれる森林では経営管理権の設定を受けて民間事業者が林業経営を行なうことは想定していない。
- 民間事業者が倒産した場合は、「市町村が管理」または「新たな民間事業者が選定」される。
つまり、その地域の特定の民間事業者が林業を独占する可能性があり、最終的な管理責任は各市町村が負うことになります。
ここで気になるのは、「市町村への支援」ではないでしょうか?
市町村への支援はなにがあるの?
このままいくと、市町村はお金にならない森林の管理(林業経営に適さない森林の管理)ばかりをしていくことになります。つまり、巨額の赤字になることが前提です。
- 地域林政アドバイザー(林業技術者)を雇用
- 近隣市町村と連携
- 森林環境税
このように、さまざまな対策があるようですが・・・
予想通りでしたが、やはり新しい税金が創設されていました。
森林環境税とは?
平成31年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立・交付されています。
森林環境税は、「温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な財源を安定的に確保する観点から、国民1人1人が等しく負担を分かち合って森林を支える仕組み」として創設されています。
具体的には、国税として1人1,000円を市町村が賦課徴収されます。→課税の開始は2024年度から。
最後に
いつの間にか新しい税金制度が作られていました。
確かに、「間伐」をすることで森林を守り、今まさに資源として育った木材を活用するには、使わなくては日本の森林が消えていくことになりかねません。
ただ、始まったばかりの制度なため、どういった想定外が引き起こされるのかまだまだ不透明な段階です。
ちなみに、最近話題の「環境問題」のはなしで言うなら、森林を育むことは二酸化炭素の削減につながります。
~今後の課題まとめ~
そもそも「間伐」は、行政が70~80%の補助金を出しても赤字になるような事業です。果たして、経営管理者が黒字にもっていくことができるのか?
さらに、市町村の赤字が膨らめばさらに増税されるのではないか?
そして、木材はありえないぐらい安いですが、その反面、物流コストが高くなってしまいます。つまり、そもそも物流コストの削減をしないと流通させることが難しい状態にあります。
「森林管理」と「木材の物流」。
これらが解決したとき、日本の林業は「金のなる木」に生まれ変わるのかもしれません。
参考
森林・林業学習館
→https://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/menseki_tikuseki.php
林野庁:森林経営管理制度(森林経営管理法)について
→https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/sinrinkeieikanriseido.html
:森林環境税及び森林環境譲与税
→https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html
森林経営管理法(森林経営管理制度)について
→https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/sinrinkeieikanriseido.html
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