未就園児は全体の1割にも満たない! 教育方針?経済状況?原因はどこにある?

 

皆さんは、子どもができたら幼稚園や保育園、こども園などに通わせたいと考えていますか?

一般的には、義務教育ではないとはいえ、就園させることを選択するのではないでしょうか?

かくいう私も、4歳になった息子は幼稚園に通っています。

幼稚園で大きく変わった点は、言葉が増えたこと・幼稚園ではなんでも自分でやっているなど、自宅だけではどうにもならなかった成長が見られることです。

しかも、こういった変化が幼稚園に行きだして、たった2ヶ月もしないうちに見られたことです。

とはいえ、どこにも通っていない子ども達もいます。

もちろん、「必ず通わないといけない!」と言う気もありませんし、そこは親の考え方を中心に決めればいいと考えています。

ですが、幼稚園や保育園などに「通わないこと」と「通えないこと」は別問題です。

今回は、北里大学が発表した「なぜ就園していないのか?」についてご紹介します。

 

どんな調査がおこなわれたの?

厚生労働が全国規模で実施している「21世紀出生児横断調査」に参加した子ども達が対象になりました。

  • 平成13年(2001)生まれ:17,019名
  • 平成22年(2010)生まれ:24,333名

→別々に調査されました。

 

21世紀出生児横断調査とは?

  1. 家族構成
  2. 子育て感
  3. 父母の家事
  4. 育児分担状況
  5. 子育ての負担や悩み
  6. 子育ての悩みの相談先
  7. 父母の就業状況 

など、こういった調査を同じ人に対して横断調査(追跡調査)しています。

 

 

~目的~

本調査は、同一客体を長年にわたって追跡する縦断調査として、平成22年に出生した子の実態及び経年変化の状況を継続的に観察するとともに、21世紀の初年である平成13年に出生した子を継続的に観察している調査との比較対照等を行うことにより、少子化対策等の施策の企画立案、実施等のための基礎資料を得ることを目的としている。

つまり、平成22年と平成13年生まれの子ども達を比較していくことで、少子化対策に生かすための調査がおこなわれています。

ちなみに、日本では2017年度の未就園児は以下のように推計されています。

  • 3歳児:8.9%
  • 4歳児:2.7%
  • 5歳児:1.9%

3歳児に未就園の子どもが最も多く約1割が未就園の子ども達です。ただ、4歳・5歳と年齢が上がるに連れて未就園の子ども達はさらに少なくなっていきます。

それでは、そもそもどうして未就園なのでしょうか?

 

未就園の理由の多くは教育方針ではなかった・・・?

平成13年生まれ(4歳児)の結果は、このようになっています。

「世帯所得」・「きょうだいの人数」・「親の国籍」に分けて、それぞれで比較がおこなわれました。

 

❶世帯所得の差と未就園の関係は?

「最も高所得」・「高所得」・「中所得」・「低所得」・「最も低所得」の5群に分けて、最も高所得の世帯と比較されました。

その結果、所得が少ない世帯ほど未就園の割合が高くなっていきます。

さらに言えば、「最も低所得の世帯だった平成13年生まれの3歳児・4歳児」の未就園児は、最も高所得な世帯と比較すると、約1.5倍多くなっていました。

そして、平成22年生まれの3歳児では約2倍も未就園の子ども達が多くなっていました。

つまり、約10年で未就園の子ども達がさらに増加しています。

それでは、きょうだいの人数は未就園と関係していているのでしょうか?

 

➋きょうだいの人数と未就園の関係は?

きょうだいの人数として「0人(一人っ子)」・「1人(2人きょうだい)」・「2人(3人きょうだい)」・「3人(4人きょうだい)」の4群で比較されました。

→きょうだいがいない(一人っ子)が基準として比較。

その結果、きょうだいの人数が増えるごとに、きょうだいが1人の場合を除いて、未就園児の割合が増えていきました。

ちなみに、平成13年生まれの3歳児と4歳児については、きょうだいが1人いる子どもの方が、一人っ子の子どもよりも就園した割合が高くなっていました。

つまり、2人きょうだいなら就園している子ども達ははむしろ高くなりますが、3人きょうだい・4にんきょうだいと、きょうだいの人数が増えることで未就園の子ども達が増加している事が分かりました。

特に、きょうだいが3人いる、4人きょうだいの未就園児は一人っ子よりも1.5倍以上多くなっています。

そして、平成13年生まれの4歳児にいたっては、きょうだいが3人いる未就園児が約2倍も多くなっています。

それでは、国籍と未就園は関係あるのでしょうか?

 

❸国籍と未就園の関係は?

「日本国籍」「外国籍」で比較されました。

その結果、平成13年生まれの3歳の子ども達には有意な差は見られませんでした。

ところが、平成13年生まれの4歳の子どもでは約1.5倍。

平成22年生まれの3歳児では、約1.4倍も未就園児が多くなっていました。

つまり、今回の調査で「世帯所得・きょうだいの人数・国籍」が未就園児と深く関わっていることが分かりました。

ただ、未就園になった原因はこれだけではないようです。

 

子ども自身と未就園の関係は?

先程の比較は、親の「国籍」や「所得」、「きょうだいの人数」といった家族の影響により、未就園の子ども達が増加していることが分かりました、

ですが、子ども達自身の「健康」や「発達」の差によっても、未就園になっている差が出てしまっています。

 

❹出生週数と未就園の関係は?

 

そもそも「出生週数」ってなに?

調査結果を紹介する前に、まずは出産時期(出生週数=妊娠週数)についてご紹介します。

妊娠週数は、「お母さん」と「赤ちゃん」にとって、命に関わるかもしれない大切な数字です。

例えば、私の息子は42週(加期産)で産まれましたが、体重は4.2kgでその産婦人科では一番大きい赤ちゃんとして生まれました。

本来なら、自然分娩の予定でしたが大きく育ちすぎたため、直前で帝王切開になりました。

 

このように、出産のタイミングはとても重要なものになります。

  • 妊娠37~41週:正期産
  • 妊娠22~36週:早産

→「妊娠28週が命の分かれ目」とも言われています。

Sanjasy / Pixabay 

 

さて、この統計は大きく分けると「正期産で生まれた子ども達」「早産で産まれた子ども達」の中で、未就園の子ども達との差を比較しています。

そして、早産の中でも32週は「32週の壁」と呼ばれます。

誕生後の発育状況で1歳の時点で追いつける割合

  • 32週未満:21%。
  • 32~37週未満:69%

つまり、同じ早産でも妊娠32週が子どもの今後の発育の1つの目安となるため「32週の壁」と呼ばれます。

ちなみに、医療の発達により出生時の体重が1500gあればリスクは少なく、2,000gあれば正期産に生まれた赤ちゃんとほぼ変わらずに成長できることが多くなってきています。

さて、それでは調査結果について見ていきましょう。

 

 

調査結果はどうなったの?

「37週以降」・「32~36週」・「32週未満」別に、出産周期別に生まれた子ども達と未就園の関係性が比較されました。

その結果、正期産を基準にすると平成13年生まれの4歳児の未就園が、32~36週・32週未満どちらも、約2倍になっていました。

さらに、平成22年生まれの3歳児は、10年前(平成13年の3歳児)はほとんど差がなかったにも関わらず、約2倍に増加しています。

それでは、先天性疾患の有無でも未就園に影響してくるのでしょうか?

 

❺先天性疾患と未就園の関係は?

確かに、先天性疾患がある平成13年生まれと平成22年生まれの3歳児は、ない子ども達と比較すると未就園の割合が、約1.5倍高くなっていました。(平成13年生まれの4歳児は、「ない児童」よりもむしろ少なかった)

ですが、所得差ほどのあからさまな差はありませんでした。

これは、発達の遅れの有無についても同じことが言えます。

 

 

❻発達の遅れと未就園の関係

こちらも、発達に遅れがある子どもの方が若干、未就園の子どもの割合が高くなっていますが、高くても平成22年生まれの3歳児の約1.4倍でした。

こういったことから、家族構成や障害などを調査した結果、日本の未就園で影響を大きく与えている原因(1.5~2倍も差がある)は、「世帯所得」・「出産週数」・「きょうだいの人数(特に4人きょうだい)」という結果になっています。

さらに、深刻なことは基本的にほとんどの平成13年生まれの3歳児よりも、平成22年の3歳児の方が未就園の割合が高くなっていることです。

 

最後に

そもそも、これまで保育料は公的援助により世帯収入に比例していました。また、2019年10月からは幼児教育・保育の無償化が始まりました。

ですが、例えば私の体験談になりますが息子が通っている幼稚園は2021年4月から「こども園化にする!」と突然、説明会とは名ばかりの「報告会」がありました。

本来なら、4月から幼稚園が始まる予定でしたが4月は入園式のみで、2020年6月にコロナ後の初めての登園からしばらくして7月に説明会が実施されました。

その結果、2021年からはお弁当から給食へ変更になり毎月3,000円の給食費が必要になっていました。

つまり、残り2年間(24ヶ月)✕3000円=72,000円の出費が増加することに、いつの間にか決定していました。(夏休みは給食がないため、実際は6万円程)

2年後には、娘も入園することになっています・・・

 

「幼稚園のこども園化についての実体験」は、こちらの記事で紹介しています。

幼稚園が認定こども園化! 説明会は実施されるも幼稚園の特色が消えていく・・

つまり、保育料は確かに無償化になっていますが、最も費用のかかる食費などの部分については自己負担のままです。

また、以前、貧困で精神が病むことについてご紹介しましたが、低所得家庭では親の精神的な問題が子どもの未就園に影響がでている可能性まであります。

 

→「貧困とメンタル」については、こちらの記事で紹介しています。

コロナの影響は非正規雇用に集中!? 求職中の人ほどより深刻に・・・

 

さらに、きょうだいが多いことから兄が妹の面倒をみることになり、親自身がそもそも就園の必要性を感じていないかもしれません。

また、早産や先天性障害により健康や発達に影響が現われやすいため、そのこと自体が未就園に繋がる可能性が高くなります。


このように、未就園の原因は親の教育方針などではなく「金銭的な理由などで行かせたくても行かせられない」といった状況。

さらに、「親が精神的に病んでいたり、子ども同士で世話をするなどで就園についてそもそも関心がない」といった可能性が示されています。

この調査からさらに10年が経過し、2020年になりました。

幼稚園のこども園化はどんどん進んでいますが、同時にお弁当から給食へ以降されています。

今後は、さらに未就園児が増加するかもしれません。

 

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