結核は、「死の病」ではなくなりました。ただ、結核は「過去の病」ではないことをご存じの方も多いでしょう。実際、結核により毎年多くの方が亡くなられています。
今回は、少ないとはいえ0歳児から感染のリスクがある「終わりのない結核感染」についてご紹介します。
「結核」ってそもそもなに?
結核は、結核菌に感染することで発病する病気です。ただし、感染すれば必ず発病するわけではありません。結核菌が増殖して体の組織を冒していくことで「発病」となります。
このように書くと、「それはそうだろ!」と思うかもしれませんが・・・
実は、結核菌に感染すると2年以内に発病することが多いとされる一方で、感染後なんと数年~数十年後に結核を発病することもあります。
結核菌が増殖して、発病にいたる原因はまだよく分かっていませんが、抵抗力のない人は注意が必要です。
~抵抗力のない人~
- 高齢者
- 過労
- 栄養不足
- 他の病気により体力低下
など・・・
結核の感染力
結核菌を吸い込んでも必ずしも感染するわけではありません。多くの場合は、体の抵抗力により追い出されます。また、結核菌が体内に残ることがありますが、免疫が結核菌を取り囲み「核」をつくることで一生発病することがありません。
つまり、結核菌は・・・
①免疫により体から追い出される。
②体内に残っても、免疫が結核菌を取り囲み封じ込めれば一生発病しない→「感染の状態」
このことから、結核に「感染」していても「発病」していないのなら、当然周囲に感染させる危険性もありません。
*発病していても、咳や痰で結核菌を体外へ出す(排菌)していなければ感染はしません
それでは、なぜ結核が現在でも恐れられているのでしょうか?
結核の恐怖
1950年(昭和25年)までは、「結核」が日本の死亡原因の第一位でした。(死亡者数は、1947年の146,241人がピーク)
そして、適切な治療(予防接種・レントゲン診断・結核治療薬)のおかげで1947年をピークに結核による死者は減少していきました。それでは、現在は結核の危険はなくなったのでしょうか?
厚生労働省が、平成29年結核登録者情報調査年報集計結果を発表しています。
平成29年結核登録者情報調査年報集計
結論から言えば、日本の結核*罹患率は近隣アジア諸国に比べ低い水準です。ですが、米国等の他の先進国に比べればまだまだ高いことが実情です。
*「罹患(りかん)」とは、病気にかかることをいいます。
*「罹患率」とは、1年間に新たに結核と診断された人(再発含む)数÷総人口
日本での結核患者数
平成25年~29年の親登録結核患者数は図1になっています。
「親登録結核患者数」とは、新たに結核と診断され保健所に登録された人のことです。
平成25年~29年までの年度別「新登録結核患者数」は図1のようになります。
図1 年度別新登録結核患者数
図1から、5年間で毎年確実に「新登録結核患者数」は減少し続けています。2013年と比べると、約3,700人減少していることが分かります。
ですが、減少したとはいえ2017年には新たに16,789人が新たに結核患者として登録されています。
それでは、年齢別にみるとどうなると思いますか?
実は、減少しているのは高齢者です。そして、もとから少ないとはいえ、子ども達の「新登録結核患者数」はそれほど大きな変化がありません。その結果は、図2からみても明らかです。
図2 年代別・年齢階級別「新登録結核患者数」
図2からみると・・・
- 0歳~19歳までの子どもの「新登録結核患者数」は、5年間でほとんど変わっていません。(15~19歳ででは、2016年に増加が見られますが2017年では減少しています)
- 結核は、0歳から感染が見られます。
- 高齢になるほど「新登録結核患者数」は増加しますが、5年間でみると減少していることが分かります。(特に、70~79歳では半減)
- 20歳~89歳までは、5年間で「新登録結核患者数」は多少の増減がある年もあるが減少し続けている。
- 90歳以上はどの年も一気に減少していますが、年々増加しています。
結核は過去の病気ではない!
図1・2は、「新登録結核患者数」です。つまり、すでに結核と判断されている人は入っていません。ここまででみると、毎年結核と診断された人が15,000人以上増え続けていることになります。
「新登録結核患者数」は減少していますが・・・
2017年の結核による死亡者は2,303人。
2016年の死亡者は1,892人。
つまり、「新登録結核患者数」は毎年減少していますが、結核による死亡者は前年と比較すると411人増加しています。
結核の治療とは?
現在では、抗結核薬等が開発されきちんと服薬すれば根治可能な病気になりました。つまり、特効薬があります。ただし・・・
- 病院への受診が遅れた
- 診断が遅れた
- 免疫状態が著しく低下している
といった場合は、死に至る危険性があります。
仮に、服薬治療が間に合ったとしても・・・
インフルエンザでもそうですが、服薬を勝手に中止した場合は耐性菌ができる可能性があります。つまり、完治していないにも関わらず服薬をやめてしまえば薬が効かなくなる危険性があります。
結核は、空気感染するため服薬を途中でやめてしまい耐性菌ができてしまえばあなただけでなく薬の効かない「薬剤耐性結核菌」が周囲の人に拡大していきます。なにより、結核は治療が確立するまでは死因第1位だった病気でした。
このように、結核は「早期発見・早期治療・服薬は最後まで」が鉄則です。
耐性菌の危険性についてはこちらの記事で紹介しています。
→抗生物質が効かない薬剤耐性菌が世界的に増加中!~時代は繰り返す~
結核の症状
結核は、肺の病気だと考えている人が多いのではないでしょうか?
確かに、結核といえば日本人の8割は肺結核です。ですが、実は「肺外結核」と呼ばれる腎臓・リンパ節・骨・脳など体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。
症状
- 咳・痰・発熱などの症状が長く続く
- 体重が減る
- 寝汗をかく
- 食欲がないなど
さらにひどくなると・・・
- だるさ
- 息切れ
- 血の混じった痰が出始める
- 喀血(血を吐く)
- 呼吸困難で死に至る
といった症状が現れます。
最後に
世界の結核状況をお伝えします。結核というと「日本の病気だ!」と考えている人もいるかもしれません。しかし、実は世界中で猛威をふるっています。
世界中では、毎年約180万人も結核により亡くなっています。
それでは、2016年の諸外国の結核罹患率をご紹介します。
図3 2016年 諸外国の結核罹患率
このように、近隣の諸外国と比べると低い水準といえます。ただ、年々先進国の水準に近づいているとはいえ米国など先進国と比べるとまだまだ罹患率が高いことが分かります。
それにしても、韓国や中国に結核が多いとは知りませんでした。そして、フィリピンの結核罹患率が異常なほど群を抜いています。外国人労働者が2019年4月から増加していくので、今後は日本の結核罹患率は増加するかもしれませんね。
結核に関してだけではありませんが、免疫力の低下が「万病の元」だということははっきりしています。家族を守るためにも、体調管理が基本になります。もし、「だるさ」が続くようなら受診することをオススメします。
参考
厚生労働省:平成29年 結核登録者情報調査年報集計結果について
→https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000175095_00001.html
メディカルノート
→https://medicalnote.jp/diseases/%E7%B5%90%E6%A0%B8
公益財団法人結核予防会
→https://www.jata.or.jp/
コメントを残す