石油を使った暖房器具に「不良灯油」を使うと・・・

 

●この記事では、灯油の管理を怠ると故障・火災の原因になることを説明しています。

 

だんだん寒くなってくると、毛布や厚手の衣類を出すなど冬支度を始めますよね。

それでは、そんな冬に必要な暖房器具にはどういった物を使っていますか?

今回は、「まだまだ現役の石油ストーブの注意点」についてご紹介します。

 

石油ストーブは減っているんじゃないの?

今では、エアコンやダイソンの温風機など、電気で暖かなる暖房器具が主流ではないでしょうか?

そのため、「今さら石油ストーブなんて・・・」と思われるかもしれません。

そもそも、今の子ども達は石油ストーブを見たことがないかもしれませんね。

というのも、火傷の危険があるため特に小さい子どもがいる家庭では、使われることが基本的にないためです。

それでは、「全く注意しなくてもいい?」かといえば、そういうわけにもいかない現実があります。

 

多くの自治体で、石油ストーブの火災が毎年注意喚起されている

自治体の紹介の前に、まず大前提として、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が2019年11月18日に、「石油ストーブ・石油ファンヒーターの事故、5 年間で 57 人死亡 」と発表しています。

これは、2014年度~2018度までの5年間で「石油ストーブ」と「石油ファンヒーター」。つまり、石油を使った暖房器具による火災の発生状況です。

さらに、暖房器具の中でも石油ストーブ・石油ファンヒーターの暖房器具の95%(337件中321件)が火災による事故になっていました。

ちなみに、年代別では高齢者がその多くを占めていますが、20歳以上では全年齢に被害がでています。(20歳未満の被害は報告されていない)

このように、まだまだ石油を使った暖房器具を使われているご家庭があります。

それでは、自治体ではどういった注意換気がなされているのか千葉市の注意喚起を例に見ていきましょう。

 

千葉市による注意喚起

千葉市では、2018年の火災の原因が示されていました。(2018年は、261件の火災が発生していた)

  1. 「放火(疑い含む)」60件(23.0%)
  2. 「たばこ」29件(11.1%)
  3. 「配線関係」22件(8.4%)
  4. 「こんろ」21件(8.1%)
  5. 「電気機器」17件(6.5%)
  6. 「たき火」14件(5.4%)
  7. 「ストーブ」9件(3.4%)

火災の原因が「放火」になっていることは、すでに多くの人がご存じだと思います。

確かに、火災の原因で「放火」が最も多いことは問題ですが、千葉市で発生した火災原因でストーブが第7位になっています。

1年間で9件も発生しているため、決して人ごとではないでしょう。


ちなみに、先程のNITEの報告では10月~3月までで、「石油ストーブ」や「石油ファンヒーター」による火災事故は90%の事故が発生していました。

つまり、約6ヶ月の間に9件発生していることが予想されます。

→千葉市だけをみても暖房器具を使う6ヶ月の間に、石油を使用した暖房器具により毎月1~2件火災が発生していた可能性が高い。

それでは、どうして石油ストーブによる火災が多いのでしょうか?

 

「放火の状況」については、こちらの記事で紹介しています。

H29年の東京消防庁の発表 ~放火される危険な条件と対策は?~

 

灯油そのものに原因が!?

石油ストーブは灯油を燃焼させることで、周囲を温めていきますよね。

そのため、例えば「一酸化炭素中毒」や「地震があれば家具や衣類などがストーブの天面に被さり出火」ということも起こりえます。

また、睡眠中に布団を蹴飛ばすなどして石油ストーブに布団や衣類などが触れてしまい出火ということもありえます。

衝撃的な事例の1つに、ガソリンを間違えて入れたという物がありますが、普通はありえないでしょう・・・

ちなみに、石油ストーブの給油タンクの蓋が閉っておらず、セットしようとしたときにキャップが外れて、そのまま火災になったことまで事例にあります。

→私も、子どもの頃は石油ストーブの灯油を何度も給油タンクに入れていましたが、こんなことは起こりませんでした。

 

ただ、今回はこういった石油ストーブの安全な使い方の説明ではありません。

実は、こういった不注意をなくして、周囲の燃えやすい物を片付けたとしても、灯油にはもう一つ落とし穴があります。

それが、灯油の品質(不良な灯油)の問題です。

 

不良な灯油?

例えば、「前年で使い切らなかった灯油が変質(変質灯油)」や、「汚れたり水の混じった灯油(不純灯油)」が火災や故障の原因になることがあります。

 

 

変質灯油の原因は?

NITEでは、灯油の変質の原因についてこのようにまとめられています。

①空気
灯油の変質は、空気中の酸素による酸化現象である。

②光
酸素存在下で紫外線(波長400nm以下)が当たると、灯油の変質が大幅に加速される。

③温度(60℃)
酸素存在下で温度が高くなれば、灯油の変質が大幅に加速される。

④光と温度の影響
紫外線は、温度(60℃)に比べて3倍以上早く灯油を変質させる。

つまり、もしも灯油を屋外で保管して日光を浴びれば、短時間で変質する可能性があるため、注意が必要です。

ちなみに、灯油は無色透明ですが変質灯油は黄色くなります(変質していてもほとんど色が付いてない場合もあるため、注意が必要)

それでは、変質灯油はなぜ危険なのでしょうか?

 

変質灯油が火災の原因に!?

NITEでは、「純正灯油」と「変質灯油」を使った実験がおこなわれました。

消火ボタンを押してから、「完全消火するまでに10秒以上かかれば消化不良」として実験がなされました。

つまり、普通なら消火ボタンを押せば数秒で石油ストーブの火は消えるということです。

その結果、ストーブの消火ボタンを押しても完全消火されるまでに10秒以上かかったのは、変質灯油を使用してから100時間後でした。

 

 

変質灯油を使った100時間後に何が起こったの?

  1. 消火ボタンを押してもレバーが消火位置まで戻らない。
  2. 芯が完全に下がらず、残火が生じる。

つまり、すぐに消火できない状態になりました。

それでは、なぜ石油ストーブの「芯」が下がらなくなったのでしょうか?

国民生活センターでは、以下の報告がなされています。

 

不良灯油で石油ストーブの故障も!?

変質灯油を石油ストーブに使った場合

給油タンク1杯分の量で、芯にタールが付着してしまいます。

その結果・・・

  1. 火が付かなくなる。
  2. 「緊急消火ボタン」を押しても火が消えない。

しかも、給油直後は問題が見られませんでした。

 

あくまでも、「次第に火力が落ちていき2.4L~3.4Lの灯油を消費した時点で着火できなくなることや、緊急消火ボタンを押しても消火できないことがあった」と言うことです。

ストーブの芯にタールが染み込み硬くなったために、灯油が染み込まないことや固まったタールで芯がうまく動かなくなっていた。

 

ちなみに、水の入った「不純灯油」を石油ストーブに使った場合は、油受け皿に水が残ったことで内部が錆びたり、芯が動かなくなったようです。

*灯油が燃え尽きると、内部の灯油受け皿に水だけが残るため放置すると「内部に錆び」「芯が水を吸ってしまい火力調整つまみが作動しなくなる」ことが引き起こされた。

このように、不良灯油を石油ストーブに使ってしまうと故障や火災の原因になっています。

これは、石油ファンヒーターでも同じことが言えます。

 

石油ファンヒーターで「変質灯油」を使った場合

石油ファンヒーターで変質灯油を使った実験でも点火できなくなりましたが、さらに刺激臭のする煙も出てきました。

石油ファンヒーターも、給油直後は燃焼に影響がなかったようですが1.3L~4.3Lの灯油を消費した時点で点火に失敗。

温風吹き出し口からは、煙が出てしまいました。(灯油を気化する箇所にタールが堆積していた)

 

ちなみに、水の入った「不純灯油」で石油ファンヒーターを使用した結果・・・

  • 燃焼が不安定になりエラー表示。
  • 灯油が燃え尽きると灯油受け皿に水だけが残り、放置すると内部に錆びが発生。

このように、石油を使った暖房器具は使い方ももちろん重要ですが、使用する灯油の質にも注意しないといけません。

 

最後に

今回の記事では、便宜上「石油」・「灯油」と、どちらの言葉も使っています。

ただ、あくまでも石油製品の1つとして「灯油」があります。

少し分かりにくいですが、「石油ストーブ」という名前で呼ばれているだけで、燃料として使うのは石油製品の1種である「灯油」です。

石油には他にも、車に使う「ガソリン」や「軽油」などさまざまな種類があります。

さて、石油ストーブを使う機会はほとんどないかもしれません。

ただ、もしも使う機会があれば石油ストーブの取扱いには十分注意して下さいね。特に使い慣れていない場合は、火傷にご注意下さい。

子どもがいるなら、火傷しないようにストーブに近づかせないように注意する必要があります。私が物心がついて初めて火傷をしたのも石油ストーブが原因でした。

 

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