前回、「開かずの踏切」や「危険な踏切」の危険性や国の対策ついてご紹介しました。
そこで、今回は「そもそも踏切に関する罰則にはどんなものがあるの?」についてご紹介します。
当然ですが、「赤信号みんなで渡れば怖くない」は通用しないので無謀横断は止めて下さいね・・・
→踏切の危険性や国の対策についてはこちらの記事で紹介しています。
鉄道営業法
遮断機が閉まっている踏切に進入
そもそも、遮断機が閉まっている状態で踏切に進入することは鉄道営業法第37条で禁止されています。
ただ、この鉄営業法ができたのは明治三十三年(1900年)です。つまり、今から約120年前にできた古い法律です。
37条を確認するとこのように書かれています。
第三十七条 停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
いかがでしょうか?
「10円以下の科料」になっていますね。
物価はその時代によって大きく異なることは皆さんご存じだと思います。
- 明治前半の1円・・・約2万円
- 明治後半の1円・・・約1万円
さて、明治は45年(大正元年)まであり、この法律ができたのは明治33年ということは、明治の後半にできたことになります。
つまり、明治後半の1円は約1万円。つまり、10円以下とは現在の価値で約10万円以下ということになります。(2万円の方だったらスミマセン)
どちらにしても、現在の価値に換算しようとすると大きな違いがあることは分かっていただけたのではないでしょうか。
さて、「科料」というのは1,000円以上~1万円未満の刑罰として科される財産刑のことです。(罰金は1万円以上)
→さらに、電車が遅延した場合は、鉄道会社から損害賠償を請求させることもありえます。
*「罰金」も「科料」も前科がつきます。
往来危険罪
公共の交通に対する妨害行為によって成立する犯罪のことです。
例えば、踏切内で立ち往生してしまい運転手が逃げて無事だったが、無人の車と電車が衝突したとします。
同じ事故でも、故意か過失(不注意)かによって罰則が大きく異なります。
125条(故意の場合)
鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。
→例えば、車に限らずカラーコーンやゴミ箱などを踏切内などに放置する行為や、置き石などが該当します。他にも、電車に当たるように物を投げるなど。
こういったことは、イタズラでは済まされません。ちなみに、子どもがやってしまい事故につながれば、当然親の責任になります・・・
129条(過失の場合)
汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する。
→例えば、前の車がつかえていて、踏切内で立ち往生してしまったときなどはこちらの過失となります。
まさか、わざと事故を起こそうとする人はいないですよね・・・
分かりやすく言えば、踏切内に限らず線路内の物(遮断機・枕木など)にイタズラや損壊することは犯罪行為になります。
威力業務妨害
立ち入ったことで、列車を止めたり駅員の業務を妨害することになれば威力業務妨害の234条に該当することになります。
→5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
刑法だけをみても、このようにさまざまな罰則があります。
そして、状況によっては、刑法だけでなく民事上の賠償請求を受けることになります。
民事上の損害賠償?
これまで紹介したのは、あくまでも刑事罰です。
ところで、犯罪を犯せばこれまで紹介してきたように「刑事罰」と、さらに「民事罰」の2種類が科せられる場合があります。
民事罰は、刑事罰とは違い被害者が訴えなければ訴訟は起きませんが、電車事故ともなれば被害が計り知れないため、鉄道会社や乗車していた乗客などから訴えられる可能性は当然あります。
ちなみに、踏切内に閉じ込められ車を放置して避難した場合、警報器を鳴らさず刑事罰を受けたなすると、運転者・車への補償(車両保険や人身傷害補償保険など)は受けられない可能性が高いようです。
つまり、踏切内に閉じ込められてなんの対策もとらなければその時点で罪が重くなる可能性が高くなります。
そもそも、踏切内に閉じ込められる行為自体が犯罪になるわけですが・・・
*基本的には、自動車保険(任意保険)の対物賠償・対人賠償を無制限で契約し、車両保険に入っていれば数億円ともいわれる損害賠償も補償されます。
最後に
踏切事故は、約1日に1件。そして、約3日に1人が亡くなっています。
つまり、踏切事故は毎日のように発生しており、次はあなたが巻き込まれるかもしれません。
ちなみに、例えば駅のホームから線路内に落ちた人を助けようとしたとします。時間がなく、鉄道係員などに連絡措置がとれなかった場合は、人命救助という正当な理由があるため、緊急避難として違法性がなく処罰されることはありません。
刑法第37条に「緊急避難」については、このように規定されています。
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
踏切内で閉じ込められている人や車に遭遇することもあるかもしれません。そういう時は、警報器を押すなどできる範囲で助けてあげることができるといいですね。
参考
鉄道営業法
→https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=133AC0000000065#124
wikibooks:往来危険罪・緊急避難
→https://ja.wikibooks.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
LOTAS TOWN:Vol.36 踏切内で電車と事故したら数億円の賠償が必要?(後編)
→https://www.lotascard.jp/column/trouble/8594/
あすなろ法律事務所
→http://asunaro-law-nagoya.jp/column/c/keiji_170607a.html
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