「豚熱(豚コレラ)」が26年振りに発生!? 豚にとっては「死の病」

 

人間の世界では、新型コロナウイルスにより大きな影響が出続けています。

ですが、感染症は新型コロナウイルスだけだけではありませんし、そもそも人間だけの脅威でもありません。

実は、豚やイノシシに感染する「豚熱」が、日本で2018年9月に26年振りに日本で発生しました。

そして、それだけでなく清浄国としての国際認定を2007年以来、13年振りに失うまでにいたってしまいました。

今回は、この豚やイノシシにとっての死の病「豚熱」についてご紹介します。

 

⇒「清浄国」については、こちらの記事で紹介しています。

豚熱で清浄国から除外!? ただ、豚熱よりも恐い感染症が・・・

 

そもそも「豚熱」ってなに?

誤解がないように最初にお伝えしますが、豚熱は人間には無害です。

豚熱は、CSF(classical swine fever)と呼ばれています。

  • classical:古典的な
  • swine:豚
  • fever:熱

つまり、「古典的な豚熱」という意味になります。日本では、「豚コレラ」と言ったほうがなじみがあるかもしれません。

→「古典的な」という意味があるように昔からある病気でした。

*家畜伝染病「豚コレラ」の法律的な正式名称は、2020年2月5日「豚熱」に変更された。

 

豚熱はいつからあるの?

日本では、1887年(明治20年)。つまり、130年以上前に初めて感染が確認されています。

そして、1908年(明治41年)には沖縄と関東で2万頭もの大発生があり、終戦後は毎年5,000~25,000頭が発病していた深刻な家畜伝染病の1つでした。

ですが、冒頭でもお伝えしたようにここ26年間は発生がありませんでした。ところが、2018年9月9日、突然岐阜県で豚熱が確認されました。

 

 

媒介者は野生のイノシシ

農林水産省によると、養豚場では、2020年3月沖縄を最後に確認されていませんが、問題は野生のイノシシが豚熱の媒介者になっている点です。

その影響により、中部・関東地方に感染が拡大した経緯があり、ワクチン接種が必要な事態になっています。

つまり、現状、野生イノシシによりまだ解決の糸口がつかめていない状態です。

ただ、冒頭でもお伝えしたように人間には無害の感染症です。それでは、なぜ豚熱は徹底した封じ込めが必要なのでしょうか?

 

豚熱は畜産業の天敵!

豚熱は、人を含めて豚やイノシシ以外の動物に感染することはありません。(マウス、モルモット、うさぎ、山羊、めん羊などの動物に一時的に感染することが実験で知られているが、発症することはない)

さらに言えば、仮に豚熱に感染した「豚の肉」や「内臓」を食べても人の健康に影響ありません。また、そもそも感染豚の肉が市場に出回ることもありません。

ただ、問題は豚への影響です。

 

感染力が高い!?

農林水産省が発表しているCSFの防疫措置対応(概要)を確認すると、2020年4月14時点で国内では58事例:165,626頭が報告されています。

さて、豚熱にかかった「豚」や「いのしし」は、体にウイルスをもった状態です。

 

ウイルスが周辺を汚染!

  • 唾液
  • 鼻水

などに排泄されるため、周辺環境が汚染されていきます。さらに、加工品からも感染が拡がります。

Antranias / Pixabay

加工品からも感染拡大!

発病した豚の場合・・・

  • 血液
  • 筋肉
  • 内臓

これらの部位にもウイルスが含まれているため、発病した「豚」や「いのしし」由来の精肉や加工品などを介して感染が拡がっていきます。

海外では、ウイルスに汚染された残飯を介した感染まで報告されており、感染力が強いことが見てとれます。

それでは、畜産豚にはどういった影響があるのでしょうか?

 

豚にとってはかなり悲惨な病気・・・

最初は、発熱・元気消失・食欲不振・便秘に続く下痢といった具合に、私達がカゼをひいたときに出るような症状が現われます。

眼結膜の出血・皮膚の紫斑・震え・起立困難など、多様な症状を示す場合もある。

そして、この病気の恐い所は感染した多くの豚は3週間以内に死亡することです。

もしも、豚熱が人に感染する病気だったなら、新型コロナウイル以上に脅威になっていたことは間違いないでしょう。

このように、豚熱は感染力や致死率が高いため、適切に処理しないと1ヶ月以内に養豚場の豚が全滅する危険性があります。

そのため、すでに約16万6,000頭が殺処分されています。

また、衛生管理の徹底が必要になります。

  • 関係者以外の立入り禁止
  • 農場(畜舎)に出入りする際は、消毒を実施(土が付いた長靴は特に注意)
  • 飼料に生肉を含む(含む可能性がある)場合は、十分な加熱処理

そして、野生イノシシの侵入防護だけでなく、汚染された土や物なども農場に持ち込まないようにする必要があるため、かなり難しい対策が求められています。

例えば、豚を外に歩かせないようにする対策まで必要になります。(外を歩かせる場合は、農場内の消毒を十分にするか、ゲージに入れてから移動させるなど)

*他にも、さまざまな徹底管理が行われています。

 

最後に

豚熱は、昔からあった感染症ですが危険な感染症です。

もしも、農場で異常な豚が発見されれば、家畜保健衛生所に通報することになっています。また、防疫措置は「防疫指針」に従って実施され、清浄性確認のためのサーベイランス(監視)も行われています。

これは、海外からの持ち込みについても同じことが言えます。

そもそも、中国や東南アジアの国々は、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ、CSFなどの悪性伝染病の発生国です。

そのため、これらの国からの動物及びそれに由来する肉の輸入が日本では原則禁止されています。

ただ、これは日本も同じで今回、清浄国から外されたことで、今後日本からの海外輸入が制限されることになるでしょう。


参考

農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/index.html

農研機構
http://www.naro.affrc.go.jp/faq/index.html

 

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