政府の全世帯へのマスク発送がすでに実施されています。
ただ、「やはり・・・」というべきかこれに関連する詐欺がすでに発生しています。
今回は、「送りつけ商法」についてご紹介します。
「送りつけ商法」ってなに?
「送りつけ商法」とは、簡単に言ってしまえば注文もしていない商品が一方的に自宅に送り付けられる商法(犯罪)のことです。
→「押しつけ販売」や「ネガティブオプション」と呼ばれることもあります。
普通に考えれば、発送者(お店側)からすれば契約もしていない商品を勝手に送りつけることに、なんのメリットもありません。
ちなみに、契約は物を受け取ったら成立するのではなく、「買います!」と言った口約束だけで成立してしまいます。
ですが、送りつけ商法はそもそも買う意思もしていないにも関わらず、送りつけられてきます。つまり、そもそもこの口約束すらしていない状態です。
→「送りつけ商法はそもそも契約が成立していない」この点に注目する必要があります。
「送りつけ商法」は普通じゃない!
例えば、やっとの思いで購入したマスクを誰かも知らない人の家に、ワザワザ送るようなことは普通はしないですよね。
ですが、この「普通ではないこと」が行われる手口が送りつけ商法です。
それでは質問です。
もしも、この「押し売り」が認められてしまったらどうなると思いますか?
答えは簡単です。
今ほど、ネットで物が簡単に買える時代にこんなやり方が「契約」と認められてしまえば、毎日のように皆さんの家には何十・何百という商品が一方的に送りつけられることになるでしょう。
そうなれば、配送業者もパンクし物流も止まることになるでしょう。そもそも、多くの人が返送業務に追われ仕事にも行けなくなるでしょう。
つまり、現実的に「送りつけ商法が認められることは絶対にありえません!」
それでは、なぜこんなやり方がお金儲けにつながってしまうのでしょうか?
「契約」について知らない人が狙われる!
解決策は、とてもシンプルです。
そもそも、契約もしていない商品が勝手に送りつけられているだけですよね。簡単に言ってしまえば、業者から「この商品を買って!」と一方的に申し込まれている状態です。
つまり、それに応じなければいいだけです。
ただ、この「応じなければいい」ということが厄介なポイントでもあります。
「応じない」とはどういうこと?
残念ながら、送りつけられた商品の所有権は送った側にあります。つまり、受け取った側が勝手に処分することはできません。
もしも、勝手に処分してしまうと、「応じた」ことになってしまいます。もちろん。お金を支払っても「応じた」ことになります。
そこで、特定商取引に関する法律が「応じない」対処の根拠となります。
第五十九条 販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合において、その商品の送付があつた日から起算して十四日を経過する日(その日が、その商品の送付を受けた者が販売業者に対してその商品の引取りの請求をした場合におけるその請求の日から起算して七日を経過する日後であるときは、その七日を経過する日)までに、その商品の送付を受けた者がその申込みにつき承諾をせず、かつ、販売業者がその商品の引取りをしないときは、その送付した商品の返還を請求することができない。
つまり、「商品が一方的に送りつけれた日から14日間の間に、業者が受け取り側に対して契約を成立させることができず、さらに業者が引き取ることもしなければ、所有者は受け取り側になる」ということです。
そのため、「応じない」ためには送られてきてから14日間は何もせずに保管しておく必要があります。
ちなみに、上記の第59条にあるように、受け取り側が業者に対して引き取ってもらうように請求した場合は、7日以内に引き取らなければ受け取り側が所有者になれますが、やめた方がいいかもしれません。
そもそも、「まともな人が送りつけ商法をやっている?」とは考えにくいため、脅される・言葉巧みに買わされるなど、相手の術中にはまる可能性が高いと考えられます。
民法での契約の意味
民法では、契約についてこのように定められています。
申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
つまり、勝手に処分するといった行為は、「承諾の意思表示」となる可能性が高くなります。
無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
とあります。
寄託(きたく)というのは、民法に定められる契約の1つで「当事者の一方が目的物の保管を委託し、相手がこれを承諾することによって成立する(諾成契約(だくせいけいやく)」のことです。
このように、契約に関する大雑把な部分は民法で定められていますが、「いつまで保管が必要なのか?」といった具体的な内容については、特定商取引法に関する法律で定められています。
まさか、「永遠に保管義務が発生する!」なんてわけにはいかないですよね・・・
このように、送りつけ商法は法律を逆手に取った悪質な犯罪です。それでは、そもそもどうして応じてしまうのでしょうか?
品物だけが送りつけられるわけではない!
例えば、添付されている購入依頼書に「購入されない方は7日以内に返送して下さい。返送されない場合は、こ購入されたものとして取り扱わさせて頂きます」といった文言が付け加えられていたとします。
ですが、冒頭でお伝えしたように売買契約は申し込みに応じなければ成り立たないため、そもそも「存在しない契約」です。
そのため、添付書類に書かれている期限内に返品しなくても買ったことになりません。
つまり、上記の文言がすでに犯罪の手口です。
受け取り側(私達)の責任をおさらい!
- 相手に返還する。
- 相手が引き取りに来るまで保管する。(14日間の保管。または、業者に取りに来るように請求した場合は7日間の保管)
このどちらかになります。
ただ、トラブルに巻き込まれる可能性が高いため、そもそも身に覚えのない商品は「受取拒否」にした方が安心です。
→もしも、家族がいて自分が知らない商品が代金引換で届いた場合は、「受取保留」にしてから家族に確認。誰も購入していないことが分かれば「受取拒否」にします。
*「受取拒否」にすることで、送り主へ返送される。
さて、送りつけ商法の内容はこれで簡単に説明しましたが、この手口が「1住所当たりマスク2枚配布」が実施されているこのタイミングで、例えば「封筒に入ったマスク30枚が送りつけられた!」なんて相談が消費者ホットライン188などに寄せられているようです。
→消費者ホットライン188については、こちらの記事で紹介しています。
マスクの送りつけ商法!?
消費者庁でも対応マニュアルがこちらのホームページで公開されています。
❶事業者からの電話連絡が、マスクを送りつけられる前になければ売買契約は成立していない。(14日後処分)
➋業者から前もって連絡があったときに、マスクの売買契約の勧誘がなければ売買契約は成立していない。(14日後処分)
❸マスク売買契約を締結していたとしても、契約書面を受け取ってから8日以内であればクーリングオフができる。
→書面を受け取っていなければ、いつでも契約が解除できる。
このように、消費者庁でも注意喚起がなされています。
最後に
そもそも、郵便物は「受取」だけが全てではありません。
購入者が分からなければ「受取保留」。身に覚えがなければ「受取拒否」ができます。
送りつけ商法1つとっても、多くの人に知られてしまえばその手口は捕まるリスクがどんどん高くなっていきます。
そのため、誰も聞いたことがないような手口が時代と共に発生してしまいます。送りつけ商法も、パターンが違えば新しい手口になるでしょう。
こういった犯罪はなくなることはありませんが、撃退することができます。まずは、消費者ホットライン188などに相談することをお勧めします。
参考
消費者生活情報:ネガティブオプション
→https://www.nagano-shohi.net/akushitsu-syoho/negative/
愛知県弁護士会:送りつけ商法について
→https://www.aiben.jp/about/katsudou/shohisha/negativeoption.html
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